【No.226】「沈黙の艦隊」を10数年遅れで読む
2005.11.25

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JIメールニュースNo.226  2005.11.25発行
「沈黙の艦隊」を10数年遅れで読む

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◆◆ 目 次 ◆◆
1.【「沈黙の艦隊」を10数年遅れで読む】
2.【お知らせ】
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1.【「沈黙の艦隊」を10数年遅れで読む】
治部れんげ(雑誌記者・編集者)
軍事や国防に詳しい人が読んだら無理な展開もあったかもしれないが、私に
は充分すぎるほど面白かった。友人にすすめられ、世の中で流行ったのより
はずいぶんと遅れて読んだのだけれど、もっと早く読んでおけばよかった。
お話はこんな感じ。
原子力潜水艦が、所属する国の軍隊から独立を宣言、「やまと」という国家
を名乗る。アメリカ軍を中心に各国からの攻撃を受けつつも、艦長の巧みな
指揮でニューヨーク沖に浮上。艦長は国連総会に出席し、原子力潜水艦の
「沈黙の艦隊」による「政軍分離」を訴える。
沈黙の艦隊は、自分からは決して攻撃を行わない。けれど核を使用する国が
出てきたら、その国に核ミサイルを発射して制裁を加える。各国政府は、沈
黙の艦隊に防衛を任せれば自国で軍事力を持つ必要がなくなるーー。政治と
軍事力を分けることで、政軍分離が可能になるという発想だ。
「やまと」の艦長は元自衛隊員なので、日本政府はアメリカなど諸外国から
監督責任を問われる。日本国内政治、外交、メディアを使った情報戦を織り
込みながら物語が進んでいく。
湾岸戦争当時、国会でも話題になったのもうなずける。10数年前の作品なの
に古びた感じが全くしないのは、ここで描かれる報道に対する批評的な目線
は、イラク戦争時の報道にも当てはまるからだろう。全世界に情報を公開し
て世界世論を味方につけるという海江田艦長のPR戦術は、10数年経った今、
インターネットによってまさに現実のものになっている。
こういうものを読むと男の子と女の子の差を感じてしまう。私の友人は高校
生の頃にこれを読んでいたという。男の子が「沈黙の艦隊」を読んでいた頃、
私は内田春菊とか岡崎京子などの恋愛漫画を読んでいた。というか、自分を
中心に半径10mのことにしか興味がなかった。
男が天下国家を論じて、女は家庭を守るというは、あまりにステレオタイプ
な構図で今さら批判するのもバカみたいだ。けれど、関心分野の棲み分けを
痛感する。私も10代でこういう漫画を読んでいたら、もっと権力志向になっ
ていたんじゃないかなあ・・・と思うから。
主人公が「牢獄の庭で安全に暮らすより、嵐の海でも自由に泳げる方がい
い」みたいなことを言うシーンが印象的だった。この吹き出しを読んだ時、
私は初めて憲法9条改正派の人の気持ちが感覚的に理解できた。
ああ、そういうことを言いたいのか、と。
私にとって経済的に男に依存するのは「牢獄の庭で安全に暮らす」のと同じ
だ。そして「嵐の海でも自由に泳げること」は忙しくて疲れて大変だとして
も、自分で稼いで食べていくことを意味する。
自分がもしかしたら興味を持てたかもしれない世界を、10年以上遅れて目に
することになったのはちょっと悔しい。こういう男の子向け作品を中高生の
頃に読んでいたら、進路選びが違っていたかもしれない。
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2.【お知らせ】
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本書の趣旨に共鳴した都内書店のご協力を得て、以下の通り出版記念特別講
演会を開催いたします。
ぜひ、本書をお買い求めいただき、本書に登場する講師陣によるプレミアム
講演をご聴講いただきたく、ご案内申し上げます。
・ 日時 2005年12月21日(水)18:00開場、18:30開演
会場 明治大学ホール
講師 田中康夫氏、蟹瀬誠一氏
講演テーマ「今、日本には構想が必要だ!」(仮題)
・ 日時 2005年12月22日(木)18:00開場、18:30開演
会場 八重洲ブックセンター本店 8階特設会場
講師 山折哲雄氏
講演テーマ「日本人と信仰・入門編」(仮題)
※イベント参加のお申し込みは水曜社販売部(tel03-3351-8768)へどうぞ。
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