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タイトル::【No.758】 「特ダネではないけれど(11) 納得感」
発行日::2016/05/26
本文:
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   J.I.メールニュース No.758 2016.05.26 発行 

   「特ダネではないけれど(11) 納得感」

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【1】<巻頭寄稿文>

   「特ダネではないけれど(11) 納得感」

           新聞記者     松浦 祐子 


【2】<お知らせ> 

   (1) 第225回J.I.フォーラム  6月27日 開催 
      
   若者の政治参加を考える ー 政治を「自分事」にするために必要なこと ー
  
   (2) 今後の構想日本の活動

   (3) Yahoo!ニュースオーサー記事更新!


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【1】「特ダネではないけれど(11) 納得感」

           新聞記者     松浦 祐子 

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ゴールデンウイークに留学中や駐在中の友人を訪ねて、イギリスとフランスを旅してきました。

両国ともに消費税の標準税率は20%で物価も高く、旅行者は食事の時などにこの高い税率を実感します。けれど、ロンドンのナショナル・ギャラリー(無料、寄付制)へ行き、荘厳な建物の中で次々と展示されている名画を見ているうちに、「こんなに豊かな気持ちになる場を無料で利用できるならば、高い税金を払うのも仕方がないかな」という納得感がわき上がりました。

日本で増税の議論をする時に最も足りないのは、この「納得感」なのではないかと私は思っています。

私たちは、個人の力だけでは対応できない事柄(医療や介護、保育といった社会保障。公共事業など)に対し、みんなで力を合わせて、みんなでお金を出し合って、生きるために必要な支援を生み出す仕組みを作り出しました。それが、政府の役割です。病気になれば医療を、高齢になり不自由になれば介護を、子どもができれば保育を、失業すれば失業手当をと、自分の努力だけでは、どうしようもないことが起こったとき、きちんと生き続けられるように政府は存在します。そして時代や社会が変われば政府が提供するものも、当然、変えていかなければいけません。それを決めるのは国民です。

だから本来は増税をする時は、国民が今、新たに求めているニーズがあり、それを実現するために実施されるのが本筋だと思います。けれど現在の日本では、そうはなりません。借金の返済や埋め合わせのために多くが消えていってしまうのです。さすがに借金の返済のみでは国民の納得感が得られないだろうということで、消費税を5%から10%に上げる際には、1%分を、医療、介護、保育の分野で新しい取り組みを増やしたり、国民健康保険料や介護保険料の負担を軽くしたりするために使うことに決めました。


さらに日本の国民が負担と受益の間で納得感が得られにくい原因の一つに、医療や介護といった社会保障が、社会保険制度で成り立っていることがあります。

我々は税金とは別に、健康保険料や介護保険料といった「保険料」を支払うことで、少ない負担で医療や介護の支援を得ることができます。しかし、そこでの納得感も、どんどん薄いものになっています。

厚生労働省の幹部を取材していると、「会社で働く人の医療費の窓口での負担を3割にしたのは失敗だった。納得感を感じられなくなった」と言われたことが、何度かありました。

元気な時に高い保険料を払っていても、病気になった時の負担が少なければ、納得感が得られるのかもしれません。けれど現状は窓口負担の増加、高額な薬代、差額ベッド代などで負担への不安感が大きくなっています。
払った時に何に使われるのかが明確でない税金に比べると、「保険料」は医療や介護に使われることがはっきりしているという利点があります。このため政府や自治体が、少しずつ保険料や窓口負担などを増やしてきたのは、制度上は間違ったことではありません。税金を上げるよりも、保険料や窓口負担などを上げる方が国民の反発が小さく、確実に財源を確保できたという背景もあります。

けれど、そんな社会保険制度も少子高齢化の影響を受けて、すでに社会保険制度の「基本」を維持できなくなっています。保険料は働く世代が多くを負担しますが、それ以上に利用する高齢者が増えていますし、景気の低迷で保険料を支払う基準となる賃金も伸びなやんでいます。その結果、1990年度には、年金、医療、介護などに必要な社会保障給付費は、47.2兆円で、そのうち39.5兆円を保険料でまかなうことができていたのですが、2015年度には、116.8兆円の社会保障給付費のうち、64.8兆円分しかまかなえなくなっています。
この差額52兆円の大半は「国債」、つまり政府が借金をすることで補てんしています。政府の借金の原因の1つは、この社会保険制度への補てんであると言っても過言ではありません。

夏の参院選を前に永田町では、2017年4月に予定されている消費税10%への引き上げの再延期もささやかれています。でも消費税を引き上げないならば、社会保険制度(社会保障)にあいた穴は大きくなるだけなのです。基本に立ち戻って、働く世代に大きな負担を強いることになるけれども保険料を上げるのか。困った時の負担増になるけれども利用料を上げるのか。または、負担に見合うまで、受益を減らすのか。消費税以外の税を上げるのか。選択肢は色々とありますが、みなさんが納得感を得られるのはどの方法でしょうか。
そして参院選で「消費税を上げない」という候補者がいたら、「では、何で差額を埋めるのか?」と、是非、問いかけて欲しいと思います。

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 松浦 祐子 (まつうら ゆうこ)

1974年 神戸市生まれ。大学院修了後、1999年新聞社に入社。和歌山、高知での地方勤務、東京での雇用、介護分野、厚生労働省、財務省担当などを経て、現在は新潟で県政を担当。

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【2】(1)第225回J.I.フォーラム  6月27日 開催 

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  若者の政治参加を考える ー 政治を「自分事」にするために必要なこと ー

選挙権年齢が70年ぶりに18歳以上に引き下げられます(前回の引き下げは25歳以上から20歳以上に)。7月の参院選では18、19歳の有権者の投票行動はどうなるのでしょうか。

しかし、より本質的なことはこれら若者を含む全有権者が国や地域社会の抱える課題を「自分事」として考えられるかどうかです。

「若者の政治参加」のオピニオンリーダーと実際に活動している若者をゲストに迎え、これを機に若者だけでなく老・壮世代も含めて政治を「自分事」にするにはどうすべきか議論して頂きます。


  ◯日 時:平成28年6月27日(月)  18:30~20:30(開場18:00)

  ◯会 場:日本財団ビル2階 大会議室  港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111 

        ※場所にご注意ください

  ◯ゲスト:杉浦 正和 (芝浦工大付属柏高校 教頭)

       原田 謙介 (NPO法人YouthCreate 代表理事)

    他

  ◯コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本代表)

  ◯主 催:構想日本

  ◯定 員:160名

  ◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
                ※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

  ◯懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)
          ※フォーラム終了後、ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。

    「頤和園(いわえん)溜池山王店」港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531
 
 ※フォーラムへのご参加は6月27日(月)12:00まで info@kosonippon.org  にお願いします。

  お申し込みはこちらから http://www.kosonippon.org/forum/index.php 

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(2)《今後の構想日本の活動》

 《その他》

2016年4月~隔週月曜日 京都大学経済学研究科・経済学部 特殊講義「公共経営論1」 (代表 加藤秀樹)

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(3)Yahoo!ニュースオーサー記事更新!

  Yahooニュースにオーサーとして投稿している記事が更新されました。ぜひ御覧ください。

  代表 加藤秀樹

  ◇3月8日 防災を「自分事」に

   http://bylines.news.yahoo.co.jp/katohideki/20160308-00055180/

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