【No.804 】 「いじめ」について(整理)|農地の原状回復訴訟団・団長 鈴木 博之氏|  
2017.04.20

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J.I.メールニュース No.804 2017.04.20 発行

「いじめ」について(整理)

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【1】<巻頭寄稿文>

「いじめ」について(整理)

農地の原状回復訴訟団・団長 鈴木 博之

【2】<お知らせ>

(1) 第235回J.I.フォーラム  5月19日(金)開催

「先端から末端、そして先端へ ― 地方自治法制定70年 ―」

【3】<アーカイブ(過去の寄稿文)>

東海村JCO臨界事故当時の村長が語る 「原発」

J.I.メールニュース No.662 2014.07.10発行

「 原発 ―この国の危うさを憂う― 」

前東海村村長  脱原発をめざす首長会議・世話人  村上 達也

【4】<ご紹介>

(1) 福島県内初の「農地の原状回復訴訟」

判決は「却下」

(2)「建物探訪」 第二弾  in千葉県 富里 参加者募集中

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【1】「いじめ」について(整理)

農地の原状回復訴訟団・団長 鈴木 博之

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私たちは、東京電力から「原発爆発事故」の結果、水田を放射性物質(主にセシウム)によって土壌汚染された被害者です。
私たちは、2014年10月14日付で「東京電力」を被告として、「原発事故前の農地に回復せよ」という内容の訴訟を、福島地方裁判所郡山支部に提訴しました。今日まで15回の審理が開かれ、2月10日に結審しました。

判決は4月14日午後1時10分からと裁判長より告げられています。※1

そんな中、私は昨今の「原発避難者いじめ」を原因とする論点に違和感を感じています。

一般的(常態)ないじめ問題と原発事故避難者(原子力緊急事態宣言下※2)に対するいじめ問題では、どの様な違いがあるのか。対応すべき法律、官庁、所管などの観点から考えたいと思います。

通常のいじめ(常態)は、「いじめ防止対策推進法」に則り、対処・対策が執られるべき事象を言い、文部科学省では「初等中等教育局児童生徒課」の所轄となっています。
この法律では地方公共団体(都道府県や市町村)は国と協力し、いじめ対策をする責任が生じます。また、学校の設置者はいじめを防止する責任があります。(公立の場合は当該の自治体、例:○○市)

一方、原発避難者へのいじめ(原子力緊急事態宣言下)は、文部科学省「原子力事故・災害対応マニュアル・平成20年10月」によれば「原子力災害対策本部」にて対応すべき事件であるはずです。※3

なぜならば、福島県は現在も「原子力災害対策特別措置法」を原因法規とする「緊急事態宣言下」にあるからです。※4

内閣府が「緊急事態宣言」したと同時に、各省庁は省庁毎に存在する「原子力災害対応マニュアル」に沿った対応を執る事となります。文部科学大臣はこの時点で「文部科学省原子力災害対策本部長」の立場となり、文科省に於いては「施設企画課長・初中局教育企画課補佐・学校健康教育課補佐」が対処・対策を執ることとなります。

この場合の一番の問題は、原子力災害による被害を予見し「心のケア」をするとしながらも実際には「緊急事態応急対策を怠っていた」事実が、今日の悲劇の原因と思われます。

各自治体、教育委員会、学校等へ、「緊急事態宣言と同時」に文科省から緊急事態に対応した行政措置が執られていたはずです。それなのに、なにゆえ「避難者のいじめ」問題が発生するのか(発生したのか)。

一体どんな措置がとられていたのか、検証しなければならないと思います。

「いじめ現場」の教職員や関係者の狼狽振りに「心が痛みます」。
まさか文科省も「東京電力」のように「想定外」でしたの答弁だけは、カンベンして欲しいものです。

また事件現場で「第三者委員会」による検証が行われていますが、委員各位に於かれましては、「福島県民は緊急事態宣言下」にある事態を十二分に加味されますよう願っています。

なお、我々の原状回復訴訟その他の問い合わせにつきましては、
原告ら代理人弁護士・花澤俊之(東京都中央区日本橋人形町1-9-2富士ビル4階 森の風法律事務所 電話03-6661-7420)へ願います。

機会があれば、原発避難者「いじめへの対処のし方」を整理してみます。

※1 訴訟概要 https://www.kosonippon.org/wp-manager/documents/2017/mail/gaiyou.pdf

判決は、「却下」でした。 概要は下記<ご紹介>にあります。

※2 原子力緊急事態宣言  https://www.kosonippon.org/wp-manager/documents/2017/mail/sengen.pdf
※3 文科省のマニュアル https://www.kosonippon.org/wp-manager/documents/2017/mail/manual.pdf
※4 国会答弁 https://www.kosonippon.org/wp-manager/documents/2017/mail/genpatu.pdf

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【2】第235回J.I.フォーラム  5月19日(金)

