【No.190】文化の明日(後編)
2005.03.18

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文化の明日
JIメールニュースNo.190  2005.3.18
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■■ 目次 ■■
1.《文化の明日》
2.《第93回「J.I. フォーラム」のご案内》
3.《お知らせ》
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1.《文化の明日》
― 「心」の豊かさが地域を創る ―
<(社)土木学会創立90周年記念懸賞論文
優秀賞受賞作品(一部加筆修正)- 後編>
慶應義塾大学総合政策学部1年・構想日本非常勤スタッフ
中河香一郎
芸術活動という意味での「文化」の書道だけでなく、生活の場としての
ベースである沖縄の空気も忘れてはならない。私は那覇市の小学校に転校
したが、学校は首里城や史跡群と隣接しており、否が往でもそれらを意識
するような環境にあった。私はそれまで文化とは非日常的なものであり、
観光で見るようなものが文化だと考えていた。しかし沖縄県那覇市首里と
いう場所で生活するうちにそれは大変な過ちであると気付いた。重厚な史
跡群も古くから伝わる伝統工芸も、みなそこで生活する人々の生活にごく
当たり前に溶け込んでいたのである。私も史跡を庭にして遊び、様々な地
域独特の文化と出会う中でいつしかそれらの存在が当たり前になり、生活
の一部となった。
その後沖縄での四年間の生活を終え、私は関西の学校に転校した。そこ
で私は沖縄との様々な面での違いに愕然とした。まずは文化に対する意識
の低さである。私が沖縄に行く前に感じていた「文化とは観光のような非
日常で体感するもの」といった空気がたちこめていたのである。確かに沖
縄ほど身近に史跡などなかったが、それでもここまで意識が違うのかと頭
を打たれたような衝撃を受けた。だが私はそれ以上に腑に落ちない何かを
感じ取っていた。それは人間関係であった。沖縄で感じた人の温かさと関
西のそれとでは明らかに違っていたのである。何故そこまで地域によって
人間が違うのだろうか、考え方が違うのだろうか。私は、自らの経験から
次のように考えた。
私自身が様々な地域で生活していく中で感じたのは、人は周りの環境や
他の人に多大な影響を受けるということである。街はその地域の人々によ
って作られ、そこで育つ子供達はまたそのコミュニティに育てられる、こ
の繰り返しではないだろうか。だからそこで暮らす人々の心が豊かであれ
ば街も豊かになるし、今度はそこで育つ子供も豊かな心を持つことができ
る。これは決して理想論ではない。私が自ら経験した街の「温度差」、そ
して人々の「温度差」はコミュニティの豊かさからくる違いだとしか考え
られないのである。
辞書によれば「文化」の反意語は「自然」なのだという。しかし私は地
域の「豊かさ」について語るとき、これらの言葉は決して反意語ではなく、
同義語になると思う。何故ならば、町そのものや史跡のみならず街に存在
する自然環境をも含めて、それら全てが子供の目に情景として映ると考え
られるからだ。つまり文化の豊かさ、人の心の豊かさが地域の豊かさを作
るのであり、また地域の豊かさや文化の豊かさが人の心を豊かにしていく
という循環ではないか、というのが私の結論である。これからのコミュニ
ティ作り、社会基盤整備を考えるときには地域文化を中心に据え、そこで
暮らす人々が精神的豊かさを得られるよう考慮していく必要があるはずだ。
そうでなければ文化はますます「非日常」になっていくだろう。そして心
の、地域の豊かさが失われていくだろう。書道から学んだ文化的精神、沖
縄という人間の文化に触れた私は今、金やモノだけが豊かさの基準ではな
い、と確信をもっていえる。
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2.《第93回「J.I. フォーラム」のご案内》
もう一度歴史をよく見てみよう
-日本人の生き方、暮らしぶり-
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神は細部に宿ると言います。古文書などを丹念に調べて歴史研究を行って
おられる磯田道史氏。
そこから、かつての日本人の生活や考え方が浮きぼりにされます。
これからの世の中を考えていくうえで、歴史に学ぶことはまだまだ多いと
思います。ところが、とかく、私たちはパターン化された「日本人論」
「日本型」にとらわれがちです。11人家族で生活感あふれる馬淵澄夫氏
との対談を通じて、私たちがまだ気づいていないかもしれない日本人の一
面について、何かを感じとって頂ければと思います。
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日 時 : 平成17年3月29日(火)
会 場 : 銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演 : 午後6時30分(開場:午後6時00分)
ゲスト : 磯田 道史(茨城大学助教授・『武士の家計簿』著者)
聞き手 : 馬淵 澄夫(衆議院議員)
主 催 : 構想日本
定 員 :160名
フォーラム参加費 :2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
懇親会参加費   :3,500円
(ご希望の方は下記懇親会参加に○印をつけてください)
※ゲストを囲んで懇親会を開催いたします。
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参加ご希望の方は、3月28日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
お名前
所属
ご連絡先

懇親会に     参加する      参加しない
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*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下まで。TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田まで。TEL 03-5275-5607
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3.《お知らせ》
●第367回知的生産の技術研究会・東京セミナー
「2005年の動き~官から民への流れをいかに加速するか~」

◇講 師:寺島実郎(三井物産戦略研究所所長・(財)日本総合研究所・
NPO知的生産の技術研究会顧問)
加藤秀樹(構想日本代表・慶応義塾大学教授)
◇日 時:3月25日(金)午後7:00~9:00
◇場 所:テラハウスICA(TEL 03ー3360ー8832)
JR総武線「東中野」地下鉄大江戸線「東中野」下車1分
駅前日本閣側に降りてください。
◇参加費:2000円(非会員 3000円)
◇お問合せ・お申込み先:NPO法人 知的生産の技術研究会
E-mail tiken.org@nifty.com
TEL 042(363)3445  FAX 042(365)5744
くわしくは、 http://tiken.org/top.php をご覧下さい。
※知的生産の技術研究会が発行する「知研フォーラム」では、毎回JIフ
ォーラムの議事録が掲載されています。ぜひ、ご覧下さい。

●第3回森の“聞き書き甲子園”フォーラム
全国の高校生が、「森の名手・名人」に森のこと、人の生き方や暮らしの
知恵について、「聞き書き」を行なった体験談やエピソード等、ゲストを
交えて語ります。
◇日 時:3月21日(月・祝日)午後1時20分~4時40分
◇場 所:東京大学弥生講堂・一条ホール(農学部内)
◇参加費:無 料
◇定 員:300名(先着で受付、申込締切/3月19日)
◇お問合せ先:森の“聞き書き甲子園”実行委員会事務局
担当 吉野奈保子
TEL:03-5366-0766 E-mail: foxfire@japan.email.ne.jp
フォーラムの詳細・お申込みは、以下をご覧下さい。
http://www.foxfire-japan.com/2004/04program/forum_tp.html
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