【No.620】『はだしのゲン』問題に見る現代日本の弱さ |俳人 黛 まどか氏|
2013.09.12

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J.I.メールニュース No.620 2013.09.12発行

「『はだしのゲン』問題に見る現代日本の弱さ」

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【1】 「『はだしのゲン』問題に見る現代日本の弱さ」
俳人 黛 まどか

【2】 9月の事業仕分けは亀岡市議会、京都府議会、山県市、都留市!

【3】 第193回J.I.フォーラム  9月30日(月)開催
「『出所者居酒屋』プロジェクト―犯罪を減らすための現場の動き-」

【4】 寄附のお願い

【5】 誰もが国の事業を仕分けられるウェブサービス「JUDGIT!」
登録増加中! http://judgit.net/

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【1】 「『はだしのゲン』問題に見る現代日本の弱さ」
俳人 黛 まどか
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漫画『はだしのゲン』に一部過激な表現があるとして、
閲覧を制限するよう松江市教育委員会が全小中学校に求
めた問題は、制限の撤回で決着をみた。
しかし一連の報道を見ていて、論点がずれていたことが
気になった。総じて評論家や教育専門家の意見は「『は
だしのゲン』には一部過激な表現はあるものの、戦争の
悲惨さは子供たちに伝えていかなくてはいけない」とい
ったものだった。
『はだしのゲン』は作者故中沢啓治さんの実体験を元に
描かれた作品であり、主人公のゲンは小学生時代の中沢
さんそのものである。私も小学生の時に全巻読んだ。
その上で言うが『はだしのゲン』はどの部分にも過激な
表現はない。モノクロの漫画には色も音も匂いもなく、
炎の熱さも人々の呻き声も焼けただれた人肌の質感もわ
からない。極めて抑えられた表現になっている。むしろ
「描き足りない」くらいだということを中沢さん自身が
生前おっしゃっている。

「過激」なのは表現ではなく、戦争という事実その
ものである。だからこそ作者は、戦争の残酷さを伝える
ことに心血を注いだのだ。そのことを誰も指摘せず、
『はだしのゲン』の閲覧制限云々という事象のみに目を
奪われたのでは真の論点を見失ってしまう。
ある調査で高校生にアンケートをとったところ、一番
悲しかった出来事が「ペットの死」だったという。核家
族化に長寿命化が加わり、高校生で肉親の死を経験する
ことが減っている。日本はなんと幸せな国になったこと
だろう。しかしだからこそ『はだしのゲン』が必要なの
だ。戦争実感のない政治家や官僚たちが戦争や核武装等
を真剣に論じ始めたら、それこそゲンの悲劇が繰り返さ
れるだろう。

『はだしのゲン』の問題と、被災地における震災遺構
の解体をめぐる問題は、戦争と震災の違いこそあれ、あ
る意味で共通しているように思う。今気仙沼市に打ち上
げられた大型漁船第十八共徳丸の解体をめぐり地元で賛
否が分かれている。実際自分自身が被災者であったなら、
見る度に震災の記憶が甦り苦痛を覚えるだろう。翻って
考えれば、だからこそ残すべきだと思うのだ。広島の原
爆ドームがあの場所にひたすら立ち続けることで、68年
の時を経て今尚原爆の凄惨さを生々しく私たちに訴え続
けているように、第十八共徳丸は津波の恐ろしさを後世
の人々に伝え続けるだろう。それがこの時代に生まれあ
の震災に立ち会った世代のひとつの役割であり責任であ
ると思う。伝えるということは過酷なことであり、伝え
る側には覚悟がいる。そして、先人たちはいつの時代に
もそれを行ってきた。

人の記憶は風化し易い。ゆえに中沢氏は覚悟を以て
『はだしのゲン』を描いた。その作品を“過激であるか
ら”という理由で子供たちから遠ざけようとすること、
被災地において何もかもが処理され何事もなかったかの
ように新しい町が出来つつあることに現代の弱さを見る。

68年前に広島が下した英断を今できるかどうかが様々
な場面で問われている。私たちが身を以て経験した負の
記憶を形にして残すこと、そして後世の人々がそれらを
生かし同じ轍を踏まないことこそが叡智の引継ぎだと思
っている。

