【No.171】いま自治体リーダーに望むこと
2004.10.29

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いま自治体リーダーに望むこと
JIメールニュースNo.171  2004.10.29
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■■ 目次 ■■
1.《いま自治体リーダーに望むこと》
2.《第87回 「J.I.フォーラム」の報告》
3.《第89回「J.I.フォーラム」のご案内》

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1.《いま自治体リーダーに望むこと》
上野アソシエイツ 代表 上野雄介
●自治体経営改革の停滞
このところ地方自治の世界では、市町村合併や三位一体改革など制度改
革の議論が進められ、地方と国の対立の構図がクローズアップされている。
しかしながら、これら中央主導の改革論の進行の一方で、地方自治の現場
では90年代後半から加速しつつあった自治体組織のマネジメント改革が停
滞しているように感じられてならない。
行政評価制度やISO9001の導入などによって、優れた行政経営システム
の構築を目指していた自治体の中にも、合併や補助金改革の混乱の中で、
作業を中断している自治体が少なくない。数年前までは着々と改革を進め
ていた自治体の担当者が「合併で・・・三位一体の関係で・・・」と無念
そうに雑務に追われる姿をみるのは残念なことである。
市町村合併や三位一体改革など、地方自治制度の根幹を変えていく試み
を否定するつもりはないが、新たな制度設計をするということにかまけて、
現実に日々動いている行政組織の経営改革を停滞させることがあってはな
らない。
●マネジメント改革の重要性
バブル崩壊以降、日本経済は停滞し、多くの企業が業績の停滞・悪化を
経験した。倒産や廃業の憂き目にあう企業もあった一方で、血のにじむよ
うな改革を実行し、復活を遂げた企業も少なくない。
そのような企業の改革から公共経営の分野で学ぶべき点は、端的に言え
ばトップのリーダーシップと組織のマネジメントシステム改革の重要性で
ある。前者は変革へのエネルギーとして欠かすことのできないものであり、
後者は変革の精神を組織に行き渡らせ、持続的な改善を促すために必要な
ものである。これらの要素は、現在の地方自治制度の善し悪しとは別に、
現在の仕組みの中でも高い住民満足を実現するために役立つものである。
●人の力を引き出す
組織改革において、トップのリーダーシップが重要であることは当然の
ことであるが、それに加えとりわけ行政組織の改革においては、組合をは
じめとした公務員の既得権を死守しようとする勢力とどう向き合うかが改
革の成否を左右することが少なくない。
これまで改革の成果をあげてきている自治体の例を見てみると、そこに
はやみくもに改革派対守旧派の対立を演出するのではなく、リーダー自ら
が現場に飛び込んで、職員の中に改革のイニシアチブの持ち主を発見し、
育てていく要素があることに気付く。
ある時、職員の意識改革に悩む首長と話すと「そんな職員はなかなか見
あたらないよ」という答えが返ってきたが、何ヶ月かかけて現場を歩いて、
改革の志を持った職員を何人か見つけたようである(そういった職員ほど
日の当らない部署にいるものであるが・・・)。
民間企業のように社員をリストラしたり、外部の人材を数多く登用した
りすることが難しい雇用慣行の中では、既存の人材の中から改革のエージ
ェントを発掘することが改革達成への近道と言える。
●現実から目をそらさず経営者としての自覚を
財源不足に悩み、毎年度の予算をどう組むかに四苦八苦する自治体が多
い中、三位一体改革の行方に関心が集中するのは自然なことである。しか
しながら、住民にしてみれば、日々の行政サービスの質の向上や行政組織
の効率化は待ったなしの課題である。
自治体のトップは「政治家」意識が強く、「国と地方の対立」などと焚
きつけられると血気盛んに目立ちたがるが、赤字企業の経営者が国の経済
政策を云々しても説得力がないように、自らの自治体さえも満足に経営で
きない首長が、制度改革を論じても片腹痛いだけである。
地方に権限と財源を任せるためには、その経営能力が信頼に足るもので
あることが絶対の前提となるのである。自治体リーダーは、まずは経営者
としての自覚を持ち、組織改革の具体的成果を片手に制度論を語って欲し
い。
<プロフィール>
1968年東京生まれ。東京大学教養学部卒、慶應ビジネススクールMBA。
富士銀行、外務省、岡田克也衆議院議員秘書、ベンチャー企業CFOを経て、
2002年上野アソシエイツ設立。2003年より長安豊衆議院議員秘書。
◆ひとこと
本来、三位一体改革とは“国と地方の金のとりあい”ではなく、“国の
コントロールと地方の依存”を断つ方向へ進めるべきものだ。自治体の自
立・自律に向けた意思と能力が格段に試されるという上野氏の指摘は重要
だ。そしてそれはあたり前のことながら住民の首長を選ぶ眼も大いに試さ
れるということでもある。結局、私たち自身の問題なのだ。
(加藤秀樹)
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2.《第87回 「J.I.フォーラム」の報告》
木に教わり、山に叱られる
-効率を求める使い捨て社会からの脱却-
討論者:藤原 誠太 (盛岡の養蜂業)
勝股 文夫 (炭焼き名人)
塩野 米松 (作家)
※ 詳しくは https://www.kosonippon.org/wp-manager/forum/log.html?no=1103
をご覧ください。
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3.《第89回「JIフォーラム」のご案内》

構想日本でこんな本を企画しました(11月24日発売!)
『浮き足立ち症候群-危機の正体21-』
-21名の専門家に様々な「危機」とそれを生み出す
世の中について語って頂きました -
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もう10年以上も家庭、学校、会社、様々なところで「危機」とか「破
綻」といったことが叫ばれています。私たちは、そんな言葉に浮き足立っ
てしまってはいないでしょうか。 そこで、ちょっと腰をおちつけて、ど
こに本当の問題があるのか考えてみませんか、という趣旨の本を構想日本
の企画でつくりました。
構想日本の政策づくりと共通の問題意識を持つ21名の著者の中から、医
療の問題を鋭く提起した「ブラックジャックによろしく!」のモデル南淵明
宏氏、禅僧から医師(僧医)をめざす対本宗訓氏、食の安全について適確な
指摘をしている小若順一氏に、本当の問題はどこにあるのか議論して頂き
ます。
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日 時 : 平成16年11月30日(火)
会 場 : 銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演 : 午後6時30分(開場:午後6時00分)
討論者 : 南淵 明宏(大和成和病院心臓病センター長心臓外科部長)
小若 順一(食品と暮らしの安全基金事務局長)
対本 宗訓(禅僧・医学生)ご依頼中
コーディネーター: 加藤 秀樹(構想日本代表)
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参加ご希望の方は、11月29日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
お名前
所属
ご連絡先

懇親会に     参加する      参加しない
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お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)
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