【No.456】絆の制度化―第三の困窮『関係的困窮』に向けて
2010.06.17

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J.I.メールニュースNo.456 2010.06.17 発行
「絆の制度化―第三の困窮『関係的困窮』に向けて」

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◆◇ 目 次 ◇◆
【1】 「絆の制度化―第三の困窮『関係的困窮』に向けて」
NPO法人北九州ホームレス支援機構 理事長
NPO法人 ホームレス支援全国ネットワーク理事長 奥田知志

【2】 2010年度自治体の事業仕分け 開催スケジュールはホームページでご覧ください

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【1】 「絆の制度化―第三の困窮『関係的困窮』に向けて」
NPO法人北九州ホームレス支援機構 理事長
NPO法人 ホームレス支援全国ネットワーク理事長 奥田知志
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野宿状態の人々を支援する時、最も大切なことは「見立て」であった。「見立て」を
間違うと支援は彷徨する。私たちは活動開始以来「ハウスレス」と「ホームレス」と
いう二つの「見立て」に立ってきた。
「ハウスレス」は家に象徴される物理的困窮を、「ホームレス」は家族等に象徴される
関係的困窮を意味する。これまで各地の支援現場において「失業と住宅喪失」に対する
取り組みがなされてきた。国のホームレス施策も同様だった。しかし「ホーム」は重視
されてこなかった。
ハウスレスに対して「彼らには何が必要か」を模索した。家、衣服、食物、保証人…。
だが同時に「彼らには誰が必要か」が重要だった。「畳の上で死にたい」という路上の
叫びを聴く。支援を受けアパートに入居できる。すると「俺の最期は誰が看取ってくれ
るだろうか」という新たな問いが生まれる。この「人間的な問い」を奪われてきたのが
困窮孤立状態にある野宿者の現実だったし、その困窮に向けた支援が必然だった。
戦後日本の社会保障における困窮概念の中心は「経済的困窮」と「身体的困窮」であった。
経済的困窮に対してはハローワークや生活保護制度を、身体的困窮に対しては病院、老人
福祉、障害福祉などで対応してきた。しかし現在の日本社会は「もう一つの困窮」を抱え
ている。それが「関係的困窮」である。これは「第三の困窮」と言って良い。多くの問題
を抱えつつも従来の血縁や地縁がカバーしてきたものが崩壊した。社会保障の受け皿をど
れだけ作ろうとも、それを本人に合わせ段階的継続的に活用する「制度またぎ」型の伴走
的なコーディネートがない。自立意欲醸成や制度利用は、絆の欠如によって行き詰る。
絆が途切れる。それは、いざと言う時に助けてくれる人がいないという事態を意味する。
いや、それ以上に深刻なのは「自己喪失」である。なぜなら人は、他者との関わりの中で自
己の存在意義を知るからだ。最近頻繁に絆が途切れた困窮青年と路上で出会う。「もう死に
たい」「生きていても迷惑をかけるだけ」と言う彼らに「君は自信家だ」と声をかける。
「いいえ自信がないから死にたいんです」と彼らは応える。だが彼らは自分に対する自分の
判断(もう死ぬしかない)を絶対的に信じているのだ。孤立の中での自問自答が続く。「そ
んなに自分を信じないで、赤の他人のこのおやじの言うことを少し聴きなさいよ」。他者と
の出会いの中で人は立ち上がっていく。
「ホームレス」問題は、もはや今日の日本社会そのものの問題だ。昨今「無縁社会」と言わ
れる。しかし「無縁社会」など無い。問うべきは「無縁か、社会か」である。人は独りでは
生きていけない。だから、赤の他人同士が助け合う仕組みをつくった。それが「社会」だ。
無縁化の中で「社会」が崩壊しようとしている。自己責任論の行きつく先は「社会不要論」
である。社会の側が「それはあなたの問題だ。一人で解決しなさい」と言うならば、もはや
社会も国家も総理大臣も無用となる。社会的責任が先行し、しかも不可逆的にその責任が果
たされる時、真の意味で個人の責任を問い得る。それが社会的責任と自己責任の関係なのだ。
早急に「絆の制度化」が必要だ。政府はPS(パーソナルサポーター)設置を掲げた。路上で
二十年問い続けた「ハウスレス」と「ホームレス」に向けた取り組みが始まろうとしている。
今後に期待したい。

【2】 2010年度自治体の事業仕分け 開催スケジュールはホームページでご覧ください
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高浜市 2010年6月19日(土)、20日(日)開催
所沢市 2010年6月26日(土)、27日(日)開催

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