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タイトル【No.751】「政権ガバナンスを改めて考える -消費税軽減税率を巡る意思決定過程を題材に-」
発行日:2016/04/07
読者の声

◆ 慶應義塾大学 柏木 茂雄氏(2016/04/11)

巻頭寄稿文へのコメント

軽減税率と新聞報道

軽減税率導入の政策決定プロセスに問題ありとする田中教授の主張に全面的に賛意を表したい。その上で、マスコミの姿勢にも大きな問題があったことを指摘しておきたい。

軽減税率に問題があることは多くの経済学者や国際的識者が指摘していた。世界的に見れば軽減税率を導入している国々はその複雑さ煩雑さに苦労しており、我が国の単一税率は称賛に価するとされていた。IMFやOECDは毎年発表する報告書の中で日本は軽減税率を導入すべきでなく、低所得層の負担軽減のためには現金給付等の措置が望ましいと一貫して主張していた。

しかし、このような主張は国内で報道されなかった。彼らは日本の新聞がそのような論点を報道してくれないと嘆いていた。なぜ新聞はそのような点を報道しなかったのか。新聞自身に軽減税率を適用してもらいたかったからである。今や世界中で紙媒体の新聞はデジタル媒体に取って代わられ、その相対的重要性が低下し経営上の大問題となっている。消費税再引き上げをきっかけとして販売部数が一層落ち込むことを避けたいというのが新聞の本音である。

確かに欧州の多くの国では新聞に軽減税率あるいはゼロ税率が適用されている。しかし、海外での軽減税率は紙媒体の新聞が報道チャネルとして重要な地位を占めていた頃からであるという点を我が国の新聞は報道しない。

田中教授が指摘する通り今回の意思決定プロセスには大きな問題がある。そのツケを負うのは国民である。その国民が頼りにする新聞が公正・中立な報道を放棄し、自己の販売政策を念頭に置き軽減税率導入を前提とした報道を行ったとしたら国民はどうしたらよいのだろうか。

今後、軽減税率導入のプロセス及びそこにおいて新聞が果たした役割についてじっくりと検証すべきである。また、国民は一人ひとりがより賢くなり、我が国の新聞報道をもっと冷めた目で見つめる必要がある。そこにおいて構想日本が果たすべき役割は大きい。


◆ 自治体職員 平岡 直也氏(2016/04/09)

メールニュース751の感想につきまして

第一に国会の中で、第二に自民党税調の中で、オープンな議論と根拠データをもとに、国の税制が決められるべき。

まさに正論だと思います。この際、自民・公明両党合同の調査会でも立ち上げてやったらよかったのではないでしょうか(非現実的かもしれませんが)。

巨額の財政赤字を抱える我が国の税制改正が、きちんとした根拠、裏付けもなく、イメージ戦略みたいに決められてしまうことに不安を禁じえません。

◆ 埼玉大学名誉教授 小野 五郎氏(2016/04/07)

最大の問題は「強いリーダーシップ」のすり替え

軽減税率論議に端を発する田中さんの言う「政権ガバナンス」問題に関して、現政権の国民に対する最大の裏切りは、ずばり安倍総理が唱えた「強いリーダーシップ」のすり替えである。

元々国民が彼に政権に託した時に期待したのは、ねじれ国会の下でとかく陥りがちな大衆迎合的ないし既得権に塗れた短期的視野から離れた決断のはずだった。

具体的には、財政再建のための増税と公共投資から福祉・教育まで含めた大幅な予算切り込み、違憲状態にある選挙区定員の根本的解決、TPP参加を梃子としたゾンビ産業の一掃等々である。

しかし、現実には、それらはいずれも換骨奪胎というよりむしろ逆行しているように見える。今の圧倒的議会勢力の中でもそれらが実行されず、与えられた「強いリーダーシップ」が専ら政権維持のために用いられているようでは、とうてい日本の将来は無いと危惧するものである。 

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