• 読者の声

タイトル 【No.896】「特ダネではないけれど(29)統計不正」
発行日:2019/02/07
読者の声

◆ 埼玉大学名誉教授 小野 五郎氏(2019/02/08)

もともと統計を過信するのが誤り

信憑性はともかく「ノーベル経済学賞がシカゴ学派に偏っている」と言われはじめた頃と軌を一にして、学会でも政策面でもとかく計量的手法が重用されるようになりました


しかし、元より「統計は科学的嘘である」という皮肉に代表されるように、数値そのものの客観性と数値をもって表される統計の客観性との混同を悪用して人を騙す手口に乗せられるのは愚かです。

自然科学においてさえ統計数値の有意度は別途の検証を要するのです。まして社会統計においておや。

松浦さんが身を置くメディアが多用するアンケート調査一つ取ってみても、調査対象、調査項目から用語に至るまで須らくある種の誘導性を伴うことは否めません。まして、先験的政策目的を有する官庁統計においておや。

さらに始末の悪いことに、政策目的を持って統計数値を利用する場合、採用する項目・数値如何によって、結果が正反対に出るということも忘れてはなりません。だからこそ、主流派経済学者の主張とは全く異なる黒田・安倍ラインの強弁も成り立つのです。

そうしたことを伏せておいて、悉皆か標本かなど些末の議論ばかりしていても建設的ではありませんよ。

なお、付言しますと、東京都の負担が大きいことをもって中央官庁統計に圧力を加えた最初は、小生の怪しげな記憶によれば、たぶん統計学界の大物でもあった美濃部都知事時代のことだと思います。

てなことで、この問題は、労働学界のみならず統計学界にも責任の一端はあるのですから、厚労省内部はもちろん総務省が「第三者委員会による監査監督」と言ったところで虚しく聞こえるだけです。といって、じゃ誰ならいいの?となると答えはありません。

だからこそ、冒頭のようなそもそも論に遡らざるをえなかった訳です。

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