【No.164】投票は「エンターテインメント」か?
2004.09.17

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投票は「エンターテインメント」か?
JIメールニュースNo.164  2004.9.17
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■■ 目次 ■■
1.《投票は「エンターテインメント」か?》
2.《第87回「J.I.フォーラム」のご案内》

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1.《投票は「エンターテインメント」か?》
― 選挙権を持たないものの視点から ―
慶應義塾大学総合政策学部1年
構想日本非常勤スタッフ
中河 香一郎
この夏参議院議員選挙が行われた。年金問題、自衛隊のイラク派遣、北朝
鮮による拉致問題など様々な問題が山積している上ひっ迫した財政状況が
後押しし、さらに小泉改革の国民による審判といった色合いもあり、かね
てより注目度の高い選挙であった。また選挙前の世論調査でも民主党の躍
進が予想されるなど二大政党を是とするか否とするかは国民に委ねられた
大変重い課題でもあった。しかしながら事前の予想通り投票率は56.57%と
決して高いとはいえないものであった。国民はもはや投票に興味をなくし
てしまったのだろうか。以下、先の参院選の報道を見ながら「投票権を持
たない18歳」が感じたことを述べたい。
まず、投票の重みを考えるべく海外に目を向けながら考えてみたい。例え
ばオーストラリアでは、正当な理由無く棄権した場合、最高50ドルの罰金
が科せられる「義務制」である。結果、同国では常に投票率は95%を超え
ている。またベルギーでは投票をしなかった人のリストが8日以内に作られ、
裁判所に呼び出されるシステムとなっている。これらの例は日本人からす
るとやや極端に映るかもしれない。しかしこれらの国以外にも罰金を課
す国は前述のオーストラリアをはじめ、アルゼンチン、ブラジル、トルコ、
エジプト他多くある。またシンガポールやベルギーでは棄権者を選挙人名
簿から抹消、アルゼンチンなどでは公務就任禁止という大変重い罰則が待
っている。
棄権者に罰則規定を与えている国の多くは発展途上国である。日々の生活
すら保障されていない人々にとって選挙は日常の不満をぶつける上で大変
重要な手段であり、罰則規定は国全体が選挙に大変な関心を持っているこ
との証左であろう。インドでは文字を読めない者も多いため、各政党にシ
ンボルマークが割り振られ、投票人はそのマークにスタンプを押すといっ
た工夫もされている。
翻って我が国日本はどうか。少なくとも「最低限の生活」は保障されてい
るし、生活水準も諸外国と比べて基本的に高い水準にあるのは事実だ。だ
が現状の生活に満足して投票行為に興味を失っていて良いのだろうか。先
に述べたような年金問題や財政問題は直接我々の身に降りかかってくる問
題であり、決して看過できないのは明らかである。しかし国民の危機感は
薄く、例えば衆院選では昭和の頃は70%台が普通であった投票率も平成に
入り急落し昨秋の43回選挙では59%、参院選も昭和では60~70%あったが
こちらも低下の一途を辿っている。
原因は一概にはいえないが、若者に限っていえば選挙や政治が’エンターテ
インメント化’してしまっている現状があるように思えてならない。私
は現在10代であるが学校教育でまともに政治を教わったことはない。これ
は特別なことではなく現在の日本の学校教育ではごく当たり前のことだろ
う。そしてこれに輪をかけるようにテレビでは政治の本質ではなく政治家
のほんの一発言や、事実のごくごく一部だけが強調される。いわば、一部
の「点」だけを報道しているのだ。これではいつまでたっても面にはなら
ないし、面にならないのだからましてや立体的なものの見方はできないだ
ろう。
私は初めに「国民はもはや投票に興味をなくしてしまったのだろうか」と
述べた。これに対する答えはイエスであり、またノーでもあるだろう。投
票率の下落の有様だけを見ればイエスといえるかもしれない。しかしなが
ら日本人が根源的に投票行為に興味を無くしてしまったわけではないだろ
う。先が見えず老後に閉塞感を感じる団塊の世代、「エンターテインメン
ト政治」で育った若い世代、それぞれ理由は違うにせよこれらの問題点は
改善可能なはずである。私には諸外国のような罰則規定が良いとはなかな
か思えない。だが、下落の一途を辿る投票率もまた良いものでは決してな
い。
私はまだ10代で選挙権はない。しかし選挙権を有しながら棄権する多くの
人々、そしてそれを良しとする現在の風潮には大変な違和感を覚える。毎
回投票率の低下を叫ぶだけのメディアや、懸念や遺憾を表しながらもなか
なか制度を変えようとしない政府にも矛盾を感じる。だがそれでも一番重
要なのは国民一人ひとりであり、一票を投ずる意味から考え直すべきでは
ないか。まず、「投票ありき」なのである。
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2.《第87回「JIフォーラム」のご案内》
木に教わり、山に叱られる
-効率を求める使い捨て社会からの脱却-
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私たちは気づかぬうちに大事な自然を失ってしまいました。森や山はまだ
ある じゃないかと思う人たちもおられるでしょうが、それは違います。
私たちの生 活は高度経済の成長期を境に大きく変わりました。効率優先
の中で、たくさんの手仕事を失いました。職業が消えることで、そこに引
き継がれ、蓄積されてきた経験や知恵が失われたのです。これは大きな損
失でした。いま地域の活力がないのもそのためです。日本人の資質そのも
のを育んできた土壌でもあったからです。
盛岡の養蜂家・藤原さんと炭焼き名人の韮沢さんをお迎えし、手業の
名手・名人を訪ね、その生き方を記録されておられる作家の塩野さんに
引き出し役になって戴き、日々の仕事ぶりや自然の摂理から学ぶ生き方を
大いに語って戴きます。そこに地域の活性化、町づくりの秘訣があると
思います。
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日 時  : 平成16年9月28日(火)
会 場   : 銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演  : 午後6時30分(開場:午後6時00分)
討論者  : 藤原 誠太 (盛岡の養蜂業)
炭焼き名人 ご依頼中
: 塩野 米松 (作家)
主 催   : 構想日本
定 員  :160名
参加費  :2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
懇親会参加費:3,500円
※ゲストを囲んで懇親会を開催いたします。事前申込のみ承ります。
参加申込をしたのちキャンセルする方は必ずご連絡ください。
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参加ご希望の方は、9月27日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
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所属
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お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)
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