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タイトル【No.743】「特ダネではないけれど(9) 今、そこにあるツケ」
発行日:2016/02/11
読者の声

◆ 埼玉大学名誉教授 小野 五郎氏(2016/02/11)

究極の手段をも無くしてしまったマイナス金利

国債費自己増殖の話は、元々福田赳夫が国債発行に踏み切った時からあったことで、それを無視した人物が率いていた派閥が永らく政権を担当すれば、こうなることは端から自明でした。

で、小生としては、今世紀初頭から「今や日本の財政破綻は免れない。したがって、破綻時に備えた方策を考えておくべきだ」とし、考えられる唯一残った手段は禁じ手たる「日銀引受け」しかないと指摘していたのです。

ただし、単なる「日銀引受け」は国家破綻一直線であるからとして、そこに次のような条件を幾つか付けました。

① 一種のデフォルトの変型として内外に宣言し、一方で国家信用破綻を免れるため既発債の償還・利払いは続行するが、以降、国内向けには超緊縮予算を組み建設国債を含め新規国公債の発行は一切停止すること。

② 既発債の償還は無利子無償債での借り換えによるものとし、その全額を日銀が直接引き受けること。

こうすれば、とりあえず国債費の罠から当面の政策運営は逃れることが出来たはずです。

ところが、最近の黒田君のやり方は、この話の「日銀引受け」「無利子」だけ摘み食いし、肝心の財政再建を放棄しようというものでした。もちろん、それにダメを押したのが「マイナス金利」です。

となると、彼の頭にあるのは、むしろ松浦さんが危惧している金利反騰からハイパーインフレが起こり、既発債が総て紙くず化することだけだということになります。たしかに、「願望」から離れ冷静に考えれば、今やそれ以外に選択肢は無い。というより、どっちみち、そこに行き着くことになるのでしょう。

この種の話は、兆候が現われて直ぐ、まだほとんどの人がそうと気づかないうち(端的に言って、この話では90年代半ばまで)なら打つ手もあるのですが、みんながそうと気づいた時には手後れなものなのです。

松浦さんの怒りの対象「ロシアンルーレットに巻き込んだ張本人」にしても、とうにこの世からいなくなった人物だとも言えるし、それ以降ずっとその路線を引き継いできた全員、政治家だけではなく財官学その他から有権者を含めた有象無象全員なんだと諦めた方がいいと思います。・・・ごめんなさい。世捨て人になり損なった僻目。本心は、さらにいっそうの御発信を期待しています。

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