「先端から末端、そして先端へ  ― 地方自治法制定70年 ―」

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今年は憲法と同じく地方自治法も制定70年です。
「地方自治」を辞書でひくと「地方公共団体の政治が国の関与によらず(団体自治)住民の意思に基づいて行われること(住民自治)」とあります。
ある県庁所在地の市長が「国が法律で決めてないことはできない」と言ったという話を聞きました。これでは「自治」ではなく、国の「下請け」です。国、地方の公務員の中には市町村を行政の「末端」と呼ぶ人が少なくありません。
下請けから自治へ。末端から先端へ。理念、現場、経営など様々な角度から時代を見据えた地方自治の姿を描いて頂きます。

◯日 時:2017年 5月19日(金) 18:30~20:30 (開場18:00)

◯会 場:アルカディア市ヶ谷  5階「大雪(東)」(千代田区九段北4-2-25)TEL:03-3261-9921
※場所にご注意ください

◯ゲスト:市川 晃 (経済同友会地方分権委員会委員長、住友林業取締役社長)

福嶋 浩彦 (中央学院大学 教授・元消費者庁 長官・元我孫子市長)

横山 忠始 (香川県 三豊市長)         他

◯コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本代表)

◯主 催:構想日本

◯定 員:100名

◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

◯懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)
※フォーラム終了後、ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。

アルカディア市ヶ谷  2F レストラン

※フォーラムへのご参加は5月19日(水)12:00まで info@kosonippon.org  にお願いします。

HPからのお申し込みはこちら https://www.kosonippon.org/wp-manager/forum/index.php

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【3】<アーカイブ(過去の寄稿文)>

国内で初めて事故被曝による死亡者を出した東海村JCO臨界事故

事故当時の様子を元村長が語った。

J.I.メールニュース No.662 2014.07.10発行

「 原発 ―この国の危うさを憂う― 」

前東海村村長  脱原発をめざす首長会議・世話人 ※肩書は当時のもの

村上 達也

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福島原発事故はこの国の在りよう、国民の精神性を問うている。

本来なら事故を受けて価値観の転換があってしかるべきだが、安倍政権の誕生以後、原発勢力が公然と復活し福島以前に戻ろうとしている。「倫理委員会」の結論を受けて脱原発に転換したドイツとの懸隔は大きい。

この国の精神の貧困を思い、情けなく、悲しい。

5月20日、ここ東海村の日本原子力発電(株)は東海第二原発の適性審査申請を規制委員会に提出した。「あの原電が?他の原発に先んじて!」私の率直な驚きである。東海第二原発は35年経過の老朽原発であり、3.11で被災した原発がである。その上、首都圏に最も近くあり30km圏内には100万人が住む。再稼動には最も遠いところにいる筈の原発が、遮二無二再稼動に邁進する、この姿勢は正直醜悪である。一旦事があればこの国は吹っ飛ぶ。そこまで言わなくとも、優に100万人以上に及ぶ避難者に、責任をとる覚悟あってのことか。国が丸ごとかかっても無理だ。福島15万人の避難者さえ救済できてないのだから。

原電の居丈高な姿勢は安倍政権のお陰。

この政権は国民議論を経て纏めた民主党政権の脱原発政策をボロ布の如く投げ捨て、全く原発事故以前に戻した。
原子力を「重要なベースロード電源」とするエネルギー基本計画と『「世界一厳しい」規制基準に合格したものは着実に再稼動する』との安倍首相発言によるものである。

強引な憲法解釈などと軌を一にした、無茶苦茶な国権主義的姿勢だ。これで原発勢力は俄然勢いを取り戻した。

なにが「世界一」なものか!欧米諸国で適用されているIAEA基準の「深層防護」※1の思想がなく、避難計画等緊急時対応の適否判断が規制基準に含まれていない。

首相は「世界一」とか「世界最優秀」という言葉が好きなようだが、戦前の「神国日本」「不敗の皇軍」が想起させられる何と空疎な言葉か。未だに事故原因の究明、事故の収束、避難者の前途も見えていない、そうした中で政府と原子力業界は戦前の軍部同様、国民の命を楯に己の利権保持に走っている。

このままヒロシマ、ナガサキの轍を踏むのか。
もう一度甚大な原発事故を起さないと目覚めないのか、嫌悪、立腹ばかりか悲哀さえも覚える。

今の状況に私は、もんじゅ事故後とJCO臨界事故後の原子力業界の動きが想起させられる。両事故のあと信頼回復のためにと政府も業界もPA活動※2と称する住民対策、原子力「安全神話」の宣伝に躍起となっていた。しかし、それは科学的精神の衰弱を齎し、自惚れと過信と夜郎自大意識の蔓延など自らを蝕んだだけだった。

JCO事故については「事故原因は規制を逸脱し、『バケツとヒシャク』で作業を行った不埒な会社の行為にある」というが如き皮相な総括を以てJCOをスケープゴートにし幕を引き(JCOは刑事告訴された)、原子力業界は官も民も自らが反省することはなかった。

