【No.650】日本のアイデンティティを守る耕作放棄地農業 |NPO法人よかっぺいばらき理事長 奧田 夏樹氏|
2014.04.17

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J.I.メールニュース No.650 2014.04.17発行

「日本のアイデンティティを守る耕作放棄地農業」

NPO法人よかっぺいばらき理事長 奧田 夏樹

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【1】<巻頭寄稿文>

「日本のアイデンティティを守る耕作放棄地農業」

NPO法人よかっぺいばらき理事長 奧田 夏樹

【2】<ご紹介>

『新国立競技場、何が問題か』出版記念シンポジウム

【3】<お知らせ>

(1)第200回J.I.フォーラム  5月16日開催

「現場力・結集=Japan Initiative」

(2)地方議員セミナー 5月23日(金)24日(土)開催

「議会改革と政策形成の進め方
~基礎を学ぶ!自治体の現況把握と課題整理~」

(3)「JUDGIT!」を使って新国立競技場の問題を議論しよう!

(4)会費のクレジット決済システム導入のご案内

(5)Yahoo!ニュース記事更新情報!

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【1】 「日本のアイデンティティを守る耕作放棄地農業」

NPO法人よかっぺいばらき理事長 奧田 夏樹

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大規模化、効率化への社会的圧力の結果、個人や小規模な農家が困るのは当然として、管理できなくなった地域の田んぼ全部が集まるような大規模稲作農家からも「苦しい」「つらい」という声ばかり聞こえてきます。基本は高額な設備投資で安い作物を大量に作り、薄利多売で利益を得るスタイルなので、資金繰りを間違えると大きな負債を背負って破たんしかねないからです。

第一次産業は、人類が生存するための必需品を生産していますが、いずれの先進国でも経済成長の過程では常に低所得産業になってきました。

これは農作物の生産量が人々の腹を満たす水準の需要を満たすと、それ以上の販売量の増加は、嗜好品的作物も含め多くは見込めないこと。必需品にはお金を出したがらないこと。必需品たる農作物には低価格安定供給への強い社会的圧力があること。また、調理原料としての農作物の値も低く抑えられ、工芸作物・養蚕なども工業化により収入源にはならなくなったこと。など、原因は多くあると思います。

1990年代には農作物全般の大きな値崩れがあり、2000年代には生産量が低下し、一方で生産コストは上がり続けているため、耕作放棄地がどんどん増えています。

こうした環境下で安い輸入農産物とも競い合いながら生き残るためには、大規模化などによる効率化で、より工業的な農業を行うことは、一つの方向性としてやむを得ないと思います。

しかし農業は、人類が文明を築くきっかけとなった文化であり、近代工業化以前は、常に時代の最先端のハイテク産業であり、最大の産業であり続けてきました。

私たちの生活文化の基礎は農と共にあり、里山の自然と共にあったわけです。また農地には、洪水や土砂崩れを防ぐ砂防ダムや利水ダムの効果、生活文化の場など、周辺の里山と共に里地里山生態系として多面的な機能があります。

そうしたなかで、地域ごとの特性が産まれ、私たち一人一人の生まれ育ち、アイデンティティ形成のよすがになってきたのです。

これらの機能は、高度成長の過程で多くが損なわれ、また現在進んでいる農業の再編の中で滅びつつあるように感じます。しかし一時の経済性だけでそれらを失ってしまえば、お金で取り戻すことはできません。

農地でも集約しにくい狭い土地、細切れの土地は、地形や環境が多様なので、里山の自然としては優れており、また谷津※など古くから人類と共にあった文化創造の場としても重要です。

NPO法人よかっぺいばらきは、そうした経済性が悪くプロ農家が見向きもしないが、文化・自然としては貴重な価値を持つ農地とその周辺地域を現代的に活用することで次世代に継承し、日本各地の地域アイデンティティを守るために活動しています。

果樹園、畑、田んぼなど多様な農地を無償や廉価で借り、自然農による生産、農体験や教育プログラムといった活用など、試行錯誤を続けています。

また今後、多くの新興国、途上国が経済成長を果たすにつれ、食料・エネルギーは自国の需要を満たすため輸出できなくなり、日本は仮にお金があっても、輸入が出来なくなる可能性があるとの見通しから、家庭や友人、コミュニティ規模での食料・エネルギー安全保障としての里地活用を目指しています。

