【No.357】職人リレーエッセー(10) 百年後の為に今を生きる
2008.07.04

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JIメールニュースNo.357 2008.7.4発行
職人リレーエッセー(10)
百年後の為に今を生きる
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◆◇ 目 次 ◇◆
1.【職人リレーエッセー(10) 百年後の為に今を生きる】
2.【第132回「J.I. フォーラム」のご案内】
3.【第27弾&第28弾 「事業仕分け」のご案内】

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1.【職人リレーエッセー(10) 百年後の為に今を生きる】
真田紐師 江南(えなみ)
和田伊三男
短いサイクルで商品が次々と消費されていく世の中にあって、同じ品種の商品を
何百年も売っている老舗がたくさんあります。我々も、代々450年以上、真田紐を
作り、売り続けています。
これがなぜこの時代も生きていられるのか? 確かに裕福に続けている店は多くは
ありませんが、時代の波の中、それを乗り越えてゆく考え方があるのです。
それは、「商売っ気を見せてはならない」事に尽きます。商売っ気を見せた途端その
商いは終焉を迎えると言っても良いでしょう。商売と離れた部分に商売のツボがある
のかも知れません。
特に、ものづくりの商売に於いて、商売をする中で、現在の原材料、道具、作る人、
お客様、それぞれが末代に至って一つでも欠けてしまっては続くものではありませ
ん。我々の商売では、今仕入れる道具を実際使うのも、今入ってきた職人がちゃん
と作品を作れるのも何十年後かになります。
それはお客様にも言える事で、ただ単に商品を売って利益を得るというだけではそう
長く続く関係にはなりません。真田紐のお客様には異業種の職人さんや作家さんか
ら大きな企業の方も多いわけですが、お客様が真田紐を使う事に慣れていない場合
は、包括的な生活風習から使う為のアイデアや使い方などを教え、場合によっては
横について一緒に物を作る事もあります。
お客様を育てると言う事も実際には時間のかかる事ですし、その間は無償もしくは
商売上は損をします。たとえば、20歳で作家としてスタートしたお客様が50代・60代
になって大きな作家となる様にサポートするのです。こういったお客様を何十人と同
時進行でサポートすると多くのお客様と一生関係が続き、また、その後継者も自分
の次世代に至るまでのお客様になります。
お客様が大きくなり大きな商売となって得た利益は、次のお客様、その後継者の方
の糧となります。そして、その中でこちらの生活もあるのです。
とはいえ、老舗も、同じ物を作っているばかりではありません。その時代時代のニー
ズにしたがって作る、新しい商品、使うアイデアも必要です。真田紐で言えば、アパ
レルやインテリア産業や小物などに使われるものです。
しかし、昔から「大木は根や幹を育てる事によって枝が伸びる」という例えに言われる
様に、根や幹にあたる“本筋の商売”があってこその枝葉(新しいアイデア)であるこ
とを忘れてはなりません。枝葉の部分がどれだけ売れようとも、根や幹から離れて重
心を移したら、その大木は枯れてしまうか、もう一度挿し木の苗の状態から育てなけ
ればなりません。それにはまた何十年、何百年とかかるでしょう。
一方、枝葉のない木も幹は育ちません。若い頃は覚えた技術で遊ぶだけ遊び、遊び
の中にも研究、開発し、そして、本筋の商売に戻った時にその遊びは幹の栄養となり
ます。
三世代同居の一子相伝の世界では、孫は先々代に学びます。先々代の頃の風習や
使い方を知っている事は、孫にとって大きな財産となります。父の世代の事柄や常識
は多くの人が知っているでしょう。それは知っていて当然で、知らなければ無知とされ
るでしょう。でも、もう一世代前の情報は歴史ですし、その時代の常識は今の憧れや
ロマンにつながります。
新しいアイデアのもとは、注意深く見聞きすることで見つかります。真剣に遊ぶといっ
てもいいかもしれません。祖父、曽祖父と繋がりの無かった方には、落語を聞くのも
いいのかも知れません。事実、少年期を米国で過ごした私は、落語で色々と学びま
した。
特に桂米朝さんの古典落語は古い言い回しや使い方を現代風に言い換えてくれた
り説明してくれたりして、大いに参考になりました。落語と言うのは他の古典芸能よ
りも生活に近いからこそ、生活の知恵や風習、格言もよくでてきます。単なる娯楽と
してではなくより注意深く聞くと、用途は違っても現代風にイマジネートできるアイデ
アも古典落語の中に見え隠れします。
これらは、百年後の為に今を生きる術です。「短期に大儲けして後は悠々自適」とい
うのは目指しておりません。が、そこには違った生きがいがあります。今後も慢心す
るのではなく、勉強しつつ多くのお客様と続いて行ければと考えています。