私は衆議院科学技術委員会公聴会(’99,11,24)などで、「臨界事故は、原子力科学技術を保有、利用するに足る法整備がなく、組織体制もできていないところで起こった。これが事故の真の原因、社会的背景だ。」「原子力災害を想定した法律もなければ、規制組織は推進一辺倒の体制の中でお飾り程度に過ぎない。これを改め規制組織独立の原則に基づき推進と規制は組織分離すべきだ。」と言ってきた。

しかし政府、原子力業界はその後もIAEAなどからの勧告にも拘らず、お茶濁しの改革で済まし、その結果が福島原発事故に至った。JCO事故後新設された原子力安全・保安院は、結局推進官庁の経産省資源エネルギー庁内に止まり「原発推進が役目だ」と公言して憚らなかった。原子力業界は私に対し、二度の村長戦で「反原子力の村長」と烙印を押し、総力を挙げて戦いを挑んできた。原子力推進の象徴『東海村の村長』は、彼らの意中の者でなくてはならないのであった。

このような経緯から私は「JCO臨界事故からフクシマまでは一直線だ」と言ってきている。この国は原発のような巨大科学技術を手にする能力はあるだろう、だがそれを制御する社会的能力や文化をつくることに失敗してきた。

福島原発事故を起した以上は、厳しいけれど、これを自認することが次への第一歩だと思う。成長戦略だ、産業競争力だ、集団的自衛権だという前に。

5月21日、福井地裁は大飯原発運転差し止め訴訟で経済的利益よりも「生存に関わる人格権」が優先するとする画期的な判決を下した。

ドイツ「倫理委員会」に比肩しうる精神、論理だ。国民の命、個人の平和な生活よりも国威や国益優先の国権主義者には無理な注文かも知れないが、安倍首相は権力を弄ぶのを止め、国民の声を聞き、メルケル首相に倣い、脱原発を決断すべきである。福島原発事故は第二の敗戦とも言われる。今こそ日本国憲法の真髄をひも解き、道を正すべき時である。敗戦後に先輩達がしたように。

※1原子力施設の安全確保の考え方の一つ 第5層からなる防護レベル。日本は第1~3層。IAEAなどの国際基準は第1~5層。

※2(パブリック・アクセプタンス)原子力発電所・空港の建設など、周辺に社会的な影響を与える事柄について、住民の合意をえること。

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村上 達也 (むらかみ たつや)

1943年茨城県東海村生まれ。1966年一橋大学卒業、常陽銀行入行。1997年東海村長に就任(2013年退任、4期)。元全国原子力発電所在地市町村協議会副会長(福島原発事故で引責辞任)。現「脱原発をめざす首長会議」世話人。( http://mayors.npfree.jp/ ) 1999年JCO臨界事故遭遇、村長独断で住民避難を実施。事故後水俣市訪問、村政の基本を「開発・発展からの脱却、人と環境優先」に。2012年社会的、文化的価値重視の「サイエンスタウン構想」策定。

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【4】<ご紹介>

構想日本が注目している活動をご紹介いたします。

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(1)福島県内初の「農地の原状回復訴訟」

3.11東京電力福島第一原発事故の放射性物質により農地が汚染され、信頼が損なわれた。

農地の土壌中の放射性セシウムを事故前の濃度(1キロあたり50ベクレル)以下まで減らすよう東電に求めていた。

2017年4月14日(金)13時10分~ 福島地方裁判所郡山支部 で、判決がくだされた。

主 文

1 本件各訴えをいずれも却下する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

全文はこちらから → https://www.kosonippon.org/wp-manager/documents/2017/mail/20170414.pdf

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(2)「建物探訪」 第二弾  in千葉県 富里

楽しく社会貢献活動をしようという趣旨で昨年活動を始めた一般財団法人荒井財団が主催する、知られざる名建築物を見学するツアー「建物探訪」を構想日本がお手伝いしています。

今回はその第2弾、冨里市の「旧岩崎家末広別邸」を見学します。

「建物探訪」

◇日 時:5月19日(金) 11:30 成田駅集合

◇場 所:千葉県冨里市「旧岩崎家末広別邸」

◇行 程:11:30 JR成田駅集合・昼食
13:00 旧岩崎家末広別邸見学(120分程度)
15:30 JR成田駅解散

◇募集数:5名

◇費用:実費(現地での移動費、昼食、お茶等)

※ご応募者多数の場合は抽選とさせていただきます。
※現地集合・現地解散、昼食は各自でのお支払となります。
※現地での移動はタクシー(予定)です。お一人様2,000円程度かかる見込みです。

◯参加ご希望の方は5月15日(月)17時までにinfo@kosonippon.orgへメールにてお申し込みください。

お問合せは構想日本 堺(info@kosonippon.org/TEL:03-5275-5607)まで。

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