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黛 まどか (まゆずみ まどか)

俳人。神奈川県生まれ。
2002年、『京都の恋』で第2回山本健吉文学賞受賞。
2010年4月~2011年3月、文化庁「文化交流使」としてパリを拠点に
活動。2009年、オペラ「万葉集(明日香風編・二上挽歌編)」 の
台本執筆、2012年、NYにて初演の福島県の応援歌「そして、春~
福島から世界へ」の作詞、2014年1月、初演のオペラ「滝の白糸」
の台本執筆(すべて、作曲:千住明)など、俳句に限らず幅広く
活躍。現在、「日本再発見塾」呼びかけ人代表。
最新刊に、随筆『引き算の美学』(毎日新聞社)、『新・資本主義
宣言』(毎日新聞社)など。

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【2】 9月の事業仕分けは亀岡市議会、京都府議会、山県市、都留市!
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○亀岡市議会 事務事業評価(模擬)

【日程】 平成25年9月12日(木)13:30~15:30

【会場】 亀岡市議会 全員協議会室 ※傍聴には事前申込みが必要

【対象事業】 模擬評価:「議会だより発行事業」
論点勉強会:「ごみの減量・資源化等推進事業」
「商店街等活性化事業」

【参加者】 亀岡市議会議員
参考人(構想日本から派遣)
伊藤伸(構想日本 総括ディレクター)
川嶋幸夫(構想日本 政策アナリスト)
永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研研究主幹)

【問合せ及び傍聴の申込み】 亀岡市議会事務局 議事調査係
電話:0771-25-5051 FAX:0771-25-6965

○京都府議会民主党京都府議会議員団「事業仕分け」

【日程】 平成25年9月13日(金) 9:00~17:00

【会場】 京都ガーデンパレス 2F
※傍聴自由(インターネット中継も行います)

【対象事業】 全10事業を予定(5事業×2班)

【参加者】
<第1班>
コーディネーター:熊谷哲(政策シンクタンクPHP総研主任研究員)
仕分人:山内敬(長浜まちづくり株式会社タウンマネージャー/
元高島市副市長)
川嶋幸夫(構想日本 政策アナリスト)他、
議員及び府民仕分人
スーパーバイザー 1名(議員)

<第2班>
コーディネーター:伊藤伸(構想日本 総括ディレクター)
仕分人:佐藤主光(一橋大学経済学研究科・政策大学院 教授)
大澄憲雄(浜松市 総務部人事課 主任)他、
議員及び府民仕分人
スーパーバイザー:1名(議員)

【連絡先】 民主党京都府議会議員団 担当 中小路 健吾 議員
TEL:075-414-5570

○山県市「事業仕分け」

【日程】 平成25年9月28日(土) 9:30~15:35
29日(日) 9:00~15:00

【会場】 山県市役所(3階大会議室)

【連絡先】山県市 企画財政課
電話:0581-22-6825 FAX:0581-27-2075

○都留市「事業仕分け」

【日程】 平成25年9月28日(土)9:30~16:30(予定)

【会場】 都留市役所3階 大会議室

【連絡先】都留市 政策形成課
電話:0554-43-1111 FAX:0554-45-5005

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【3】 第193回J.I.フォーラム  9月30日(月)開催
「『出所者居酒屋』プロジェクト―犯罪を減らすための現場の動き―」
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「出所者居酒屋」プロジェクト
―犯罪を減らすための現場の動き―

今回は、刑を終えて出所した人が働く居酒屋を作ろうと
いう話です。成人犯罪者の再犯比率は平成9年から上昇を
続け、23年度は約44%です。そして再犯者の60~80%が無
職で、再犯回数が増えるほどその比率は高くなっています。
つまり出所後、職がないことが再犯の大きな背景なのです。
犯罪は特別な人間だけが起こすものではありません。とこ
ろが、一旦「出所者」になると真っ当な仕事に就けなくな
るのが今の日本なのです。そこで、「初犯⇒出所⇒無職⇒
再犯」という負の連鎖を断ち切り、出所者が社会復帰でき
るようにし、犯罪も減らそう。そのための場として「居酒
屋」を作ろうという試みです。かねてこの企画を温めてき
た玄秀盛さんを中心に、社会と犯罪の問題についてフロア
の皆さんと一緒に考えたいと思います。

