【No.113】「思考は環境で規定される?」に寄せて
2003.09.12

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「思考は環境で規定される?」に寄せて
JIメールニュースNo.113  2003.9.12
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■■ 目次 ■■
1.《読者の声》「思考は環境で規定される?」に寄せて
2.《8月20日第74回「JIフォーラム」の報告》
3.《第75回「J.I. フォーラム」のご案内》

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1.《読者の声》思考は環境で規定される? に寄せて

JIメールニュースNo.109で掲載した「思考は環境で規定される?」
( https://www.kosonippon.org/wp-manager/mailnews/log.html?no=117 )について、
読者のみなさんからいくつかご意見を頂きました。今回は、それらをまと
めてお送りします。引き続き、ご意見をお待ちしております。

*      *      *      *
NPO法人 「循環共生社会システム研究所」
代表理事 内藤 正明 (京都大学名誉教授)様より
新設した我々の大学院(京都大学地球環境学堂・学舎)では、割り当て
られるべき必要スペースが、どうしても用意できないということで、
近年使われていない総長官舎の使用が、特別に認められることとなった。
それは、名のある方の別邸だったもので、和風に当時のハイカラな洋風建
築が組み合わさった、まさに大正モダ-ンの代表的な建物であります。
古風な絨毯が敷かれ、手工芸風のシャンデリアが下がった部屋のラウンド
テーブルでの講義を学生も大変好み、教官もそこでの議論を楽しみにする
ようになりました。
さて面白いことは、学生や教官の議論に明らかに変化が現れたと思われ
ることです。必ずしも定量データを取ったわけではないが、議論の時間が
延びることを誰も嫌がらなくなり、テンポがゆっくりになりました。この
ことは当然、内容がこれまでより幅広く駆け巡り、また深いところに踏み
入る結果になったと言えます。しばしば哲学的な議論が学生からも提起さ
れるなど、これまでは余り見られなかったことが起こり始めました。
これまでは、講義室も研究室も昭和30年代に急造された、コンクリート
打ちっぱなしの箱型ビルであった。そこでは、学生は決められた時間を我
慢して講義に付き合い、終ればさっさと退室し、そこに残って教官と話が
弾む‥などということは皆無であった。
結局、四角い箱ビルは効率的に知識を伝える(詰め込む)のに適した、機
能だけの容れ物であったことを改めて認識した次第です。これは高度成長
期に役立つ企業戦士を大量生産する兵舎に過ぎなかった、と言っては言い
過ぎでしょうか。
今はもうそのような時代ではない。これから新たな世の中に変えていく
には、”社会とは何か、人とは何か”からじっくりと議論を深めるべきは
不可欠であろうが、そのような場として、これまでの四角いコンクリート
ビルが相応しいとは決して思えない。
最近ようやく学校の校舎のデザインが工夫され、また木でも造られるよう
になってきたことは、このような時代の要請でもあるのでしょう。さらに
ギリシャ時代の逍遥学派のように、庭園や緑陰を歩きながら哲学を論じる
‥というような場もそろそろ考える時代ではないでしょうか。
などといったことを考えていた時に、近藤氏の主張を読んだので、門外漢
ながら思わず反応した次第です。
その道の専門家は既にこのような議論はされているでしょうから、何かご
教示頂ければ幸いです。
*      *      *      *
泉大津市役所
タケウチシンイチ様より
確かに環境によって思考は変わる部分が多いと思います。しかし、環境
に負けることなく大事業をした偉人はあまりに多い。ユネスコ憲章にも紹
介されている言葉に日蓮の身は王に従えられても心は従えられないとあり
ます。ロシア正教から破門されたトルストイやユゴー、ベートーベン、ガ
ンジー、ソクラテス、南アフリカのマンデラ元大統領等々です。我が身は
環境によって作られるが我が身が環境を創ることが出来ると考えます。
*      *      *      *
岩手県紫波町 政策経営課 政策調整室
佐藤勇悦様より
興味深く拝見いたしました。

> 私たちの思考は、現在置かれている環境に依存、あるいは拘束されがち
>である、ということ。緯度と経度と標高。つまりは環境が思考を規定して
> しまっている。これは、ずっと職場で多忙な1日を過ごしていれば思考
> がワンパターン化しがちであることにもつながる。いや、おそろしい。

私は、岩手県紫波町の役場職員です。
本町では、農林水産省との間で、人事交流させていただいております。

で、農水省(本町職員の派遣先セクションのことですが)に
派遣された本町職員の話では、毎日毎日、午前さまとか。

がんばって働かれていることには、敬意を表したいのですが、
同時に、近藤さまがおっしゃるような「思考のワンパターン化」を私は以
前から危惧しておりました。

また物事は、「鳥の目」と「犬の目」の両方で見よといいますが、
どちらかというと、国の方々は、「鳥の目」で見る機会が多く、
我々市町村の職員は、「犬の目」で見ていることが多いのかも
しれません。

余談ですが、集まった資料のみで物事を判断する場合、
「何の目で見る」ということになるのでしょうか。
>  高いところでは遠方を眺めて景色の良さに感嘆することになりますが、
> 足元を見下ろすと高所恐怖症でなくても思わずめまいがしてしまいます。
> かといって街中を歩いていると、車とビルと犬の糞やタバコの吸殻ばか
> り目についてしまうことにもなりかねません。よくビジネスマン向けの
> ノウハウ本では多様なものの見方に触れ、アイデアを豊富にするために
> は社外にネットワークをつくるように、などと書いてありますが、3次
> 元での物理的な行動範囲を広げることがはじめの一歩かもしれません。
> 「書を捨て、街に出よう。」そして旅をしよう。
>  さて、この考え、果たして的を得ているでしょうか。

