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【No.144】「医療情報の公開」=「医療の質の向上」

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「医療情報の公開」=「医療の質の向上」
JIメールニュースNo.144  2004.4.23
窓口はこちら! info@kosonippon.org
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■■ 目次 ■■
1.《「医療情報の公開」=「医療の質の向上」》
2.《お知らせ》
3.《第82回「J.I. フォーラム」のご案内》

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1.《「医療情報の公開」=「医療の質の向上」》
医療事故市民オンブズマン メディオ代表
阿部 康一

●患者が求める医療情報
私が今、注目している連載記事があります。それは、日経BP社のホー
ムページに掲載されている「がんの治療成績を読む」です。
http://medwave2.nikkeibp.co.jp/wcs/med/leaf?CID=onair/medwave/tpic/301148
患者が求める医療情報とは、何か? ストレートに表現すると、「私の病
気を安全に治してくれるのは、どの病院か」を示してくれる情報です。
がん患者であれば、「自分と同じような病状の人が、どんな治療を、ど
の病院で受けると、1年後、5年後、どれだけの確率で生きられるか」を
知ることができて初めて、治療法と病院を選択できるのです。
本連載は、各病院の成績を 1ヵ所に集めており、それぞれを比較できる
ようになっています。病院の成績をホームページ等で公開しているのは、
ほんの一部に限られています。また厚生労働省は、各病院の成績を税金
を使って調査していたのにも関わらず、情報を公開しようとはしません
でした。本連載は、閉鎖的な日本の医療界に風穴を開ける一撃となるで
しょう。
●医療の質が向上

さて、公開された医療情報を元に、患者が病院を選別するようになる
と、成績が劣る病院は、成績を上げる努力をするでしょう。実際、厚生
労働省が 1999年度調査分から評価結果を 3段階で公開した救命救急セ
ンターの成績は、年々向上しています。つまり、「医療成績を公開する
と、医療の質が向上する」のです。
成績を上げたい病院は、どうすればよいでしょう。短期的に成績を上げ
ようとするならば、「技量の高い医師」を雇おうとするのではないでし
ょうか? 病院が医師を技量で選別することになると、「技量の高い医師
は高給を得、低い医師は淘汰」されるでしょう。
その結果、病院と医師が直接雇用契約を結ぶようになると、優秀な医師
は医局から離れ、医局制度の崩壊が進むでしょう。医局制度がなくなる
と、医師は自由に病院を選べるようになる。現在、研修制度の改革によ
り始まった研修医の病院選択が、一般の医師に拡大するのです。
つまり、「医療情報の公開」が、患者の病院選択を可能とし、さらに病
院が医師を、医師が病院を選択する流れを作り、競争原理が働く結果、
「医療の質が向上」するという好循環を生み出すのです。
●医療情報の公開は患者の力で
ところで厚生労働省は、なぜ各病院の成績を公表しなかったのでしょう
か? 日本の医学界には、「お互いを批判しない」という麗しき (?) 風習が
あるようです。その風習が、情報公開とそれに伴う競争原理の推進を阻ん
できたのではないでしょうか?
医療事故について、その存在すら否定していた医療界が、最近声高に
「医療事故を調査する第三者機関の創設」を叫ぶようになりました。閉鎖
的な医療界のことです。これは、悪質な医療事故加害者の取締りを強化し
つつある警察への危機感の裏返しではないでしょうか。
そのうえ、日本医療機能評価機構の理事長を日本医師会の前会長が務め
るに至っては、その公平性に大きな疑問を抱かずにはいられません。
医療界が、「医療事故情報を集めるが、情報を厳重に管理し、非公的機関
という名の下に隠蔽する」方向に走らぬように、私たち医療界の外にいる
者が監視し、「自分たちの力で、医療情報を引き出し、患者のために公開
し、医療の質を向上させたい」という意を強くする、今日この頃です。
<筆者のプロフィール>
1958年北海道生まれ。1981年京都大学工学部情報工学科卒。1997年、医
療事故市民オンブズマン メディオ設立メンバー。2001年からメディオ代表。
共著に「医療事故対処マニュアル」(2000年 現代人文社)。
メディオホームページ http://homepage3.nifty.com/medio/
◆ひとこと
医療の問題は、医者、医療機関、医療費や保険の制度さらには、医療財源
などが相互に複雑に絡み合っている。そのため、多くの人が問題意識を持
ちながらも核心をとらえた議論、全体像を描いた提言がなかなか行えてい
ない。その点、「情報」の開示を軸にすえた視点は、多くの医療事故の問
題に深く関わってきた阿部さんならではの指摘である。
構想日本でも阿部さんにも教えて頂きながら、医療事故を切り口にして
「情報」をはじめ「ひと」(医師や看護師等)、「モノ」(病院等)、
「かね」(医療費等)などの問題を整理しながら医療制度の問題を考えて
いる。是非、医療に関心のある方、ご意見をお寄せ下さい。また、この問
題に詳しい方、議論にご参加下さい。
(加藤秀樹)
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2.《お知らせ》
●「新潮45」5月号(新潮社)
権力の道化師 「猪瀬直樹の『悲劇』」櫻井よしこ

2月号から道路公団改革の政府案の決定プロセスを克明にレポートして
きたジャーナリストの櫻井よしこさん。これまで、ジャーナリストとして
のその姿勢を様々な角度から批判してきた猪瀬氏を「権力に擦り寄りつつ
改革派を装い、同時に勝ち組につく」と断罪し、その「使い手」たる小泉
首相とともに「退場」を促しています。
改悪に他ならない政府案を出した「失敗」の責任は誰がとるべきか。シ
リーズ「完結扁」です、ぜひ、ご覧下さい。
●構想日本ではこのほど、インターネットによる募金システム
「募金やドットコム」 http://www.bokinya.com/ に加盟しました。
ヘッダーにある【団体名で募金さがし】をクッリクし、カ行の欄で
構想日本をご覧下さい。
ご自身はもとよりお知り合いの方々にもお声をかけて頂き、
ご協力をよろしくお願 い申し上げます。
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3.《第82回「JIフォーラム」のご案内》
市町村にとって合併よりも大事なことは?
-市町村長のカンカンガクガク-
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市町村合併を進める特例法の「恩恵」の期限が1年後(‘05年3月)
に迫り、全国の市町村は合併の嵐のまっただ中です。市町村は、住民の暮
らしと直接関わっています。目の前のニンジンやムードに流されるのでは
なく、合併の如何を問わず自律できる市町村をつくるために、先進的な首
長たちは何に苦心しているのでしょうか。
合併による自治体の活かし方を語る山岡町長、臼杵市長、合併せずに独
自でがんばろうとする矢祭町長、津南町長、斐川町長をお迎えし、熱い議
論をして戴きます。
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日 時  :平成16年4月28日(水)
会 場   :銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演  :午後6時30分(開場:午後6時00分)
討論者  :根本 良一 (福島県矢祭町長)
小林 三喜男(新潟県津南町長)
山内 章裕 (岐阜県山岡町長)
本田 恭一 (島根県斐川町長)
後藤 国利 (大分県臼杵市長)
樋口 博  (長野市役所産業振興部主幹)
コーディネーター :加藤秀樹 (構想日本代表)
主 催   :構想日本
定 員  :160名
参加費  :2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
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参加希望の方は、下記のメールアドレスにお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
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参加ご希望の方は、誠に恐縮ですが4月27日までに出欠の是非を
お知らせ願います。
お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)
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週刊JIメールニュース  発行:構想日本 発行責任者:加藤秀樹
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