• ゲスト発言

第215回J.I.フォーラム 「で、どうする ー 新国立競技場」 ※日程変更  2015/08/20(木)開催
ゲスト
鈴木 知幸(元2016年東京五輪招致推進担当課長)
松原 隆一郎(社会経済学者)
森 まゆみ(作家、神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会共同代表)
森山 高至(建築エコノミスト)
山嵜 一也(建築家、ロンドン五輪馬術会場設計監理者)

コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本代表)

【議事概要】第215回J.I.フォーラム2015.8.20
「で、どうする -新国立競技場」




第215回J.I.フォーラム「で、どうするー新国立競技場」では、元2016年東京五輪招致推進担当課長の鈴木知幸氏、社会経済学者の松原隆一郎氏、作家で「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」共同代表の森まゆみ氏、建築エコノミストの森山高至氏、建築家でロンドン五輪馬術会場設計監理者の山嵜一也氏の5名をゲストに迎えた。まず、構想日本代表の加藤より、新国立競技場問題の経緯と概要の説明が行われました。



加藤代表「すべて白紙に戻さないと信頼回復はできない。」



加藤「この問題は『神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会』が2年前から孤軍奮闘を続けてきたが、メディアも政治家も社会もほとんど反応しなかった。当時から問題の本質は全く変わっていない。」
「もともと神宮外苑の地域は20mの高さ制限があった(一部は風致地区指定のため15m)。撤回されたザハ案の高さは70m。ザハ案に決まってから事後的に高さ制限が変更されたまま。つまり現時点においても高層の開発が可能になっている。」
「ザハ案に伴って決まった日本スポーツ振興センター(JSC)の本部と日本青年館は、白紙撤回が決まった後も移転作業は進んでいる。JSCは新国立競技場の施主。白紙撤回後もJSCが主体になる予定になっている。これらをすべて白紙に戻さないと信頼回復はできない。」



鈴木氏「関係者の中には、以前と言っていることが変わっている人間も多い。」

続いて鈴木知幸氏は、「新国立競技場整備計画再検討のための関係閣僚会議」で示された『再検討に当たっての基本的考え方(案)』での8つの考え方についてそれぞれ自身の考えを以下のように論じた。
鈴木氏「(1)オリンピック中だけではなくオリンピック後のスポーツ施設として考えることを優先させるべき。(2)屋根は芝生上の日照、通風に配慮して屋根の高さを抑えるべき。(3)完成は優先だが、プレ大会のために12月中に完成できるよう努力するべき。(4)すでに結論ありきの報道が多い。国民の声を聞くと言いながら単なるアリバイ作りに見える。関係者の中には、以前と言っていることが変わっている人間も多い。(5)周辺地域の環境については、外苑地区の将来的あり方を明らかにした上で検討すべき。(6)大会後の利活用と維持管理を前提にした施設整備。バリアフリー、安全安心、防災機能、地域環境の確認のためにも適切な時期のプレ大会の実施が必要。(7)これまでの進め方に失態を犯したJSCに整備改革を続けさせることに疑念。(8)「民間事業への移行」は、様々な方式があり十分議論するべき。」

松原氏「費用がかかることそのものが悪ではない。それだけの価値があればよい。」



続いて松原隆一郎氏は、そもそも論の観点からこの問題を論じた。

「費用がかかることそのものが悪ではない。それだけの価値があればよい。基本的な視点として、(a)どれだけの利益があるか、(b)利益は国民に共有されているか、(c)他の案件における純利益との比較、(d)計画についての責任は誰が取るのかの4点が重要。」
「1964年の東京五輪は戦後日本が国際社会に復帰したことを知らしめるという国家的意義があった。その点で予算の大幅な超過や都市計画上無理があった首都高建設が帳消しになった。また国民に自信を与えるなど共同の利益を生み出した」
「2020年五輪はマイナー競技への見返りはないに等しい。公共事業でありながら主体が国交省ではなく文科省。文科省は公共事業という認識がなかった。また費用便益分析を知らなかった。しっかり分析していれば費用対便益がマイナスなのは明らか。」



