【No.134】年金制度改革案を斬る
2004.02.13

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
年金制度改革案を斬る
JIメールニュースNo.134  2004.2.13
窓口はこちら! info@kosonippon.org
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
■■ 目次 ■■
1.《年金制度改革案を斬る》
2.《第79回「J.I. フォーラム」の報告》
3.《第80回「J.I. フォーラム」のご案内》
4.《お知らせ》

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
1.《年金制度改革案を斬る》
~年金に対する国民の信頼を取り戻そう!~
政策スタッフ  大内隆美

2月10日、年金改革法案が国会に提出されました。柱となる内容
・国庫負担の3分の1から2分の1への引き上げ、
・将来の給付水準(現役世代の平均的な手取り収入の50%以上を確保)、
・将来の保険料率(18.30%を上限)
は、いずれも現行制度自体は変えることなく、単に年金財政の破綻を引き
延ばすための対症療法にすぎません。年金制度に対する不信感をなくし、
持続可能な制度を確立するには、仕組みそのものを見直すことが不可欠で
す。
●「不公平感」が不満の主な原因
構想日本の個人会員を対象におこなったアンケート調査によると、保険
料の負担増や給付削減が問題だと思う人が約3割に対して、世代間の不公平
や、国民年金への未加入・保険料未払いの増加の方が問題がある、と考え
る人が約6割に達しました。これは、財源を中心とした“カネ”の問題よ
り、むしろ不公平に対して不満を持っている人が多いということです。
「不公平感」が制度への信頼を失わせ、そのことが空洞化をもたらし、ひ
いては財源問題を引き起こしています。これに応えるには、今の制度を基
本から見直すしかありません。
●年金制度が抱える問題点
現在の年金制度は、本来、異なる3つの制度(国民年金、厚生年金、共済
年金)をつなげるなど、矛盾を多く抱えた制度です。そのため、以下の問
題が生じています。
(1) 国民年金の空洞化
未納、未加入者が約4割にも達しており、そのしわ 寄せが厚生年金加入
者等に押し付けられています。
(2) 厚生年金の空洞化
保険料の負担を嫌って加入義務を逃れている企業 がかなりあり、そのし
わ寄せがきちんと加入している企業と従業員に押し付けられています。
(3) 世代間の不公平
手厚い給付と少ない保険料負担のアンバランスのツケ(過去債務450兆円)
が先送りされ続けており、将来の保険料率引き上げの多くはその解消に充
てられます。
〇給付額の保険料負担に対する倍率は、70歳で約3.4倍、50歳で約1.3倍、30
歳で約0.9倍(内閣府 平成15年度版 年次経済財政報告書より)

(4) 積立金の運用
国民が払った保険料の一部が、株式運用などによって大きなリスクにさら
されています。
○2002年度末の累積赤字は約6兆円
●今後どのようにすべきか?
年金問題は今年度の改革で終わりではありません。これ以上将来世代に
ツケを先送りすることをやめ、私たちの将来を託せる持続可能な制度を創
るためには、以下の項目についてきちんと議論をし、「検討」する旨を法
案の中に盛り込むことが必要です。
~ 検討項目 ~
(1) 基礎年金の位置付けをはっきりさせること
すべての国民を対象とするか、それとも加入者に限るか、それを決めるこ
とがまず必要(これにより基礎年金の財源を税にするか(税方式)、保険
料にするか(保険料方式)が自動的に決まる)
(2) 基礎年金の給付水準と給付要件を決めること
上記(1)の検討結果を踏まえ、具体的な給付の水準と要件を制度設計する必
要あり
(3) 給付と負担のバランスに関する世代間格差を見直すこと
給付と負担のバランスの過大な格差が空洞化の原因になっており、見直し
が急務
(4) 積立金の運用方法を変えること
運用に伴う累積損失をこれ以上増やさず、また株式市場への政府の介入を
防ぐために、抜本的な見直しが必要
経済界、労働組合などは、抜本的な制度改革が必要だという点で一致し
ています。構想日本は、このようなところと共に声を出してキャンペーン
を展開していきます。これを国民的な運動にするにはどうすればよいか、
皆様のご意見を是非聞かせて下さい。

≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡
2.《第79回「J.I. フォーラム」の報告》
開発援助を通して考えた「人間の幸福」
- 何が先進国・何が開発途上国?-
ある資料によると現在、世界で約28億人が1日2ドル以下の生活をし
ており、貧富の差が拡大し続けています。そして、毎秒4000㎡の森が消え、
1億3000万人の子供が学校に行けず、15億人が安全な水を飲めない状態で、
中でも、1日1ドル未満で生き延びている絶対的貧困層と呼ばれる人たち
はおよそ12億人もいます。
「アフリカの場合、まだ医療設備が整っていないため、病気をしても病院
に行くことができない。だから一生病院にかからないですむ健康体をつく
ることを支援しようと、村ぐるみで学校の子供たちに伝統薬を植えさせ、
それを各家庭にもって行かせ、自家栽培して自己防衛しましょうという運
動をした。現代薬学と村で言い伝えられてきた植物とで付け合わせ作業を
したら、かなりの確率で薬効が一致した。」(食物・栄養研究家 岸田袈
裟氏)
「アフリカに行ったときには、そのまま飲める水が少ないので、水には非
常に注意する。水の問題が解決すれば、おおよその病気は解決する。日本
に帰ったときまずほっとしたのは、水が飲めること。水が飲めることは基
本。」(外務省特命全権大使<NGO担当> 五月女光弘氏)
「私たちのアフリカに対するイメージは、2つの対極に分かれている。貧
しくて干ばつや飢餓に襲われている食うや食わずの生活をしているイメー
ジと、かたやロマンティクな大草原サバンナを動物が駆け巡るイメー
ジ。」(京都大学大学院助教授 重田真義氏)
日本人にとって近くて遠い国は韓国、遠くて近い国はアメリカ、イギリ
ス、フランス、イタリ―… そして、遠くて遠い国はアフリカ。当日は、
その遠くて遠い国での体験を中心に、「先進国」による「途上国」への援
助のあり方や「人間の幸福」についての議論が交わされました。
私たち「先進国」の人間はとかく、自分たちのものさしでより進んでい
る自分たちが後から来る「途上国」の人たちに救いの手をさしのべたり教
えたりという発想をしがちですが、世界には色々なものさしがあり、「先
進国」のものさしを「途上国」に押し付けることが必ずしも「途上国」の
人たちの幸福につながらない、さらには、何が「より進んだ」状態かを決
めつけることも実は危険だということを、改めて考えさせられる貴重な時
間でした。
≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡
3.《第80回「JIフォーラム」のご案内》
保育所は「雇用」「女性」だけの問題か?
~“乳幼児教育”が日本の将来を致命的に左右する !!~
子どもの成長、教育の視点から「保育所」を考えたことがありますか?
それは、乳幼児が人として生涯の土台をつくる最初の社会、教育の原点で
す。これまで保育所は、縦割り行政のせいで雇用の面からしか語られてき
ませんでした。教育の視点がすっぽりと抜け落ちていてもよいのでしょう
か? 日本の将来に重大な事態を招くことにならないでしょうか? 第一
部・二部を通して徹底的に討論します。
★ 第一部 【16:00~18:00】 施設の民営化、幼保一元化など“量”を
確保するだけの施策をうけて、保育・育児現場 が抱える問題を、生々
しく語ります。
★ 第二部 【18:30~20:30】 乳幼児の“育ち”を軸とした改革なしに
社会の繁栄はありえません。“雇用”中心の次世代育成施策ではなく、
企業が何をなし得るかを含め議論します。
——————————————————————
日時: 平成16年 2 月25日(水)
会場: 銀座ソニービル8階 ソミドホール
開演: <第1部> 16:00 ~ 18:00 (15:00開場)
司 会:小西行郎 (東京女子医科大学教授)
討論者:安藤哲男  (株式会社資生堂人事部課長、企業内保育
施設「カンガルーム」責任者)
大日向雅美(恵泉女学園大学教授)
遠山洋一 (バオバブ保育園小さな家園長)
新澤拓治 (江東区子ども家庭支援センターみずべ地域
ネットワーク主任)
普光院亜紀 (保育園を考える親の会代表)
<第2部> 18:30 ~ 20:30
司 会:小泉英明 (株式会社日立製作所参与・技師長)
討論者:本田和子 (お茶の水女子大学学長)
吉岡てつを(厚生労働省少子化対策室長)
汐見稔幸 (東京大学大学院教授)
山極清子 (株式会社資生堂経営改革室次長)

主催:構想日本  定員:160名(先着)
企画:七海 陽・小西行郎・汐見稔幸
参加費:2,000円(シンクネット構想日本会員は無料です)
—————————————————————–
参加希望の方は、下記のメールアドレスにお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
—————————————————————–
参加ご希望の方は、2月24日までに出欠のご連絡ください。
(残席が少なくなっています。)
お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)
≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡ ≡≡
4.《お知らせ》
ジャーナリストの櫻井よしこさんが道路公団改革の政府案の決定プロセス
における関係者の動きを、克明にレポートしています。政府委員である猪
瀬氏が自らのペンで「報告」することによって新しい「事実」が創り出さ
れるおそれ。それをほとんど指摘してこなかったTV、新聞、雑誌。
わが国のジャーナリズムのあり方に対する重大な問題提起です。
是非、ご覧下さい。
●「新潮45」2月号(新潮社)
「猪瀬直樹の仮面を剥ぐ」 櫻井よしこ
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
◆寄せられたご意見は「読者の声」として以下に掲載しています。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/mailnews/log.html
不掲載をご希望の場合は、必ずその旨をご意見などのメールに明記下さい。
また、氏名、肩書きは、特にことわり書きがなければそのまま掲載します。
イニシャル、匿名、ハンドルネーム使用の場合は必ず明記下さい。
◆構想日本メールニュースのご購読は下記のアドレスから。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/mailnews/
◆配信の停止やアドレス変更は、 news@kosonippon.org にご連絡願いま
す。
◆構想日本メールニュースは、政策シンクタンク「構想日本」の最新
情報をお届けする無料のメール配信サービスです。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
週刊JIメールニュース  発行:構想日本 発行責任者:加藤秀樹
info@kosonippon.org
https://www.kosonippon.org/wp-manager/
Copyright(C) 1999-2004 -構想日本- All rights reserved.
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