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【No.281】「伝える」こと。「伝わる」こと。-文脈が変わり、伝わらないコトバたち。-

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JIメールニュースNo.281  2006.12.22発行
「伝える」こと。「伝わる」こと。
-文脈が変わり、伝わらないコトバたち。-
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◆◆ 目 次 ◆◆
1.【「伝える」こと。「伝わる」こと。
-文脈が変わり、伝わらないコトバたち。-】
*構想日本ホームページで「ワンクリックアンケート」開催中。
「Q:安倍政権の100日」にお答えください。
〔アンケート期間:2006/12/18(月) ~2007/01/07(日)〕
↓     ↓     ↓
http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp/enquete/index.php?m_enquete_cd=37
*前回の「ワンクリックアンケート」の投票結果が出ました。
質問は「Q:「教育再生会議」 公開?非公開?」です。
↓     ↓     ↓
http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp/enquete/result.php?m_enquete_cd=36
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1.【「伝える」こと。「伝わる」こと。
-文脈が変わり、伝わらないコトバたち。-】
GENERATION TIMES編集長 伊藤 剛
「文脈が変わった」。最近のニュースを見ていて、より、そう思うようになった。
小学生が国に対して「自殺予告」をする。それを受けて大臣はあたふたと記者
会見を行う。世間は「教師か親か」とその責任をなすりつけ合って、著名人は
「他人には思いやりを」とか「命は大切なものです」と優しく語りかける。それを
聞いて「はい、そうですね」と納得できるのであれば、もちろんこんなことは起
こらない。似たようなコトバは今までにも存在していた。けれど、コトバというの
は常に「文脈」の中でしか生きてこない。時代は急速に変わり、その「文脈」が
変わってきている。
「文脈」とは、目の前に繰り広げられる大人社会の実態のことだ。テレビの中
では、もっともらしいコメントをしていた大企業のトップが、翌週には深々と頭を
下げて謝罪をしている。必修科目の「未履修」問題。発覚した学校の校長先生
は自殺をした。摘発された学校の生徒たちは、受験を前に補修やレポートが課
せられ、彼らはきっとこう思う。「“自分たちは絶対に未履修ではなかった”と言
い切れるのですか?」。
「いじめは最低です」。その通り。でも、大儀が見つからない戦争で、普通の生
活を営む人たちが不条理にいまだ殺されている。これって何だろう? 親が突
然の衝動で子供を殺し、大人社会はその親の名を芸能人のように「愛称」で呼
んでいる。「命は大切です」。それもその通りだ。でも、一体こんな環境で、どん
なコトバが説得力を持って子供たちに届くというのだろう。ヒューマニズムや武
士道精神なんかを持ち出しても、彼らには伝わらない。聞こえの良いコトバが
社会の実態と大きくかけ離れていることを、彼らは敏感に感じとっている。
そもそも、日本で生まれた子供も、アフリカで生まれた子供も、例えば300年
前に生まれた子供も、基本的には誰一人変わらない。彼らがどう成長してい
くかは「社会環境」によってだ。とすれば、子供社会はいつでも大人社会のリ
アクションでしかないということになる。子供社会で起こっていることは、大人
社会の問題そのものなのだ。私たちは、彼らの問題を見て我がふりを直さな
ければ、彼らに伝わるコトバを見つけ出すことはできないし、「最近の若者は
…」と物事を整理してみても、何一つ解決はしていかない。
ある作家が、日本語にも大文字と小文字があると言った。大文字とは、要は
専門用語や熟語で表現するたぐいの言葉。「構造改革」「郵政民営化」「大切
な命」…。いい得ているようで、中身はまったく分からない。一方、小文字とは
ひとりの人生の経験から出てくる言葉。一市民の声。つまり、「主語」を持って
いるということだ。働かない若者たちに「食べていくために働け」と言うよりも、
まずはコトバを投げかける大人社会が、働く楽しさと夢を持たなくてはならない。
「主語」を持って伝えるということは、責任が伴うということである。自分の行動
が伴わない限り、「主語」は生まれないのだ。
伝わらないコトバは、コミュニケーションを欠いた単なる「発信」。人通りの多い
場所で、車の上からマイク片手に難しい言葉を並びたてても、心の奥に響いて
くることはない。「伝える」ことと「伝わる」ことは、根本的に違う。「伝わる」コトバ
を持つために、まずは子供社会の問題からそこに繋がる大人社会の問題を見
つけ出すことだと思う。決して「教育制度」だけで解決できるわけはない。そし
て、「大文字」に溢れたこの世界を、自分と等身大の「小文字」に翻訳していく
ことだ。誰だって、「日本のために」「世界のために」とスケールの大きいことを
言われるよりも、「あなたのために」と言われたいはずだ。少なくとも、“私”は、
そう言われたい。「発信」ではなく、心のどこかにちょっとでも「到達」するために。
*伊藤 剛(いとう たけし)氏のプロフィール
明治大学法学部卒。外資系広告代理店に勤務後、「未来に繋がるメッセージ
をクリエイトする」企画会社『ASOBOT』を設立(代表取締役)。『Levis』の新店
舗の企画開発や、東京メトロで配布されるフリーマガジン『metropolitana』の
編集制作。2004年には、次世代を担う若者に向けたジャーナル・タブロイド
誌『GENERATION TIMES』を創刊。名字や家紋文化から自分の歴史を探
る『ROOTS』企画や、今後の来日外国人問題など、「新しい時代のカタチを
考える」をコンセプトに、様々な社会的な問題を身近にする企画を手がける。
同コンセプトのプロジェクト化第一弾として、渋谷区と提携して「教科書には載
っていない大切なこと」を授業テーマとしたNPO法人『シブヤ大学』を2006年
9月に開校。
GENERATION TIMES http://www.generationtimes.jp/
シブヤ大学 http://www.shibuya-univ.net/
有限会社ASOBOT  http://www.asobot.co.jp/
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