【No.246】「伝統とは新しきを追い求め続けること」という発想
2006.04.21

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JIメールニュースNo.246  2006.4.21発行
「伝統とは新しきを追い求め続けること」という発想。

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◆◆ 目 次 ◆◆

1.【「伝統とは新しきを追い求め続けること」という発想。】

2.【第105回「J.I. フォーラム」のご案内】

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1.【「伝統とは新しきを追い求め続けること」という発想。】

株式会社日吉屋 代表取締役 西堀 耕太郎

始めまして。京都にある「日吉屋」5代目の西堀耕太郎です。今日は弊社
の製品「京和傘」について少しお話させて頂きます。

和傘・・・。「聞いたことはあるけれど、実際に見たことないなぁ」。
ほとんどの方がそう思われるでしょう。

和傘とは竹と和紙で出来た傘で、江戸時代中期以降、広く一般民衆の間
で使われるようになった生活必需品でした。そう、時代劇や映画等で浪
人がしている内職、あれが”傘張り”ですね。舞妓さんが差している華
やかな傘もその一つです。

ここで皆さんに質問です。「和傘を使った事がありますか?」
「はい!」と、答えてくださる方がこのメールマガジン読者に一人でも
いらっしゃれば大変嬉しいのですが・・・。昭和初期の最盛期には全国
で年間1700万本程度生産されており、どこの町内にも必ず1件はあった
和傘屋さんも、今となっては全国でも10数件を数えるまでに激減してし
まい、京都では弊社1社が残るのみという有様です。

和傘作り(だけでなく、伝統工芸全般に言えますが)の職人は高齢化し
ており、後継者不足でどんどん廃業に追い込まれ、10年後には更に半減
している恐れもあります。こうなるともう、国の天然記念物に指定され
かねない勢いです。

では、なぜ後継者が出来ないのでしょう。それは、皆さんが答えておら
れます。和傘を使わない理由、それは和紙の傘は「すぐ破れそう」だか
らです。実際は、それほど簡単に壊れたりしないのですが、やはりビニ
ールやナイロンの洋傘には敵いませんし、重さも軽量化の進んでいる洋
傘に比べれば随分重いです。
値段も手作りの為、高価になってしまいます。その点、洋傘は「安い」
「軽い」「丈夫」と3拍子揃っています。

こうなっては和傘はもはや”生活必需品”にはなり得ないのです。需要
が無くなれば供給も無くなる。供給が無くなれば、製造元が減少する。
自然の摂理です。

ではなぜ弊社は廃業せずに存続していられるのでしょう。

伝統工芸に指定されるほど長きに渡って和傘作りをしておりますお陰で、
祭事用和傘や伝統芸能に必要不可欠なものを製造、修繕出来るという技
術面はもちろんですが、それ以上に大きいものは、「使い手の減少以上
に製造元が廃業し、弊社の注文は増加傾向にある」というパラドクスが
あげられます。

しかし、何もしないで注文が増えるほど甘くはないのです。インターネッ
トでホームページを立ち上げれば、潜在的需要が見込めるはずだと、IT革
命初期の頃にホームページ開設に踏み切り、現在では注文の7割がインタ
ーネットでのものです。これが無ければ他社同様、5年前には廃業に追い
込まれていたかもしれません。

とはいえ、先ほども述べましたが、和傘業界は縮小傾向にあり、今後も安
定した需要が見込めるとは思えません。

そこで、このような状態から抜け出す為に、五代百数十年続いてきた伝統
の技法とノウハウを活かし、次のような新たな取り組みもはじめておりま
す。

・和傘を科学的な溶剤で処理し、強化・撥水・UVカット加工を行い、より
実用性を高めた和傘の開発
・和傘の部材や製作技術を用いた和風照明やインテリア用品の開発
・和傘の材料やデザインを活かした和風洋傘の開発
・デザイナーやアーティスト、作家とのコラボレーション商品の開発

一部は既に商品化しており、現在進行中のプロジェクトもいくつかあります。
「伝統」を守るために、これからも新しきを追い求め、進化し、それがまた
「伝統」と呼ばれるように成長させること──。これが現在の私の使命と心
得ています。そして、広く世界で受け入れられる商品を育てていきたいと思
っております。

*西堀 耕太郎氏プロフィール
1974年和歌山県生まれ。高校卒業後カナダに留学。帰国後に結婚し、民間
企業、公務員を経て妻の実家である日吉屋を継ぎ五代目当主となる。
いち早くITを取り入れ、伝統工芸の既成概念を越え、作家やデザイナーと
の異業種コラボレーションや、新商品の開発等にも積極的に取り組む。

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◆ひとこと

日本が世界に誇る伝統工芸産業の多くが、西堀さんがおっしゃる通り、天
然記念物化しています。伝統工芸という言い方自体が、名誉なようで不名
誉な肩書きなのかもしれません。素人考えにすぎないのですが、伝統工芸
に共通していえることは、守るべきは和傘ならば、竹と和紙という材料とそ
れを生かす技であって、物である和傘そのものではないのではないか。桐
たんすならば、たんすではなく、桐とそれを加工する技や評価する目ではな
いか。日本の伝統産業政策はそれが逆になってはいないか、という気がし
ます。
日本各地の伝統工芸やその産業を何とか元気にしたい、というのが構想日
本の思いの一つです。
(構想日本 加藤秀樹)

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2.【第105回「J.I. フォーラム」のご案内】

国有財産・本当に売っていいのか?

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もっともらしい議論というのがよくある。800兆円にも及ぶ国の債務。
その「有力な」削減策として、国の資産売却が与党内で議論されている。

しかし、庁舎や公務員宿舎など売却可能な国有地はすべて合わせても6000
億余りという。しかも、その収入は1回こっきりだ。一方で、国債の金利は
毎年何兆円も増えているのだから、これではほとんど焼け石に水ほどにもな
らない。売られた土地には多分大手デベロッパーが高層ビルを建てるのだろ
う。長い目で見て、これが本当に国民・住民のためになるのだろうか。それ
くらいなら、外国に比べても日本の都市は緑が少ないのだから、公園にする
ほうがいいのではないか。目の前の金勘定だけで国有財産を処分していいの
か。──など、国土や都市のあり方の視点を中心にホットな話題について大
いに語っていただきます。

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日 時  : 平成18年4月24日(月)
会 場   : グランドアーク半蔵門3F 光の間
※ご注意ください!今回は場所が変わります
千代田区隼町1番1号 TEL 03-3288-0111(代)
(http://www.grandarc.com/access/access.htm)
開 演  : 午後6時30分(開場:午後6時00分)
ゲスト  : 川勝 平太(国際日本文化研究センター教授)
鈴木 博之(東京大学大学院教授)
山岡 淳一郎(ノンフィクション作家)
主 催   : 構想日本
定 員  : 160名
フォーラム参加費 :2,000円
(シンクネット・構想日本会員は無料です)
懇親会参加費   :4,000円
(懇親会は定員に達しましたので、お申し込みを締め切らせていただきます)
※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
ラウンジ「ラ メール」 グランドアーク半蔵門4F
TEL 03-3288-0111(内線5567)

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参加ご希望の方は、4月23日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org

お名前

所属

ご連絡先

懇親会に     参加する      参加しない
(懇親会は定員に達しましたので、お申し込みを締め切らせていただきます)
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*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下まで。TEL 03!)5275!)5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田まで。TEL 03!)5275!)5607

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