• 読者の声

タイトル【 No.832】シリーズ島と道(4)「離島」は本当に過疎化しているのか(その2)
発行日:2017/11/02
読者の声

◆ 埼玉大学名誉教授 小野 五郎氏(2017/11/03)

現代日本の抱える闇

片桐さん御指摘の点は単なる離島だけの問題ではなく、逆から見れば現代日本そのものが抱えながら、その中にいる者たちが気がつかないだけの暗部を意味しているのではなかろうか。

30数年前四国通産局に赴任した当時、まだ大橋開通前でジェット空港も十分整備されていなかった四国は、佐渡や淡路よりはるかに大きな一つの離島だった。そして、そこに見たのは、まさに片桐さん言う離島の持つ特色そのものだった。

なるほど、本土(!)と連絡船で通う当時の高松は何かと不便な点が多かった。しかし、何よりも驚いたのは、経済指標上では決して豊かでないはずの香川の実感上の豊かさ、貯蓄額の多さだった。

その謎は、当時県民の多くが兼業農家として統計上出ない所得
があったことに加えて、まさに片桐さんが指摘する「貨幣経済」ではない社会、都市部に住む親せきと農村部に住む親せきとの無償の財・サービスのやり取りにあった。

その後大橋開通その他で交通の便はたしかに良くなったが、農政上兼業農家は目の仇にされて減退し、社会全体が貨幣経済化していったように見える。今や四国は離島ではなくってしまったのである。・・・これは、明治以降の日本が歩んできた道とよく似てはいないだろうか。

もちろん近代化・貨幣化のもたらしたものは大きい。だが、その代償として失ったものも非常に大きかったのだということを忘れてはなるまい。元々経済学上計測不可能とされる効用・厚生まで数値化しようというのはしょせん無理なのだから、このまま進んで行けば、これまで以上に失うものが増えてしまう。否、すでに得るものより失うものの方が多くなってはいまいか。

立ち止って、じっくり考える時期はすでに過ぎんとしているのだが・・・


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