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【No.163】官と民~人材交流の視点から

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官と民~人材交流の視点から
JIメールニュースNo.163  2004.9.3
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■■ 目次 ■■
1.《官と民~人材交流の視点から》
2.《J.I. Action Summary》
3.《第87回「J.I.フォーラム」のご案内》

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1.《官と民~人材交流の視点から》
株式会社ニッシン 取締役財務部長
野尻 明裕
私は、昨年夏に、12年間勤務した財務省(旧大蔵省)を退職し、現在
は、ニッシン( http://www.nissin-f.co.jp/index.html )という中小零
細企業向けの与信ビジネスを行っているノンバンクに勤務しております。
そうした立場から、今回は、(1)役所から民間セクターに転じたきっかけ、
(2)官と民の発想の違い、(3)官民交流のススメ、の3点について、私なり
に申し述べさせて頂きたいと思います。
(1)役所から民間セクターに転じたきっかけ
私が企業での勤務に関心を持ち始めたのは米国NY駐在時代です。当地
で、民間セクターと政府・中央銀行の間で人材が幅広く行き来している
のを目の当たりにし、私はそれまでの価値観を打ちのめされました。私
が記憶しているだけでも、ボルカー元Fed議長、アルトマン元財務副
長官、ホーマッツ元国務次官が民間におられ、民間からはブラックスト
ーンのウェルヘンソーン氏が世銀総裁に、ゴールドマンサックスのゲイ
ンスラー氏が財務次官に就任されました・・・。
当時駆け出しの役人だった私は、マーケットや経営に精通する米国の役
人は民間経済での実践体験に裏付けられた経験に基づき政策立案するわ
けですから、交渉相手として手ごわいだろうなと思うとともに、個人と
しても本当に日本経済の役に立てるためには、民間経済での経験が不可
欠だと思いました。その後、東京に戻り、様々なポストを経験したり、
ベンチャー経営者と接したりする中で、民間経済のダイナミズムへの関
心が年々強まっていき、今日に至りました。
(2)官と民の発想の違い
民間での勤務経験はまだ短いですが、私なりに感じる官民の最大の違い
は、「マクロとミクロ」ということです。つまり、役所時代は、経済全
体、市場全体、あるいは業界全体の動きが非常に重要でした。例えば、
私はかつて国債の発行を担当し、入札を取り仕切っていたのですが、そ
の際にはマクロ指標や、債券市場全体の動きをくまなく見ながら、一回
当たり1.8兆円とかの入札を実施しておりました。
一方、現在は、民間企業に勤務して、マクロ指標や業界の動きにももち
ろん目配りをしますが、個別民間企業で入手できる情報には限界もあり
ますし、個々の取引を着実に積み上げ、キャッシュフローを確保するこ
とが最重要です。役所時代には、民間金融機関の監督も担当したことも
ありましたが、大きな経営判断はともかく、なかなか、日々の企業の意
思決定までは正直把握できませんでしたし、またするべきでないと思い
ます。ただ、マクロ経済も個々の経済主体の経済活動の集合体である以
上、政策決定にも企業経営の「ミクロ」の発想・視点も不可欠であり、
日本の政策運営に不足しているのはこの点ではないかと思います。
(3)官民交流のススメ
役所でも、民間の英知を活用する手段として、これまでも「審議会」、
「研究会」といったスタイルが取られてきました。ただ、役所・メンバ
ーいずれの側からも限界があります。最近では、弁護士・会計士・アナ
リストなどが、「専門職」として役所で登用されるケースも増えてきて
おり、歓迎すべき動きではありますが、政策決定に決定的な役割を持つ
には至っておりません。日本の政策決定における「マクロとミクロの分
断」を克服するためには、やはり、官民の人材交流を多層的に促進する
ことではないかと思います。実際には、今でも、法的・制度的な障害は
なく、あとは運用の問題だと思います。例えば、今回、社会保険庁の長
官に保険会社の副社長さんが就任されましたが、これは社会保険庁の長
官だけ、何か法令で特別に認められたわけではありません。金融庁の前
身の金融監督庁でも民間人ではありませんが、検察出身の方が長官でし
た。つまり、不祥事とかが発生したときに、運用上、緊急避難的に外部
から登用しているわけで、逆に言えば、運用上、平時にも登用すること
も可能なわけです。実際に登用が進まない理由として、「経験不足」と
かが挙げられますが、一番大変な緊急時に登板をお願いするぐらいです
から、平時には、そうしたことは実際には障害にならないのではないで
しょうか。最後は、政権を担われる政治家の方々のご判断だと思います。
こうして、官民交流を進めることにより、日本の政策立案力が強化され
ることはもちろん、省益、天下り云々といった批判に対して、政策がよ
り正当性を持つことにもなると思います。
むすびに代えて
色々と勝手なことを書かせてもらいましたが、官とか民という縛りにと
らわれず、個々人が切磋琢磨していくことにより、経済の活性化につな
がると確信しております。どんなセクターにおいても、「既得権益」と
いうのは存在するのでしょうが、今日のようなスピード感ある社会にお
いては、流れに逆らっても長続きはしませんし、かえって失うものが多
くなるような気がしてなりません。
<プロフィール>
1968年京都府生まれ。91年東京大学法学部卒業後、大蔵省(現・財務省)
に入省し、主計局、国際金融局、通商産業省(現・経済産業省)出向、
理財局、金融庁などに勤務。2003年7月に財務省退職後、同年8月株式会
社ニッシンに入社し、2004年6月同社取締役財務部長。
米国ハーバード大学ロースクール修了(1994年)、米国ニューヨー
ク州弁護士。
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2.《J.I. Action Summary》
■構想日本の8月の主な活動状況■
(1)教育行政改革
●8/25:義務教育費国庫負担金の議論に関する緊急アピール
「教育水準を問うなら、まず現場への権限移譲を」
・国の画一的な関与・規制をなくし、教育現場(学校や市町村)の創意
工夫が活かされることが不可欠
( http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp/prj/edu/ )
(2)三位一体改革(国と地方)
●シンポジウムでの講演(11自治体の「事業仕分け」をもとに、「三位
一体」改革のあり方について説明/ディスカッション)
・8/20:「がんばろう、日本!」国民協議会(約40名の市町村議会議
員と議論)
・8/27:「地方自治体財政危機突破県民集会」@長野(長野県民、自治
体職員、議員など約1000名が参加)
●住民サービスの質を確保しながら、創意工夫で経費節減している
自治体の現地調査を開始(トップバッターは、長野県栄村)。
(3)社会保障制度改革
●社会保障制度全体のあり方を検討中。
・年金、医療、介護の一体化の是非、など。
(4)医療制度改革
●「医療の質」を高めるための制度改革案を作成中。
・「患者の不満」や「医療事故のメカニズム」を切り口に、問題点を解明。
(5)国債管理政策
●国債の偏った保有構造によるリスクの定量化、リスク管理策を検討。
・メガバンク、地銀、郵貯・簡保のリスク要因、既発債の管理など。
上記の他、「公益法人制度改革」、「中小企業政策」、「農業政策」など
の政策プロジェクトが進行中。詳しくは、 http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp ま
で。