こうしたコミュニティにおいて、社会環境の変化で居場所を見つけにくくなった若中年の就業困難者、障害者、引きこもり者、高齢者などの多様な人々をまずは担い手の核としてつくる。そして一つ一つの事業の利益は少なくても、多くの副業を組み合わせることで、地方でもそこそこ安心して暮らせる仕組みをつくる。

こんなモデルを作っていけば、持続可能な社会に向かうことは、国家を強くするというより、地域社会をしぶとくすることにつながり、グローバル化に飲み込まれずに安心して暮らせる一つの選択肢になりうると思うのです。私はそうした道を歩みたい。仲間をお待ちしています。

※谷津(やつ) 丘陵地が侵食されて形成された谷状の地形。谷戸(やと)、谷地(やち)など。

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奧田 夏樹 (おくだ なつき)

乞食勧進道NPO経営者。茨城県立土浦第一高、九州大学理学部生物学科、東北大学大学院理学研究科生物学専攻修了。博士(理学)。第1種銃猟・わな猟免許。国会議員政策担当秘書資格。西表島での生態学研究や自然保護活動の中、単なる開発反対ではなく地域の総合的未来像を示す必要を感じ、以後、専門の深化ではなく、学際化と実践を目指す。WEB新聞編集者、政治家秘書、政党公認候補等を経て現在、その日暮らし。尊敬する人:河井継之助、吉田松陰。NPO法人よかっぺいばらきHP:http://yokappe.eco.coocan.jp/ パートタイムのお仕事歓迎。
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☆今週のメルマガ執筆者である奥田様からのご案内です。

【クラウドファンディングの紹介】

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*みなさんのご意見をお待ちしています。(800字以内でお願いします)
info@kosonippon.org
いただいたご意見はバックナンバーと共に「読者の声」として以下に掲載しています。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/mail/index.php

※不掲載をご希望の場合は必ずその旨を明記して下さい。氏名、肩書きは、特にご指示がなければそのまま掲載します。匿名、ハンドルネームをご希望の場合は必ず明記して下さい。なお、盗作、名誉毀損、人権侵害、差別的な記述などの投稿は禁止いたします。

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【2】<ご紹介>

メルマガ等で構想日本とご縁のある方々から寄せられた、シンポジウムのお知らせです。
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『新国立競技場、何が問題か』出版記念シンポジウム
http://www.heibonsha.co.jp/books/b167998.html

○日 時:平成26年4月23日(水)18:00

○会 場:日本建築家協会・建築家会館1階大ホール(渋谷区神宮前2-3-16)

地図・アクセス

○会 費 無料。 予約不要、当日先着順。

○内 容 座談:槇文彦、大野秀敏、森まゆみ、陣内秀信。進行:古市徹雄。総合司会:元倉眞琴。

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【3】(1) 第200回J.I.フォーラム  5月16日(金)開催
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「現場力・結集=Japan Initiative」

1997年5月に始まったJIフォーラムがついに200回目を迎えます。17年間で827名のゲストにご参加いただきました。やはり、「継続は力なり」で、このフォーラムでの議論やゲストの人達の活動を通じて社会の課題や解決方法を多くの方と共有できたと考えています。
構想日本は4月から一般社団法人になりましたが、これを機に政策提言・実現の基盤を、これまで以上に 「現場力」「自分事」「イニシアティブ」に絞っていきます。200回記念フォーラムもそこに焦点をあて、現場で「ホンモノ」の活動をされている方々と日本の将来について語り合いたいと思います。

○日 時 : 平成26年5月16日(金)18:30~20:30(開場18:00)

○会 場 : 日本財団ビル2階 大会議室  港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111
※会場のセキュリティの都合上、本案内状を会場1階で提示してください。

○ゲスト : 家入 一真(実業家)
大南 信也(NPO法人グリーンバレー理事長)
片山 健也(ニセコ町長)

○コーディネーター : 加藤秀樹(構想日本代表)

○定 員 : 160名

○参加費 : 一般 2,000円 / 学生 500円 (シンクネット・構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

○懇親会参加費 : 4,000円(ご希望の方は下記懇親会参加に○をつけてください)

※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
「頤和園(いわえん)溜池山王店」 港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531

※ フォーラムへの参加はHPのフォームから、もしくはこのメールにご返信をお願いします。
(https://www.kosonippon.org/wp-manager/forum/regist.php?m_forum_cd=322)

★4月のJ.I.フォーラムはお休みします。5月の200回をお楽しみに!!

