構想日本が考える日本の姿「低コスト・高満足社会」(2/6)

福祉国家×民主主義×経済成長の「トリレンマ」

 

経済が成長し社会が豊かになるにつれて、国が提供する様々な事業は、シビル・ミニマム(*)のレベルから向上してきました。シビルミニマムのレベル自体が上がってきたとも言えます。また、例えば「介護」のように、かつては国の事業ではなかったものが、時代や社会が変わるとともに、国の重要政策として追加されてきたものもあります。一方で、道路やダムなどの公共事業のように、国の事業が既得権益化し、必要なくなったのに続けられているものもたくさんあります。つまり、国が豊かになると国が行う事業は大きくなる傾向にあるのです。

 

一方、民主主義政治はどうかというと、世の中が安定し豊かになると、国家の進路を右にするか左にするかといった大きな選択肢はあまりなくなり、福祉国家として国民にどれだけのことを提供するかというのが主な課題になり、そこで競うようになります。政治家も政党も多くの有権者に投票してもらうために、人々が欲しがる事の提供合戦になりがちなのです。国民は「もっと多く」を求め政治は「もっと多く」を約束する。福祉国家が成功すればするほど、ポピュリズム、大衆迎合が民主主義と社会の中に組み込まれ易いのです。

 

しかし、国が「もっと多く」を提供しようとすると、お金も「もっと多く」必要になります。かといって、「もっと多く」資金を調達するために増税をすることは国民の反発を招きます。そこで経済成長の出番になります。成長して経済全体が大きくなれば、増税しなくても国が「もっと多く」事業をするための原資が得られる。そうやって景気拡大的な財政・金融政策がとられます。経済成長は近年においては福祉国家×民主主義のツケを担わされる役回りになっているのです。

 

ところが、先進国のように成熟社会になると、政府が景気刺激をしても経済成長率はそれほど大きくなりません。今のゼロ金利もそうですが、無理に成長を高めようとすると社会にいろんな歪みが生じます。経済成長といっても経済が勝手に大きくなるわけではありません。突き詰めると私たちの働きの積み重ね!だから「働き方改革」のきっかけになった労働強化、効率優先、生きづらさといった状況を引き起こすのです。それがホームレスや引きこもりなどの一因にもなっています。また、経営者の意欲を高め、企業の資本力を強めて成長を引き出そうという政策が国民の間の格差拡大、社会の分断につながっています。これらはどれも福祉国家が想定していなかった、しかし今や政治が対応しないといけない最大のテーマです。

 

こうやってみてくると、国民と政治の「もっと多く」を可能にするはずの経済成長が、逆に福祉国家と民主主義が対応しないといけない深刻な社会問題を増やしている。無理しても成長は大して大きくならず、「もっと多くの豊かさ」を可能にするよりも、逆に「もっと多くの課題」を生んでいるとすら言えます。途上国ならまだ経済成長の余地は大きいかもしれませんが、日本や欧米のような先進国では経済は成熟していて、少々刺激しても成長がそれほど大きくはならない。むしろ様々な歪みが大きくなる。だから多くの経済学者が言うように、格差を是正するためには経済を成長させ、全体の増えた分を貧困層に分配するという議論は現実的ではないと思うのです

 

以上が、近代国家の骨組みを作ってきた三つの要素がうまく回らず、逆に相互に蝕む状況になってきたことのあらましです。

* 1/6参照

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