【No.574】職人リレーエッセー(19)「伝統を支えるのは一人の職人にあらず」
2012.10.11

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J.I.メールニュース No.574 2012.10.11発行

職人リレーエッセー(19)

「伝統を支えるのは一人の職人にあらず」

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【1】 職人リレーエッセー(19)
「伝統を支えるのは一人の職人にあらず」
よのや櫛舗 店主 斎藤 悠

【2】 第182回J.I.フォーラム 10月30日(火)開催

【3】 継続は力! 事業仕分け 今週末は3自治体で開催

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【1】 職人リレーエッセー(19)
「伝統を支えるのは一人の職人にあらず」
よのや櫛舗 店主 斎藤 悠
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浅草の伝法院通りに店を構え、つげ櫛職人をしています。この道に
入って約10年、試行錯誤を繰り返しながら技を磨いてきました。と
は言え、始める前から高い志を持っていたわけではありません。つ
げと向き合い、多くの人と接する中で、次第に、日本が育んだ伝統
技術を守り、伝えていきたいと考えるようになりました。

私はもともと、つげ櫛職人になるつもりはありませんでした。つげ
櫛職人だったのは私の叔父で、父は板前でした。私は父の後を継い
で板前になるつもりで、高校卒業後に調理師免許を取りました。と
ころが、22歳の時に叔父が病に倒れたため、急遽、私がつげ櫛職人
を継ぐことになったのです。

不意に訪れた転機に葛藤もありました。しかし、「やるしかない」、
「ここで絶やすわけにはいかない」という思いが勝っていました。
子供の頃から私をかわいがってくれた先代、先々代に恩返しがした
いという気持ちもありました。

しかし、もちろん簡単には行きません。先代は私に十分技を引き継
ぐ前に亡くなったので、最初の数年は特に苦労しました。同じ浅草
に住む、60代、70代の大先輩から、「大事な店だからしっかりな」
と背中を叩かれ、自分一人の店ではないことをヒシヒシと感じまし
た。

右も左も分からない状態でしたので、まずは代々付き合いのある大
阪のつげ櫛職人を訪ねました。一口につげ櫛と言っても、家ごとに
型や、歯の間隔が違うのですが、それでも、少しでもヒントを得る
ために必死でした。しかし、職人同士ですから、手取り足取り教え
てくれるわけではありません。大阪に向かう新幹線の中、「あの、
よのやさんの坊がこんなことも知らんのか!」と言われるのが怖く
てビクビクしていたことを、今でも鮮明に覚えています。

それからは、先代、先々代が遺した櫛と、自分でつくった櫛の歯を
何度も何度も交互に手に当てて、徐々に感触を近づけていきました。
私の櫛に「○」「×」を付ける人が居ないので、親戚や、代々お付
き合いのあるお客さんに、とにかく実際に使ってもらって、意見を
もらいました。そうしてさらに技術を改良し、時にお褒めの言葉を
いただくことで、少しずつ自信を得ていったのです。

こうして振り返ってみると、代々培われてきた人と人とのつながり
が伝統を支えているのだな、と再認識させられます。「伝統技術」
と言うと一人の職人が支えているように思うかも知れませんが、実
際には、森を育む人がいて、材をつくる人がいて、加工の工程ごと
に職人がいて、そして、大切に使って下さる方々がいます。さらに
遡れば、四季がある日本の気候風土があって初めて、良質のつげの
木が育つのです。

以前、あるお客さんが、「手入れをして欲しい」と一本の櫛を持っ
てきました。飴色に艶を帯びたその櫛は、先々代がつくったもので
した。そのお客さんのお祖母様が購入し、母から娘へ、三代に渡っ
て受け継がれてきた櫛だとのことでした。先々代がつくった櫛が、
三代に渡って愛され、そしてまた私が手入れをする。職人冥利に尽
きる瞬間でした。

斎藤 悠(さいとう・ゆたか)
昭和55年、浅草生まれ、浅草育ち。つげ職人として店を継ぐことを
決めて修行をし、現在は父と一緒に店を切り盛りしている。伝統を
守りつつ、現代に合うような新たなスタイルにも挑戦している。