○日時:9月30日(月)18時30分~20時30分(開場18時00分)

○会場:日本財団ビル2階 大会議室
港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111
(http://www.nippon-foundation.or.jp/about/access/)

○ゲスト:浅野史郎(神奈川大学 教授)
玄 秀盛(公益社団法人 日本駆け込み寺 代表)
Paix2 (ぺぺ 女性デュオ : 井勝めぐみ・北尾真奈美)
コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本 代表)

※ お名前は五十音順に掲載させて頂きました。

○フォーラム参加費:一般 2,000円 / 学生 500円
(シンクネット・構想日本会員は無料です)
※ 学生の方は、 受付にて学生証をご提示下さい。

○懇親会参加費  :4,000円

○懇親会: 「頤和園(いわえん)溜池山王店」
港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531
(http://www.iwaen.co.jp/)

※ フォーラムへの参加はHPのフォームから、もしくはこのメール
にご返信をお願いします。
(J.I.フォーラムへのお申込み:
https://www.kosonippon.org/wp-manager/forum/regist.php?m_forum_cd=293)
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*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下明美まで。    TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
伊藤/田中まで。TEL 03-5275-5607
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【4】 寄附のお願い
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構想日本は非営利のシンクタンクですが、経済基盤は
会員からの会費収入です。収入が少ないから、スタッフ
も少なく、その結果常にフットワーク軽く活動ができる
反面、運営基盤は常に脆弱です。今後さらに、政策提言
・実現力を高めるため、構想日本は寄附のお願いをする
ことにしました。

そこで、信頼資本財団の「共感助成」というプログラ
ムに参加しました。この財団を経由して構想日本に寄附
をして頂くと、所得控除もしくは税額控除を受けること
ができます。例えば、所得税20%の方が10万円寄附する
と、確定申告時に39200円の税額控除が受けられます。
(詳細はhttp://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1266.html)

一人では世の中を動かすことができなくても一人ひとり
の行動がつながっていけば大きい力になります。
是非とも、皆さんのお力をお貸しください。

既に数名の方から寄付を頂きました。誠にありがとう
ございます!

※ 詳細は信頼資本財団ホームページ
http://www.shinrai.or.jp/furtherance/kousou/

構想日本代表 加藤秀樹

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【5】 誰もが国の事業を仕分けられるウェブサービス「JUDGIT!」
登録増加中! http://judgit.net/
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JUDGIT!(ジャジット)は、家にいて行政参加、政治
参加ができるウェブサービスです。政府が作っている
「行政事業レビューシート」に対して、イエス、ノーを
言ったり、自由に意見を投稿することができます。

JUDGIT!は、
・国が行う数多くの事業に触れやすくし、それについ
てモノを言う機会を提供する
・国の事業に対する意見を可視化する
という2つを目的としています。

官僚や政治家任せではなく、「自分ごと」行政、政治
をここから始めましょう。

主な特徴は以下の通りです。

1.「イケテル!」「イマイチ…」ボタンで簡単意思表示

政府が公開している「行政事業レビューシート」の好き
な項目をクリックして、「イケテル!」「イマイチ…」
のスタンプを押すことができます。また、シート全体の
印象についても同じく評価ができます。

2.「わからない」「おかしい」と思えば、すぐにどこでも
コメント記入

読んでいて「よくわからない」「何かおかしい」と感じ
たらすぐにその場でコメントを書くことができます。ま
た、他のユーザーのコメントに対しても「イケテル!」
「イマイチ…」ボタンを押すことができます。

3. みんなの意見で政治が動きます

質問やコメントの多かった事業は、構想日本がユーザー
の意見をまとめて、政府の政策に反映するよう様々な手
段に訴えかけていきます。

まずは試してみてください。トップページに登録画面が
あります。登録するとスタンプを押したり書き込んだり
できます(もちろん無料)。
http://judgit.net/

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