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タイトル::【No.647】公共建築は誰のものか―国立競技場の建て替えをめぐって― 第四弾「現国立競技場改修がもつ大きな意味」
発行日::2014/03/27
本文:
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    J.I.メールニュース No.647 2014.03.27発行

 公共建築は誰のものか―国立競技場の建て替えをめぐって―
                         第四弾

   「現国立競技場改修がもつ大きな意味」

          建築家・建築エコノミスト 森山 高至

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【1】<巻頭寄稿文>

   公共建築は誰のものか―国立競技場の建て替えをめぐって―
                         第四弾

   「現国立競技場改修がもつ大きな意味」

          建築家・建築エコノミスト 森山 高至

【2】<お知らせ>

   (1)第199回J.I.フォーラム  3月31日開催

      「レジェンドの地、国立競技場を捨ててよいのか」

   (2)「JUDGIT!」を使って新国立競技場の問題を議論しよう!

   (3)会費のクレジット決済システム導入のご案内

   (4)Yahoo!ニュース記事更新情報!


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【1】「現国立競技場改修がもつ大きな意味」

  建築家・建築エコノミスト 森山 高至

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  新国立競技場の問題について、そもそも現状の国立競技場を取り壊して建て替える必要が本当にあるのかに大いに疑問をもっている。今回新築しなければならない理由として、耐震強度や素材劣化の問題に加え、サブトラックの新設と8万人の観客の収容、施設運営の収入源としてのイベントコンサートのための屋根設置が掲げられていた。それらの諸条件について、改修による対応可能性について検証してみた。

  まず、サブトラックについてだが、現時点でも敷地に余裕はなく、一見どこにもサブトラックを置く場所がないように思える。しかしながら、競技場に一体化した南北のスロープ部分を含めて考えてみれば、外苑西通りとの間にサブトラックを設けることが出来そうなのだ。次に8万人収容についてだが、現国立競技場は構造物として合理的な左右対称形をしていない。前回のオリンピック時に東側の客席が増設されており東側に膨らんで歪んだ楕円形なのだ。そこで今度は反対側のロイヤルスタンド側を増設し、左右対称化工事と屋根の最頂部に構造補強もかねた新設の観客席をリング状に回すことにより八万人の座席確保を実現する。また、現状の国立競技場のフィールド面は周辺地盤よりも3メートル程度高い、このフィールド面を掘り下げトラックエリアを広げ、同時にその段差を利用しサッカーやラグビーの観戦席として可動席を設ける。以上のように、屋根の設置と増床する客席の確保を構造耐震補強を含めながら多角的に同時検討することができるはずだ。

  さらに改修に合理性をもたらすのが、競技場フィールドと観客席以外の部分、実は施設のほとんどが外部空間、骨組みのみのコンクリート構造のスケルトンの状態である点にある。柱や梁はそのまま剥きだしであり、通常の改修ではつきものの解体工程、外したり削ったりといった仕上げ部分がないことである。結果として利用可能な未使用の空間が多く眠っており、これらをガラスや壁で覆えば 観客ロビーとか店舗スペース等の仕切りも可能なのである。

  このことから想像できるのは、元々はじめから将来の増改築をにらんだ設計だったのではないか、ということだ。つまり、この国立競技場は未完成の骨組みだけの建築物であって、今回その外装や屋根や諸設備を充填することで、真の完成を迎えるといえなくもないのだ。

  近年、世界中で戦後に建設された近代建築が築50年以上を経て歴史的価値を持ち始めました。我が国においても同様だ。昭和30~40年代の高度成長期に戦後復興に建設された多くの近代建築の処遇が国内全体で議論されている。築後50年以上を経た日本の近代建築の代表である国立競技場を改修維持して生まれ変わらせ、この機会に制度の整備や技術の定式化をおこなうならば、全国の施設改修に向けて大きな起爆剤となり、公共建設における新たな時代の経済政策としても有効な手立てとなるはずなのだ。

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  森山 高至(もりやま たかし)

  1965年岡山県生まれ、早稲田大学理工学部建築学科卒業、早稲田大学政治経済学部大学院経済学修士課程修了。自身の設計事務所を設立し携わった建築は1000件以上。建築物の設計だけでなく地方公共団体の街づくりや公共建設物のコンサルティングに関わる。建築や地場産業に関わる著作活動やテレビ、ラジオ番組での評論活動もおこなっている。

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  新国立競技場―第三弾―メルマガへの読者の声を今回は特別にご紹介します。(31日のJ.I.フォーラムゲスト、後藤健生様執筆分に対して)

  【読者の声】 井上 道義様 (指揮者)

  指揮者である私から見てもオーケストラは大きければよいだけではありません。それぞれの役割があるだけです。

  金沢には日本で一番活動している一流の室内オーケストラがありますが、そのオーケストラは40人。ベルリンやNHKは90人以上ですが、それだけがいつも稼働するわけではありません。

  オリンピック用に巨大なものを建設し、景観を壊しても夏は競技用または水泳用プールに冬は競技用また趣味のアイススケート場に、ひょっとしたら野球に、サッカーに、ラグビーに、またはコンサート等利用するというのでしょうか?すべてに具合の良いものは、有り得ません。

  また金沢の音楽堂は席が1550人ですが(コンサートホールはどこも今は大体2000人規模です)響きは素晴らしいものがあり、臨場感もよく、これ以上になるとやる人と聞く人の間が「遠い」感じにさえなります。

  5万人規模の競技場でアートをやるなら北朝鮮のアリラン祭に勝るものはないでしょう。招聘して毎週公演してもらいますか?