*和田 伊三男(わだ・いさお)氏のプロフィール
昭和41年9月、十四代指物師江南・伊三郎と十三代千家十職塗師・中村宗哲次女
孝子(十四代真田紐師江南)の間に京都で生まれる。私立帝塚山中学校入学同卒。
St.Francis prep school(アメリカ・ペンシルベニア州) 入学同卒。在学中に、スコラス
ティック・アートアワード・ゴールドメダル6回、ブルーリボン賞1回受賞、ナショナル・
ファイナリスト受賞、ペンシルバニア州州立美術展選出、米国連邦議会美術展招待
出品、他。
ボストン美術館付属美術大学(school of the museum of fine arts、Boston/アメ
リカ・マサチューセッツ州)入学。在学中、各現役美術家講師に水彩画・写真・彫刻・
陶芸等を学ぶ。SMFAアルムニ展出品。
昭和64年 伊勢神宮式年遷宮に伴い帰国。帰国と同時に家業に就き、伊勢神宮式
年遷宮製作品作製に従事。十四代江南・和田伊三郎・入院・死去に伴い十五代目
江南継承。出演・寄稿:NHK・フジTV・読売TV・KBS京都ほか。表千家「同門」に
真田紐特集、裏千家「和(なごみ)」真田紐・組紐特集、淡交社刊「茶の結び緒」、月
刊「和楽」真田紐特集などに寄稿。TVラジオ出演(表参道ヒルズ・ダンヒルCMなど)。
〔真田紐師 江南ホームページ : http://www9.plala.or.jp/enami/ 〕
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2.【第132回「J.I. フォーラム」のご案内】
トイレ掃除が日本を変える
社員が自分たちでトイレ掃除をしている会社は、今やめったにないでしょう。一夜明
けた盛り場を自分たちできれいに掃除する住民、店主もあまりいません。その掃除
を通して、会社の立て直しができたり、荒んだ学校が生まれ変わったりしています。
「日本を美しくする会」の生みの親である鍵山さん、田中さん、荒れた教室を立て直
す活動を全国に展開している高野さん、ご自身の会社の立て直し、地域を変える活
動に取り組む白鳥さんを迎え、なぜトイレ掃除が社会を変えたのか、その活動の根
底に流れる思想、長年の実践から得たものをお話しいただきます。掃除が日本を変
えるかもしれません。
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日 時  : 平成20年7月29日(火)
会 場  : 日本財団ビル2階 大会議室
港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111(代)
(http://www.nippon-foundation.or.jp/org/profile/address.html)
開 演  : 午後6時30分(開場:午後6時)
ゲスト  :鍵山 秀三郎(株式会社イエローハット 取締役相談役)
白鳥 宏明(伊東掃除に学ぶ会 代表世話人)
高野 修滋(便教会 世話人、愛知県高校教師)
田中 義人(日本を美しくする会 代表、
東海神栄電子工業株式会社 代表取締役社長)
コーディネーター :加藤 秀樹(構想日本 代表 )
主 催  : 構想日本
定 員  : 160名
フォーラム参加費 :2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
懇親会参加費   :4,000円
(ご希望の方は下記懇親会参加に○印をつけてください)
※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
「トラットリア・イ・プリミ 虎ノ門店」
港区虎ノ門2-2-1 JTビル1F TEL 03-3589-5812
(http://www.ep-tokyo.com/iprimi/toranomon/)
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参加ご希望の方は、7月28日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
お名前
所属
ご連絡先
懇親会に     参加する      参加しない
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*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下まで。TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田まで。TEL 03-5275-5607
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3.【第27弾&第28弾「事業仕分け」のご案内】
~ 甲府市(第27弾)、町田市(第28弾) ~

構想日本が2002年から行なっている行政の「事業仕分け」は行財政改革の切り
札です。今年度は10ヶ所以上の自治体での事業仕分けを予定し、問い合せも続
いています。今回は人口20万人で特例市の甲府市と、41万人で都下初の町田
市での実施です。私たちは、事業仕分けが自治体に定着することによって、「本
丸」である国での実施が現実になると考えています。行政の方、自分の地域を
何とかしたいという方、メディアの方、お誘いあわせのうえ、侃々諤々の議論に
傍聴参加ください。

~甲府市~
【日時】平成20年7月13日(日) 午前9時30分~午後4時
(12時から傍聴者を対象に事業仕分けに関する質問会を実施予定)
※入退室自由です。ご都合の良い時間帯にお越しください。
【会場】甲府市中央公民館2階大ホール (甲府市丸の内3丁目26-16 )
会場に関するお問い合わせは、甲府市行政改革推進課(055-237-5293)まで。
【対象】 甲府市の事務事業(32事業)
【参加者】事業説明者:甲府市役所職員
評価者(仕分け人)
コーディネーター:構想日本事業仕分けチーム
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~町田市~
【日時】平成20年7月26日(土) 午前9時~午後5時
(昼休みに質問会を実施予定)
※入退室自由です。ご都合の良い時間帯にお越しください。
【会場】町田市文化交流センター 5階(町田市原町田4丁目1番14号)
会場に関するお問い合わせは、町田市経営改革室(042-724-2503)まで。
【対象】町田市の事務事業(34事業)
【参加者】事業説明者:町田市役所職員
評価者(仕分け人)
コーディネーター:構想日本事業仕分けチーム
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≪事業仕分けとは・・・≫
・国や自治体の行政サービスについて、予算書の項目ごとにまず要否の議
論をする。
・その上で、実施主体(官か民か、国か地方か)を議論
・「外部の目」を入れる
・「公開の場」で議論する
※構想日本のホームページ「事業仕分け」もご覧ください。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/project/list.php?m_category_cd=16
●これまでの実例をもとにポイントをまとめた、構想日本編『入門 行政の事
業仕分け』(ぎょうせい刊・1,800円)のご注文も下記にて承ります。
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ご参観ご希望の方は、7月25日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
お名前
所属
ご連絡先
————————————————————–
*お問い合せは、 西田/伊藤まで。TEL 03-5275-5607

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