私は、実に当を得たお言葉と存じます。

もっとフィールドに出られて、
そこに行かなければ分からない現場の空気を吸われる中で、
思考していただくことが、よりよい政策に結びつくのだろうと
日頃から感じております。
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2.《8月20日第74回「JIフォーラム」の報告》
医療改革を「医の原点」から見つめ直す!!
-患者の視線で医療に取り組む現場医師が語る-
私たち誰にとっても「元気」が基本。その「元気」を維持するための医
療への関心は、かつてないほど高まっています。内閣府のアンケート調査
結果でも、「あなたにとって生活領域の中で一番重要な分野は?」という
質問に対して「医療と保健」(33%)、「政策として最も力を入れてほ
しい領域」は「医療と保健」が32%で共にトップです。
「元気になりたい」患者と向き合う現場の医師がこれに真摯に応えるた
めには、患者一人一人の個別的で多様なニーズに対応していかなければな
りません。これは、以下の討論者のみなさんのコメントからうかがえます。
「自分は、高齢化が進んだ人口1300人の山村で医者をやっている。日々、
発見の毎日で医学部では教えてもらえないような人と人との接点のあり方
が原点として村にこそある、といったら申し訳ないが、多分、都会にもあ
るのだろうが、自分のように感性の鈍い人間には、都会ではなかなか見出
せなかったということだと思う。」(佐久総合病院内科医師 南相木村診療
所長 色平氏)
「医療とは、ある人が生まれてから死ぬまでにかかった病を治すことをお
手伝いする、なおかつ治らない人については、その人がその期間生きてい
くことをお手伝いすること。その根本にあるのが『命』をどのように考え
るのかということ、これが非常に重要。」(東京大学先端科学技術研究セ
ンター特任教授 江里口氏)
「手術は決してペーパーワークだけで上手くなるものではなく、実際に手
を汚して数をこなさないと決して上手くならない。また、どれだけいい先
生について勉強してきたかということが如実に出る=大工さんと同じ。」
(せんぽ東京高輪病院心臓血管外科医長 堀見氏)
「医療界でよく言われるところの『寄らしむべし、知らしむべからず』と
いう環境(日本の国全体に言えることかもしれないが)を変え、自分たち
の視点で正しい医療を行っていくということを私たち患者、そして、心あ
る医療者のもとに取り戻したい。」(医療ジャーナリスト/医療事故市民オ
ンブズマン・メディオ副議長 伊藤氏)
当日は、それぞれ違う現場で活躍している医師やジャーナリストのみな
さんがそれぞれの立場から医療のあるべき姿について熱い議論を交わしま
した。
先のアンケート調査で、国民が医療制度改革に求めるものの第一位は
「医者の質の向上」(52%)。現場の医師一人一人が患者側の立場に立
つという「医の原点」を見据えることによって初めて、これが実現できる
のではないでしょうか。
<討論者>
伊藤 隼也(医療ジャーナリスト(医療情報研究所)/医療事故市民オンブ
ズマン・メディオ副議長)
色平 哲郎(佐久総合病院内科医師 南相木村診療所長)
江里口 正純(東京大学先端科学技術研究センター特任教授)
堀見 洋継(せんぽ東京高輪病院心臓血管外科医長)
<コーディネーター>
近藤 正晃ジェームス(東京大学先端科学技術研究センター客員助教授)
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3.《第75回「J.I. フォーラム」のご案内》

「住民基本台帳ネットワーク」
-本当に便利? 管理システムに組み込まれる?-
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「8月25日から本格稼働した住民基本台帳ネットワーク。この仕組みの
中で、果たして私たちの大切な個人情報は充分に保護されるのでしょうか。
昨夏、総務省はこのネットワークは専用回線を使用するクローズしたシス
テムだと説明しました。しかし、今年初め、同省が全国の3215市町村に対
し実施された調査の結果をみると、810余りの自治体がインターネットにつ
ながっている危険性すらうかがえます。この結果に対し、総務省及び総務
大臣は、きちんとした説明責任を果たさないまま、住基ネットの拡大使用
を推進しています。
住基ネットはそもそも誰のための仕組みなのか、これは本当に私たち国民
の役に立つのか、財政負担に比べて充分なメリットがあるのか、そして、
これで国民の人権やプライバシーが守られる社会が築いてゆけるのか…
私たち自身が今一度、立ち止まって考えてみることが必要ではないでしょ
うか。」(ジャーナリスト櫻井 よしこ氏)
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日 時  :平成15年9月30日(火)
会 場  :銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演  :午後6時30分(開場:午後6時00分)
討論者  :櫻井 よしこ(ジャーナリスト)
山田 宏(東京都杉並区長)
江原 昇(東京都練馬区職員/練馬区改正住基法問題研究
会)
その他
コーディネーター:高成田 享(朝日新聞論説委員)
主 催  :構想日本
定 員  :160名
参加費  :2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
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参加希望の方は、下記のメールアドレスにお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
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参加ご希望の方は、誠に恐縮ですが9月29日までに出欠の是非を
お知らせ願います。
お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)

*シンクネット・構想日本の会員は8月からフォーラム参加費は無料
になっています。申込が必要ですのでご注意ください。また、申込
の際は会員番号をお知らせ下さい。
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