  人間の個人の動きを楽しめるのは80000人規模では大きなテレビの画面の助けがいるのではないでしょうか?

  それならテレビを見ればいいのです。

  今ある国立競技場を思い切りお金をかけてリノベートすることに大賛成です。その方が出来事を受け継ぐ気持ちが深くなると考えます。

  新しく作り屋根を架ければコンサートが出来る?それは結構なことですがそういう事は国が面倒見なくても年に何回か人を集められるその手のお祭り好き人間がやればいいのです。ただし!!大地震の際に屋根を閉じて避難民数万人規模の人びとが雨露をしのげればいいのかもしれませんが壊れたらおじゃんです。

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  構想日本代表 加藤秀樹より

  『世界中で戦後に建設された近代建築が築50年以上を経て歴史的価値を持ち始めた』という話は重要だ。
  日本では4~50年経った建物は「老朽化」したものとして語られる。その建物がその間に町の中で、あるいは人々とともに果たしてきた役割、日本経済に最も勢いがあった時期に建てられた建築物としての歴史的価値などは一般的には顧みられない。
  国立競技場に典型的に見られるように、4~50年経った建物を老朽化を理由にどんどん建て替えていったのでは将来日本には文化遺産も残らないし「レジェンド」も作れない。
  31日のJ.I.フォーラムではこのような問題について議論して頂きます。是非ご参加ください。

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  info@kosonippon.org
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【2】(1) 第199回J.I.フォーラム  3月31日(月)開催
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  「レジェンドの地、国立競技場を捨ててよいのか」

  スポーツは私たちに感動をくれます。そして「レジェンド」が生まれます。1964年の東京オリンピックは、メダル云々を越えてすべてが「レジェンド」です。そして、現国立競技場そのものも「レジェンド」です。それは選手と観客と競技場が一体となって、日本の戦後復興、再生のシンボルになったからです。その20年前には冷たい雨の中で動員学徒の壮行会が行われた同じ場所がきらきらと輝く場所になったからです。だからこそ、今でもスポーツマンたちが、あの聖火台を磨き続けているのです。
  国立競技場の建て替えには、デザイン選定の不透明さや建設・維持費用の大きさなど多くの問題があります。加えて「神宮外苑の歴史的文脈」という視点からも2020年オリンピックの意義を考えたいと思います。

  ○日 時: 3月31日(月)18:30~20:30(開場18:00)

  ○会 場: 日本財団ビル2階 大会議室

  ○ゲスト: 後藤 健生(サッカージャーナリスト)
        さかもと 未明(アーティスト)
        松隈 洋(京都工芸繊維大学 教授)
        コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本 代表)

  ○フォーラム参加費:一般 2,000円 / 学生 500円(学生証提示)
         (シンクネット・構想日本会員は無料です)

  ○懇親会参加費 : 4,000円

  ○懇親会会場  「頤和園(いわえん)溜池山王店」 港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531

    ※ フォーラムへの参加はHPのフォームから、もしくはこのメールにご返信をお願いします。
  (http://www.kosonippon.org/forum/regist.php?m_forum_cd=321)
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 (2) 「JUDGIT!」を使って新国立競技場の問題を議論しよう!
     http://judgit.net/
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  現在、構想日本では、国が行う5,000以上の事業について書かれたシートに誰でも自宅からフェイスブックの「いいね」ボタンを押したり、スタンプを押したり、コメントを書いたりして、意思を表明できるウェブサービス「JUDGIT!(ジャジット)」(もちろん無料)を使い、新国立競技場の問題を議論するキャンペーンを展開しています。

  まずは下記のページにアクセスして、新国立競技場関連のシートに「いいね」やスタンプ、コメントをしてみてください。「JUDGIT!(ジャジット)」を見る人が多いほど、そして使う人が多いほど、新国立競技場の問題について国民的議論が盛り上がります。ぜひ一度見てみてください。

  新国立競技場に関連するシート
  独立行政法人日本スポーツ振興センター運営費交付金に必要な経費
  http://judgit.net/251581/top

  独立行政法人日本スポーツ振興センター施設整備費
  http://judgit.net/251582/top

  ※はじめてご利用される方は簡単な登録が必要になります。ご不明な点等については、下記担当まで、ご遠慮なくお問い合わせください。

   担当:伊藤・田中 TEL:03-5275-5607
          E-mail:shiwake@kosonippon.org
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 (3) 会費のクレジット決済システム導入のご案内
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  構想日本の運営資金は、会員の皆様からの会費(個人会員は一口1万円、入会金2000円)で賄われています。
  この度、入会や会費払込みの手続きを簡単にするため、WEBからクレジットカードで決済できるシステムを導入しました。
  WEB申込みの場合、特典として入会金2000円が無料になります。これから会員になっていただく方はもちろんですが、既に会員になっている方も更新のタイミングでご活用いただけます。
  私たちは、非営利独立の立場から個々の政策に加え、その根底に横たわる政治・行政の仕組みそのものを変えることによって世の中を動かそうと活動しています。この活動に「ちょっと期待してみる」と思われる方、まずは1年間会員になってください。よろしくお願いします。
  http://www.kosonippon.org/info/index.php
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 (4) Yahoo!ニュース記事更新情報!
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  ディレクターの伊藤伸が、Yahooニュースにオーサーとして投稿している記事が更新されました。ぜひ御覧ください。

  ◇2月4日『民意を知るには「抽選」で ~無作為抽出のすすめ~』

   http://bylines.news.yahoo.co.jp/itoshin/20140204-00032306/


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