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【No.559】市街地と農地が混在する価値

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J.I.メールニュース No.559 2012.06.28発行

市街地と農地が混在する価値

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【1】 市街地と農地が混在する価値
東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授 横張 真

【2】 第178回J.I.フォーラム 6月29日(金)開催

【3】 ホームページ更新情報
<new!>ラジオ出演情報、24年度事業仕分け実施予定

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【1】 市街地と農地が混在する価値
東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授 横張 真
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「スプロール」と聞くと、我々日本人の多くは、市街地と農地が無
秩序に混在した様を想起する。ところが欧米では、スプロールはあ
くまで「市街地の低密拡散」をさし、市街地と農地の混在は意味し
ない。事実、欧米の都市の郊外で、両者が混在する様を目にするこ
とはまずない。

なぜ、このような違いが生じるのか。「例えばドイツでは、一元的
な土地利用計画のもと、都市と農村の関係がきちんと整理された上
で土地利用が決まるので、双方にとって不利益な混在が起きない。
ところが日本では、都市は都市計画法、農村は農振法と、縦割り行
政そのままに制度が併存し、各種制度間の調整が難しい。加えて、
その実効性が十分でないため、計画意図に反した混在が起きてしま
う。」都市計画の専門家はこのように解説し、「混在」を、日本の
都市計画の後進性の象徴として問題視する。

19世紀末の西欧に端を発する近代都市計画は、まず都市と農村を峻
別し、さらに産業や居住にかかわる機能が純化された単位に空間を
切り分ける。機能純化されたユニットの並列配置という発想のもと、
都市をデザインする。こうしたコンセプトは、ユニット間の連携が
正常に保たれる限りは、きわめて効率的だ。高緯度地帯の、しかも
安定地盤の上に形成された欧米の大都市の多くでは、台風のような
熱帯性サイクロンが襲来することも、巨大地震が発生することも、
きわめて稀である。「連携が正常に保たれる」ことを前提に都市を
デザインすることは、理にかなったものだろう。

しかし、常に災害リスクのもとにある日本の都市を、欧米の都市と
同じ前提のもとにデザインしてよいだろうか。機能純化された個々
のユニットは、それ単独では人の生存に必要な各種機能の一部しか
満たせない。ひとたび連携が途切れると、都市全体が機能不全に陥
ってしまう。いつ連携が途切れても機能不全に陥らないよう、人々
の生存にとって最低限必要な機能を、各々のユニットが複合的に備
える。我々はむしろ、そうしたコンセプトのもとに都市をデザイン
すべきなのではないか。

街のなかの農地は、激甚災害等に伴いユニット間の連携が途切れた
際の緊急避難的な食料供給地と考えるならば、むしろ都市にとって
大きなポテンシャルともなる。市街地と農地の混在は、日本の都市
にあっては冗長で非効率なものではなく、むしろその持続的な将来
にとって不可欠な要因のひとつと考えるべきではないか。

災害が頻発する国土の上に都市を形成するには、それに見合った計
画論があるべきだろう。災害をしなやかにいなすレジリエントな
(≒回復力のある)まちづくりのあり方のひとつとして、我々は
「混在」のもつ価値を、改めて問い直す必要がある。

横張 真(よこはり・まこと)
東京都生まれ。1984年東京大学農学部卒業、86年東京大学大学院農
学系研究科修了、農林水産省農業環境技術研究所入所。92年に東京
大学農学博士号取得。98年より筑波大学社会工学系助教授、2004年
より筑波大学大学院システム情報工学研究科教授を経て、06年7月か
ら現職。

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【2】 第178回J.I.フォーラム 6月29日(金)開催
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「孤住」から「集住」へ

~暮らし方から社会のあり方を問い直そう~

日本の一人暮らし世帯比率は3割を超えています。私たちは、お金
さえあれば、たった一人で暮らせるようになりました。しかし、そ
の「便利さ」と引換に、私たちは利害や考えの異なる他人と譲りあ
ったり協力したりしながら生活していく機会、社会的あるいは民主
的な訓練の機会を失ってしまったのではないでしょうか。他方、一
人暮らしでもなく、恋人・家族との同居でもない、第三の居住のか
たち「集住」が若者を中心に試され始めています。私たちが当たり
前と考えてきた一人暮らしや家族との生活に改めて光を当て、社会
の仕組みを問い直します。

○日時: 平成24年6月29日(金)

○会場: 日本財団ビル2階・大会議室
港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111
http://www.nippon-foundation.or.jp/org/profile/address.html
※セキュリティの都合上、本案内状を会場1階で提出して下さい。

○開演: 午後6時30分(開場:午後6時00分)

○ゲスト: 久保田 裕之(『他人と暮らす若者たち』著者
/大阪大学大学院人間科学研究科 助教)
黒澤 友貴(ぱれっとの家 いこっと 住人)
篠原 聡子(建築家/日本女子大学住居学科 教授)
田口 歩(コレクティブハウス居住者)

コーディネーター: 加藤 秀樹(構想日本 代表)

○主催: 構想日本

○定員: 160名

○フォーラム参加費: 2000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)

○懇親会参加費: 4000円
ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
「頤和園(いわえん)溜池山王店」
港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531
http://www.iwaen.co.jp/tameike

※懇親会をキャンセルされる場合は必ずご連絡下さい。
直前のキャンセルの場合、キャンセル料を申し受けます。

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参加ご希望の方は、【6月28日(火)まで】に出欠の是非を、下記の
メールアドレスにお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org

お名前

所属

ご連絡先

懇親会に     参加する      参加しない
※懇親会直前キャンセルの場合は、キャンセル料を申し受けます。

—————————————————————-
*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下明美まで。TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田陽光まで。TEL 03-5275-5607
*今後のスケジュール等、詳細はHPをご覧下さい。
http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp/forum/index.php
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【3】 ホームページ更新情報
<new!>ラジオ出演情報、24年度事業仕分け実施予定
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○文化放送「くにまるジャパン」に代表加藤が出演します!

文化放送の人気ラジオ番組「くにまるジャパン」に構想日本代表の
加藤が特別コメンテーターとして出演いたします。

放送日時: 6月29日(金) 8:30~13:00

(加藤の出演時間は8:30~9:30頃の予定です。)

詳細は以下のリンクからご覧下さい。
http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp/project/detail.php?m_project_cd=1066&m_category_cd=33

○今年度も始まります!事業仕分け実施予定、続々更新中

構想日本HPでは今年度の実施予定が続々と更新されています。
詳細は以下のリンクよりご覧下さい!

http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp/shiwake/contribution/index.php

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