(文責:政策担当ディレクター 冨永朋義)
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3.《第87回「JIフォーラム」のご案内》
木に教わり、山に叱られる
-効率を求める使い捨て社会からの脱却-
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私たちは気づかぬうちに大事な自然を失ってしまいました。森や山はまだ
ある じゃないかと思う人たちもおられるでしょうが、それは違います。
私たちの生 活は高度経済の成長期を境に大きく変わりました。効率優先
の中で、たくさんの手仕事を失いました。職業が消えることで、そこに引
き継がれ、蓄積されてきた経験や知恵が失われたのです。これは大きな損
失でした。いま地域の活力がないのもそのためです。日本人の資質そのも
のを育んできた土壌でもあったからです。
盛岡の養蜂家・藤原さんと炭焼き名人の韮沢さんをお迎えし、手業の
名手・名人を訪ね、その生き方を記録されておられる作家の塩野さんに
引き出し役になって戴き、日々の仕事ぶりや自然の摂理から学ぶ生き方を
大いに語って戴きます。そこに地域の活性化、町づくりの秘訣があると
思います。
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日 時  : 平成16年9月28日(火)
会 場   : 銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演  : 午後6時30分(開場:午後6時00分)
討論者  : 藤原 誠太 (盛岡の養蜂業)
韮沢 彦蔵 (炭焼き名人)ご依頼中
: 塩野 米松 (作家)
主 催   : 構想日本
定 員  :160名
参加費  :2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
懇親会参加費:3,500円
※ゲストを囲んで懇親会を開催いたします。事前申込のみ承ります。
参加申込をしたのちキャンセルする方は必ずご連絡ください。
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参加ご希望の方は、9月27日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
お名前
所属
ご連絡先

懇親会         参加する      参加しない

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お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)
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