【自治体決算カードの見方】その7:基金

地方自治体は、年度間の財源調整や特定目的のための財源確保の一環として、年度の財政運営の中で一定額を積み立て、これを「基金」として管理することができるようになっています。

年度間の財源調整として多くの自治体で設けているのが「財政調整基金」で、経済の急激な低迷により予想外に税収が落ち込んだ場合や、甚大な災害による復旧費用や税収減となった場合に歳入欠陥とならないようにするために設けられています。

また、最近は公募地方債を発行する自治体が増えていますが、公募地方債の場合は、満期一括償還が基本となっており、将来の償還に備えて毎年度一定額を積み立てる「減債基金」を設けている自治体も多くなっています。

このほか、大規模な施設を建設するための財源としての「特定目的基金」を設置している自治体も多くあります。特に、高度成長期に建設した公共施設が今後大量に更新時期を迎えるなかで、公共施設の整備のための基金を設ける必要が迫られています。

では、その積み立て財源を確保するにはどうしたらよいのでしょうか。

まず、財政調整基金は、地方財政法第7条の規定により、「地方公共団体は、各年度の決算剰余金の1/2を下回らない金額を積み立てるか地方債の繰上げ償還の財源に充てる」とされていますので、決算剰余金を可能な限り積み立てる財政運営が求められます。

減債基金のうち、公募地方債に関するものは、償還年数に応じて等分の金額を、その年度の税収の中から優先して毎年積み立てる必要があります。他の地方債に関する償還財源は、中長期的な財政収支試算を作成し、各年度の償還額が一定額以下で推移するようにしていかなければなりません。

その他の基金については、例えば、土地等の財産を処分した際の収入や寄付金等の臨時的な収入が生じた場合には、その財源を経常的な支出に使途してしまうのでなく基金に積み立てて将来の支出に備えるような財政運営を心がけるべきです。

「基金残高」は多いにこしたことはありませんが、過大な積み立ては、世代間の公平の観点から好ましくなく、しっかりとした目標額を設定することが重要です。

「財政調整基金」は、財政再生基準を目安として、都道府県の場合は標準財政規模の5%、市町村の場合は20%程度を目安とすることをお奨めします。

文化会館や総合体育館のように数十億円規模の建設費となる場合は、それぞれの建設計画の中で目標額を定めることが必要です。

公共施設の更新のための基金については、各自治体のバランスシートに計上されている減価償却累計額の10%程度を目安に基金を確保しておくことを奨めます。公共施設を再建築する場合、各種補助金のほか、地方債を充当することで70~80%程度の財源が見込めます。残りを現世代の住民の負担で整備するという考え方から一定額を積み立てておくことが必要です。