【No.353】事業仕分けの効果 ~「高島市事業仕分け」追跡調査レポート~
2008.06.06

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JIメールニュースNo.353 2008.6.6発行
事業仕分けの効果
~「高島市事業仕分け」追跡調査レポート~
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◆◇ 目 次 ◇◆
1.【事業仕分けの効果 ~「高島市事業仕分け」追跡調査レポート~】

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≪TOPICS≫
★浜松市事業仕分けの「結果速報」が出ました。詳しくは下記のホー
ムページからご覧いただけます。
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1.【事業仕分けの効果 ~「高島市事業仕分け」追跡調査レポート~】
構想日本非常勤スタッフ
(慶應義塾大学4年)
田中 俊
今年4月に、滋賀県高島市で行なった行政の事業仕分けの追跡調査に
同行しました。
高島市は平成17年より、構想日本とともに2回、また市民のみで1回と、
3回にわたって事業仕分けを実施しています。さらに事務事業だけでは
なく、施設管理や仕事のやり方の仕分けなど、回を重ねるごとに独自の
創意工夫を取り入れており、事業仕分けの最大の成功事例とも言えま
す。
今回は、市長をはじめとする市役所の職員、市民評価者へのインタビュ
ーにより、事業仕分け実施後の財政や個別事業の状況、職員、住民の
意識の変化を探りました。
まず、市の財政は、事業仕分けを実施した翌年の平成18年度の予算で、
約21億円を削減しました。
高島市は平成17年1月に6町村が合併後、旧町村からの事業が継続さ
れた結果、重複事業が数多く残っていることが判明。仕分け作業によっ
てこれらの事業を整理統合できたことが、予算を大きく削減できた最大
の要因です。
整理統合された例として、高齢者や障害者に対する交通福祉の事業が
挙げられます。
「高齢者福祉タクシー券助成事業」(1人暮らしの高齢者にタクシー券を
交付する事業)は助成券の使途が不明であることから不要、「外出支援
サービス事業」(利用者の居宅と在宅福祉サービス等提供する場所や医
療機関等との間をコミュニティバスで送迎する事業)はコミュニティバスが
市内の一部のみで実施されていることから要改善と仕分けられました。
実はここから先が「成功事例」たる所以なのです。仕分けの後、所管の保
健福祉部は、上記2事業にとどまらず「心身障害者等交通手段利用助成
事業」、「マキノタウン回数乗車券無償交付事業」、「マキノタウン回数乗
車券助成事業」の3事業も庁内で議論し、「対象者や地域により相違があ
った交通助成関連施策」を、「福祉総合交通利用助成事業」(非課税世帯
に対しタクシー・ガソリン・バス利用助成券を交付)へと整理統合しました。
この結果、約3000万円の予算が削減されました。
一方で、事業仕分けが新規事業の立ち上げのきっかけとなったケースも
あります。
米の安定生産と品質向上を図るとことを目的に、環境に配慮しながら病
害虫防除を適時かつ効率的に実施する「病害虫防除事業」。これは本来、
生産者の自助努力で行うべきという議論の結果、不要と仕分けられ、翌
年度、廃止されましたが、そのことによって、農薬や化学肥料をできるだ
け使わない、安全で、美味しい米の農業が進み、「生き物田んぼ米」とい
うブランドの確立につながったのです。「スクラップからビルドへ」という事
業仕分けの理想形の一つと言えるのではないでしょうか。
この他、市民評価者の方へのインタビューから、行政に対しての関心の
高さを感じました。
「高島市は田舎なので、自治会活動の繋がりが深い。自治会は地域活動
を行う中で、行政と密接に結びついている。例えば雪かきなど、地域で協
働しなければならない仕事がある。そのことを通じて、行政がどういうこと
をしているのかを身近に見てきて知っていた」と話す方がいました。
私は都会で生まれ育ち、この点に高島市との違いを感じ、また行政への
意識の差もそこから生じるのではないかと考えました。主体的に「公(官
=行政ではなく)」に関わることで、「公」と自分とを結び付けて考えられる
機会──。それがあるかないかによって、社会や行政に対する意識や関
心は大きく変わるのではないでしょうか。
事業仕分けもその機会の一つになることができるのだと思います。
事業仕分けによって、予算削減や新たな事業の創造といった目に見える
効果が期待できます。同時に、そこに暮らす人の意識が変わるような、目
に見えない、でも長い目で見ると必ずプラスとなる効果も期待できるのが
事業仕分けだと思います。

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