【No.462】職人リレーエッセー(14)いま南部菱刺しを刺すということ
2010.07.29

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J.I.メールニュースNo.462 2010.07.29 発行
職人リレーエッセー(14)
いま南部菱刺しを刺すということ
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◆◇ 目 次 ◇◆
【1】 職人リレーエッセー(14)いま南部菱刺しを刺すということ
刺し子職人 天羽やよい
【2】 第157回J.I.フォーラムのご案内 本日開催!

【3】 2010年度自治体の事業仕分け 開催スケジュールはホームページでご覧ください

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【1】 職人リレーエッセー(14)いま南部菱刺しを刺すということ
刺し子職人 天羽やよい
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南部菱刺しという刺しこをご存知ですか。
江戸時代後期から大正時代まで青森県南部の三八上北と呼ばれる地域で、農家の女性たちに
よって刺し継がれてきたものです。
この土地は寒冷で木綿が育たず、北前船で運ばれた古手木綿の量も限られていたため、農民に
は木綿の着用が許されませんでした。また江戸時代後期は飢饉が数年おきにやってくるという
厳しい時代で、餓死や間引き、子に先立たれる逆縁などが日常的にある暮らしのなかでは食べ
させることと着せることが女たちの、それこそ命がけの仕事でした。種を播いて育て、糸を績
ぎ、麻布に織り上げる。その麻布を少しでも暖かく着せるため、糸としての使用だけが許され
ていた木綿糸で布目のよこ糸とよこ糸の間を刺し尽くす。それが南部菱刺しなのです。
偶然がいくつか重なって東京で生まれ育ったわたしが、ここ八戸で南部菱刺しに出会いました。
歴史など何も知らず考えもせず、模様集一冊を頼りに刺していましたが、そうしているうちに
前述の歴史を話してくださる人、モノを作る以前に大事なことがあると教えてくださる人たち
に出会いました。手慰みや趣味やお金のためではない。家族に暖かいものを着せるためにどれ
だけの労力、根気、時間を使ったか。この土地に生まれ、必死で生きた南部女の存在が私の中
で離れなくなり、「南部」と冠した刺しこに携わる者として、装飾的な部分刺しをしていたの
では南部女に顔向けできないとの思いから、総刺しだけをやっていこうと姿勢が定まりました。
時代に逆らう偏屈ものがいてもいいと開き直りつつ、総刺しの効能もあると感じています。フ
リーハンドではなく右から左へよこ糸に沿って刺し、布を返してまた右から左の単純な繰り返
しには心をからっぽにしてくれる力があります。3時間刺せば模様とともに、過ぎ去った3時間
が質量になって布の上に現われます。自分の呼吸と針の動きのリズムがピタッと重なったとき、
広々とした場所に立っているような清々しい気持ちになります。
歴史のある工芸を地元生まれでない人が始めようとするとき、民族学者の宮本常一氏はその人
にこう言われたそうです。
「ゴミになるな、土になれ。」
わたしにとっても大きな宿題です。針を持ち続けるなかから立ち上がってくる何かをいつか受
け取ることができるでしょうか。
天羽(あもう)やよい氏のプロフィール:
1948年(昭和23年)東京生まれ。1975年に八戸に移住。1976年にレントゲン検診車の中で年配の
男性技師から菱刺しを勧められる。翌1977年に書店で「南部つづれ菱刺し模様集」に出会ったこ
とがきっかけとなり南部菱刺しを始める。1981年から刺し糸である木綿糸を身近にある草や木・
実で染め始める。1984年から2008年まで9回の個展(八戸・盛岡・東京)。1988年から菱刺し教室
「梅の花工房」を始める。以後、1944・1998・2009年に作品展を開催。1991年から1996年まで近く
にある小規模作業所の通所の人たちと一緒に菱刺しを楽しむ。1993年から2006年まで五戸公民館で
菱刺しの講習。1996年からは五戸菱刺し愛好会となり2003・2006年に八戸で作品展を開催。2001年
から長年の念願だった織りの勉強を始め、現在は帯を中心に仕事をしている。

【2】 第157回J.I.フォーラムのご案内 本日開催
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「新人国会議員が国、地域、そして人の幸せを語る」

55人。今回の参議院選挙で当選した新人議員の数です。昨年の衆議院選挙での新人議
員数は158人。合計すると全国会議員の3割近くになります。ねじれ国会と言われる
など、与野党の構成はいろいろ変化しても、国会議員の世代交代は着実に進んでいるの
です。5年、10年後には彼らが日本の政治の中軸を担う政治家になるでしょう。新人
議員は政治家としてまだ未熟でしょうが、一方で大きい可能性を持っています。大いに
彼らの政治観を語ってもらいます。

○日 時: 平成22年7月29日(木) 18:30~20:30
○会 場: 日本財団ビル2階 大会議室
港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111(代)
http://www.nippon-foundation.or.jp/org/profile/address.html
※会場のセキュリティの都合上、本案内状を会場1階で提示してください。
○開 演: 18時30分(開場:18時)
○討論者  : 有田芳生(比例)  石山敬貴(宮城4区) 大野もとひろ(埼玉)
(五十音順)  小熊慎司(比例)  川口博(秋田2区)  小西洋之(千葉)
柴田巧(比例)   長谷川岳 (北海道) 松田公太(東京)
○コーディネーター: 加藤秀樹(構想日本)
○主 催: 構想日本
○定 員: 160名
○フォーラム参加費: 2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
○懇親会参加費: 4,000円
(ご希望の方は下記懇親会参加に○印をつけてください)
※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
「トラットリア・イ・プリミ 虎ノ門店」
港区虎ノ門2-2-1 JTビル1F TEL 03-3589-5812
(http://www.ep-tokyo.com/iprimi/toranomon/)
※本日のJIフォーラムはニコニコ動画で配信予定です。
こちらのURLからご覧いただけます。 http://live.nicovideo.jp/gate/lv22489706
○参加ご希望の方は、直接会場にお越しください。
————————————————————–
*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下明美まで。TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田陽光まで。TEL 03-5275-5607
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【3】 2010年度自治体の事業仕分け 開催スケジュールはホームページでご覧ください
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相模原市 2010年7月31日(土)、8月1日(日)開催
※今回の事業仕分けはライブ中継されます
高松市 2010年8月1日(日)開催
大阪市 2010年8月21日(土)、22日(日)開催

●詳しくは構想日本HPをご覧ください:https://www.kosonippon.org/wp-manager/shiwake/

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