構想日本が考える日本の姿「低コスト・高満足社会」(1/6)

これまで世界のお手本にされてきたいわゆる欧米先進国の行き詰まりを見ると、民主主義や経済運営など国の骨組みを見直す必要があるのではないか。そんな視点からこれまでの国の骨組みをおさらいし、これからの社会の設計図をスケッチしてみます。

 

近代国家の骨組み=福祉国家×民主主義×経済成長

 

いま私たちが持っている国のイメージの骨組みは、福祉国家×民主主義×経済成長の組合せと言っていいでしょう。先進国とはこの組み合わせがうまく回ってきた国であり、途上国や非民主主義国がお手本とすべきものとされてきました。
まず、この三つについてそれぞれ少し説明します。

 

「福祉国家」とは、狭い意味の福祉に留まりません。近代以前の、国は防衛と治安だけを担う=「夜警国家」に対して、国民の生活の安定と一定レベルの保証を担うという意味です。災害の防止、道路や上下水道などのインフラ整備に始まり、医療、教育、雇用、生活保障など税金を使って国民の生活にとって必要な行政事業を行う。国は国民にとって最低限必要なものを提供するという意味で、その水準をシビル・ミニマムと言ったりします。日本国憲法25条はこのことを定めていると言えるでしょう。

 

次に「民主主義」については言うまでもないでしょうが、性別や財産などで制限されない「普通選挙」で選ばれた議員が、地域や国の意思決定をするしくみを指しています。民主主義がきちんと機能するには、表現の自由、公正な選挙、国や行政の透明性(情報公開など)、そして健全なジャーナリズムなどが前提となります。

 

福祉国家と民主主義の関係について言えば、福祉国家として国は国民のためにどんな事業をするか、そのために必要となる税金やその使い方をどうするかなどを決めるのが民主主義による政治ということです。いま風に言えば、コンテンツとシステムまたはプロセスという関係でしょうか。

 

三番目の「経済成長」は、福祉国家をうまく回していくための原資をもたらすものです。福祉国家が行う事業は、国民が支払う税金でまかないます。ですから、国がより多くの事業をしようとすれば、より多くの税収が必要になります。そのためには、増税するか、経済全体を大きくする、すなわち経済成長するか、ということになります。日本は戦後40年間ほどはかなりの経済成長が続いたため増税しなくても原資が増え、国の事業を増やし続けることができました。しかしその後は成長が小さくなったにもかかわらず、国の事業を増やす体質が変わらないため、世界一の借金大国になったのです。

 

日本や欧米先進国では、この三つが曲がりなりにもうまく回っていたのですが、問題は近年この三つの要素それぞれが互いに他の要素を蝕む状況が生じ、その結果この組み合わせが機能しなくなりつつあることです。

 

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