【No.335】我が国の医療ガバナンスを考える ~医療事故調法案を巡る騒動~
2008.02.01

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JIメールニュースNo.335 2008.2.1発行
我が国の医療ガバナンスを考える
~医療事故調法案を巡る騒動~
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◆◇ 目 次 ◇◆
1.【我が国の医療ガバナンスを考える ~医療事故調法案を巡る騒動~】
2.【第24弾「事業仕分け」のご案内】

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1.【我が国の医療ガバナンスを考える ~医療事故調法案を巡る騒動~】
東京大学医科学研究所
探索医療ヒューマンネットワークシステム
准教授 上 昌広
昨年10月、厚労省は医療事故調に関する試案を発表し、今春の法案提
出を目指している。この法案を巡る騒動は、我が国の医療ガバナンスを
考える上で興味深い。
法案の骨子は、診療関連死が発生した場合、医療機関は医療事故調へ
の届け出が義務化され、怠った場合には罰則を課すこと、および医療事
故調で故意・重過失と判断された場合には警察に連絡し、また不適切な
行為には行政処分を課すことである。
この案は一見、真っ当に見えるが、専門家の評価に耐えうるものでなか
ったらしく、以下の批判が寄せられた。1)現代医療では診療関連死が不
可避で、その評価は専門家の間でも意見が割れることが多い。このような
問題の解明には多数の専門家による徹底的な話し合いが必要で、厚労
省が想定する八条委員会では解決できない。2)厚労省に医療事故調を
設立し、同省が調査権と処分権を併せ持つことは、医療の正当性を同省
が判断する国家統制を招き、医療の発展を阻害する。3)事故調査の領
域では調査結果を不利益処分に用いないことは国際的常識であり、処分
と連動した場合には隠匿、相互不信、萎縮医療を助長する。至極、もっと
もである。
厚労省試案を受けて、昨年11月、自民党も検討会を開催した。その中で、
大村秀章座長は自民党案作成を役所に委ねると発言し、日本医師会、学
会代表は厚労省試案への賛同を表明した。厚労省案が与党と有識者によ
って承認されたことになる。
このニュースは業界メディアで報道され、多くの医療者の不興を買った。虎
の門病院・小松秀樹氏は講演・自著で厚労省案の問題点を指摘し、試案
に賛成した日本医師会執行部を非難した。小松氏の意見は複数のメディ
アで配信され、医療事故調問題は各地の医師会、学会やウェブ上で議論
されるようになり、彼らを通じ地元の国会議員、国民が認識するようになっ
た。このような情報伝達にウェブやメールが果たした役割は大きい。
その後、医療事故調法案は迷走を続けている。厚労省にとっては、業界代
表者が承認した案が、現場に反発されたことは初の経験であろう。従来の
根回しが通用しなくなった。自民党は足並みが揃わない。部会長の大村氏
は沈黙を守り、副部会長で日本医師会推薦の西島英利氏の発言は首尾一
貫しない。舛添大臣だけは厚労省試案は不十分と指摘している。野党は対
案を準備しているようである。一方、日本医師会では試案を推進した執行部
の責任が追及され、今春の医師会長選挙が絡んで面倒なようだ。内科・外
科学会は、年末に厚労省案への賛同を臭わせた緊急アンケートを周囲に配
布しただけである。
医療政策立案において厚労省はその任に堪えるとは言い難いが、対抗す
る勢力も成熟していない。医療界の混迷はもう少し続きそうである。手前味
噌であるが、私が参加する現場からの医療改革推進協議会は独自案を作
成しウェブ上で公開している。参考になれば幸いである。
※現場からの医療改革推進協議会のホームページ
http://expres.umin.jp/genba/index.html

*上 昌広(かみ・まさひろ)氏のプロフィール
1993年東大医学部卒。1997年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国
立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床研究に従事。05年より東大医科
研探索医療ヒューマンネットワークシステムを主宰し医療ガバナンスを研究。
帝京大学医療情報システム研究センター客員教授、コラボクリニック顧問、
周産期医療の崩壊をくい止める会事務局長、現場からの医療改革推進協
議会事務局長を務める。

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2.【第24弾「事業仕分け」のご案内】
~ 神奈川県大磯町 ~
構想日本が2002年から行なっている行政の「事業仕分け」は行財政改革
の切り札です。予算編成に反映させた結果、1割もの事業を削減できたと
いう具体例もあります。この実績を背景に、50以上の自治体から問合せが
あり、実施希望の順番待ち状態です。
今回は、三好町長が選挙公約に掲げて当選したことを受けてのもので、初
の「町」での実施です。行政が住民に密着しているだけに新しい成果が期
待できます。
行政の方、自分の地域を何とかしたいという方、お誘いあわせのうえ、侃々
諤々の議論をご覧ください。必ず地域再生の大きな参考になると思います。
【日時】 2008年2月9日(土)9:00~16:00
※入退室自由です。ご都合の良い時間帯にお越しください。
【会場】 大磯町保健センター(大磯町役場内)
(神奈川県中郡大磯町東小磯183  TEL:0463(61)4100 )
【対象】 大磯町の一般会計事業(20事業程度)
【参加者】 事業説明者:大磯町役場職員
評価者、コーディネーター:「明日の地方財政を考える会(自治
体職員有志の研究会)」メンバー、構想日本スタッフ
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≪「経済財政諮問会議」で「国の事業仕分け」が議題に登場!≫
11月1日の「経済財政諮問会議」で「国の事業仕分け」が、初めて議題とし
て取り上げられました。
民間議員の伊藤隆敏氏(東京大学大学院教授)、丹羽宇一郎氏(伊藤忠
商事会長)、御手洗冨士夫氏(キヤノン会長)、八代尚宏(国際基督教大学
教授)4氏の連名で提案されています。
この提案は実現へ向けての大きな一歩と捉え、更に働きかけをしてまいり
ます。 http://www.keizai-shimon.go.jp/ からご確認ください。
≪事業仕分けとは・・・≫
・国や自治体の行政サービスについて、予算書の項目ごとにまず要否の
議論をする。
・その上で、実施主体(官か民か、国か地方か)を議論
・「外部の目」を入れる
・「公開の場」で議論する
●これまでの実例をもとにポイントをまとめた、構想日本編『入門 行政の
事業仕分け』(ぎょうせい刊・1,800円)のご注文も下記にて承ります。
————————————————————–
ご参観ご希望の方は、2月7日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
お名前
所属
ご連絡先
————————————————————–
*お問い合せは、 西田/伊藤まで。TEL 03-5275-5607

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