*よのや櫛舗(伝法院通りのHP)
http://www.denbouin-dori.com/shop/yonoya/index.htm

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【2】 第182回J.I.フォーラム 10月30日(火)開催
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布から考える生活、アート、文化

-「文化絶滅危惧種」について考える-

「絶滅種」「絶滅危惧種」という言葉があります。普通は生物に関
して使われます。しかし、文化についても同じことが言えます。身
の回りの道具類、食べ物、言葉、所作、祭、芸能…。その中でも
「高級」なものは有形、無形の文化財として保護、保存されますが、
日常のもの、粗末なものほどどんどん絶滅していっています。これ
らのものは本当に絶滅させていいものなのでしょうか。現代社会に
おいては効率、機能、価格などの面で淘汰されても仕方ないのかも
知れない。しかし、長い目で見ると残すべき大きな価値があるので
はないか。そこで、今回は「布」に光を当てて、これらのことを考
えたいと思います。ゲストは、「粗末な宝物」をアートにしてきた
福本潮子さんと、手仕事の掘り起こしに情熱を傾けてきた田中陽子
さんのお二人です。

○日時: 平成24年10月30日(火)
午後6時30分~午後8時30分(開場:午後6時15分)

○会場: 日本財団ビル2階・大会議室
港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111
http://www.nippon-foundation.or.jp/org/profile/address.html
※セキュリティの都合上、本案内状を会場1階で提出して下さい。

○ゲスト:田中 陽子(暮らしのクラフトゆずりは 店主)
福本 潮子(藍染家)

コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本 代表)

○主催: 構想日本

○定員: 160名

○フォーラム参加費: 2000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)

○懇親会参加費: 4000円
ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
「頤和園(いわえん)溜池山王店」
港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531
http://www.iwaen.co.jp/tameike

※懇親会をキャンセルされる場合は必ずご連絡下さい。
直前のキャンセルの場合、キャンセル料を申し受けます。

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参加ご希望の方は、【10月29日(月)まで】に出欠の是非を、下記の
メールアドレスにお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org

お名前

所属

ご連絡先

懇親会に     参加する      参加しない
※懇親会直前キャンセルの場合は、キャンセル料を申し受けます。

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*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下明美まで。TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田陽光まで。TEL 03-5275-5607
*今後のスケジュール等、詳細はHPをご覧下さい。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/forum/index.php
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【3】 継続は力! 事業仕分け 今週末は3自治体で開催
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○つくばみらい市(茨城県)◇

【日程】 平成24年10月13日(土) 9:00~17:00
※入退室自由。

【会場】 谷和原公民館 大会議室(つくばみらい市古川1025番地)

【対象事業】 8事業

【参加者】 事業説明者:つくばみらい市職員
コーディネーター・仕分け人:構想日本事業仕分けチーム
市民判定人:つくばみらい市民(無作為抽出による20名)

【連絡先】 つくばみらい市 企画課(伊奈庁舎)
TEL:0297-58-2111(内線1220~1222)

○静岡県◇

【日程】 平成24年10月13日(土)、14日(日) 9:50~16:50
※入退室自由。

【会場】 静岡県庁 別館

【対象事業】 30事業

【参加者】 事業説明者:静岡県職員
コーディネーター、仕分け人
:構想日本事業仕分けチーム、静岡県民
市民判定人:静岡県民

【連絡先】 静岡県 行政改革課 TEL:054-221-2911

※当日の模様はインターネット上で生中継を行います!
http://shiwake-shizuoka.com/

○多可町(兵庫県)◇

【日程】 平成24年10月14日(日) 9:15~17:15
※入退室自由。

【会場】 多可町中央公民館

【対象事業】 8事業

【参加者】 事業説明者:多可町職員
コーディネーター、仕分け人
:構想日本事業仕分けチーム、多可町民

【連絡先】 経営企画課 TEL:0795-32-2381

※◇印がついている自治体は「市民判定人方式」での実施となります。

*詳細は構想日本の事業仕分けサイトよりご覧下さい!
https://www.kosonippon.org/wp-manager/shiwake/contribution/index.php

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