森氏「元の国立競技場を解体すべきではなかったと思う。」

続いて森まゆみ氏は、自身が共同代表の一人である「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」の活動を紹介しつつ、国立競技場の歴史的背景から大切さを主張する。
「国立競技場の景観、交通、防災、歴史性などさまざまな観点で保存運動を続けてきた。国立競技場は1943年の学徒出陣走行会の挙行地。当時学徒は25,000人、うち3,000人が戦死。競技場はナショナリズムの高揚に使われやすい。」
「初代の競技場と2代目の競技場(この間解体した競技場)は形がほぼ同じ。だから国民の記憶の継承があった。今回の案では記憶の継承が不可能。学徒出陣の地で東京五輪が行われることに嬉しさと恐ろしさがある。と、スタンドから学徒出陣を見送った杉本花子さんは1964年に書いている。」
「こうした歴史を踏まえて新国立競技場をつくることを今年6月に提言した。今でも元の国立競技場を解体すべきではなかったと思う。河野太郎議員はゼロミッション(横浜スタジアムや味の素スタジアムなどを使用し外苑には何もつくらない。)を主張。拙速でスタジアムをつくるより、まずは森にして将来の世代のための種地をとっておく」
「政府は国民の声を聞くと言っているが、「説明する」「理解を求める」だけで「聞かない民主主義」だ。このままいくとザハ案マイナス開閉屋根になりかねない。」


森山氏「まずは最低限のものを定めて早く計画策定に動き始めることが重要。」



続いて森山高至氏は建築業界の事情からこの問題について述べる。

「政府は整備計画再検討案の中で設計・施工一体化の方針を立てているが建築士会・建築協会は声をあげていない。従来、両団体は建築の独立を訴えてきた。槇先生が今回、推進側ではなく批判の側に回らざるを得なかったことが不幸だった。」
「新たな競技場計画は、いろいろな利害関係者の声を聞いてから計画を作っても何もできないし結局多くのものを作らなければならなくなる。まずは最低限のものを定めて早く計画策定に動き始めることが重要。」


山嵜氏「できないではなく、やらない。『簡素』とは何か。」



続いて山嵜一也氏は、自身が担当したロンドン五輪の馬術会場を事例に、簡素で洗練されたオリンピック競技場のあり方について指摘する。

「自分が担当したロンドン五輪のグリニッジパーク馬術会場は4ヶ月で完成した。仮設施設だったため早くできた。鉄パイプに布を貼っただけの簡素な作り。ロンドン五輪での馬術競技は大変人気があった。」
「ロンドンオリンピック競技場には3つの視点が感じられた。1つ目は会場の建物は所詮「祭のやぐらでしかないと言うこと」。2つ目は「都市を借景」に。馬が走る先にロンドンの街並みが広がる配置計画とした。招致の段階で街を競技場とした五輪を考えていたのではないかと思った。当時のポスターには観覧車を高飛びと見立て、タワーブリッジを陸上競技のハードルと見立て飛び越えるなどのデザインがあった。3つ目は「見得を切る」。世界中の人々がTVを通して見ることを意識した競技場の配置計画とカメラのアングル。競技場を独立したものとして考えるのではなく、イベントの中の一部でしかないと考えていた。『一歩引いた建築観』。
「できないではなく、やらない。『簡素』とは何か。大会が始まる前の競技場を見たときは『簡素で貧相』と感じたが、開会式リハーサルを見たときは貧相とは逆のパフォーマンスを見せつけられた。お金をかけなくても立派なスタジアムに見せられる。五輪が閉幕した時に競技場は完成したと言える。『簡素だが洗練というコンセプト』がロンドン五輪競技場にはあったと思う。」
「日本には質素、余白の文化があると言われる。簡素で貧相にならないようにするアイデアが必要。ちなみに、ロンドン五輪のメインスタジアムの建設費用は600億円(4.3億英国ポンド:¥140/£)。五輪後の活用はサッカーチームの本拠地に。3年かけて2015年6月に改修完了。改修後、総額は1350億円(7億英国ポンド:¥192/£)。

加藤「2020年のオリンピックにあたっては約40の競技場を使用予定。そのうちだいたい1/3が新設、1/3が既設、1/3が仮設。大部分は東京都の所有。」


森山氏「建築界の問題の一つは、評価が開かれていないこと。大衆化されていない。評価価値基準がとても狭くなっている。建築家は施主との関係のみで完結してしまう。イギリスなどは、建築家は日本より希少性が高く社会全体に目が届いている。」

(※会場から)河野議員「ゼロオプションからの検討に。」



自民党行革推進本部長として新国立競技場問題を指摘している河野太郎議員が出席。「行革本部長として新たな競技場はいらないのではないかと提案。総務会でも満場一致で承認されゼロオプションからの検討に。今後従来と同じ密室での粛々決定にならないようチェックしていく。」



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