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(2) 地方議員セミナー  5月23日(金)24日(土)開催

※残席わずか お申し込みはお早めに!
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「議会改革と政策形成の進め方
~基礎を学ぶ!自治体の現況把握と課題整理~」

○日 時 平成26年5月23日(金) 13:00~17:00
24日(土)  9:30~16:00

○会 場 構想日本 会議室
(東京都千代田区平河町2-9-2 エスパリエ平河町3F)

○内 容 <23金>
「議会の役割、議員の役割(仮)」 福嶋浩彦(中央学院大学教授)
演習「財政状況をチェックするための決算統計の活用方法」 川嶋幸夫(構想日本)
懇親会(参加費別)

<24土>
「公益とは何か」 加藤秀樹(構想日本)
「決算審査への事業仕分け手法の活用」 伊藤伸(構想日本)
ワークショップ(模擬事業仕分け)

○対 象 地方議員

○持参物 ノートパソコン(演習において使用します)

○定 員 20名(要事前予約)

○参加費 15,000円(食事、宿泊は含まれません)

○申し込み メールからのお申込みは、info@kosonippon.orgまで
FAXからのお申し込みは、 03-5275-5617まで

※ 申し込みの際には、お名前(フリガナ)、所属、TEL、FAX、E-mailをご記入下さい。
※ 〆切:5月16日まで

お問い合わせは 構想日本 伊藤/川嶋/田中 TEL 03‐5275‐5607 まで

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(3) 「JUDGIT!」を使って新国立競技場の問題を議論しよう!
http://judgit.net/
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現在、構想日本では、国が行う5,000以上の事業について書かれたシートに誰でも自宅からフェイスブックの「いいね」ボタンを押したり、スタンプを押したり、コメントを書いたりして、意思を表明できるウェブサービス「JUDGIT!(ジャジット)」(もちろん無料)を使い、新国立競技場の問題を議論するキャンペーンを展開しています。

まずは下記のページにアクセスして、新国立競技場関連のシートに「いいね」やスタンプ、コメントをしてみてください。「JUDGIT!(ジャジット)」を見る人が多いほど、そして使う人が多いほど、新国立競技場の問題について国民的議論が盛り上がります。ぜひ一度見てみてください。

新国立競技場に関連するシート

・独立行政法人日本スポーツ振興センター運営費交付金に必要な経費
http://judgit.net/251581/top

・独立行政法人日本スポーツ振興センター施設整備費
http://judgit.net/251582/top

※はじめてご利用される方は簡単な登録が必要になります。ご不明な点等については、下記担当まで、ご遠慮なくお問い合わせください。

担当:伊藤・田中 TEL:03-5275-5607
shiwake@kosonippon.org
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(4) 会費のクレジット決済システム導入のご案内
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構想日本の運営資金は、会員の皆様からの会費(個人会員は一口1万円、入会金2000円)で賄われています。
この度、入会や会費払込みの手続きを簡単にするため、WEBからクレジットカードで決済できるシステムを導入しました。
WEB申込みの場合、特典として入会金2000円が無料になります。これから会員になっていただく方はもちろんですが、既に会員になっている方も更新のタイミングでご活用いただけます。
私たちは、非営利独立の立場から個々の政策に加え、その根底に横たわる政治・行政の仕組みそのものを変えることによって世の中を動かそうと活動しています。この活動に「ちょっと期待してみる」と思われる方、まずは1年間会員になってください。よろしくお願いします。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/info/index.php

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(5) Yahoo!ニュース記事更新情報!
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ディレクターの伊藤伸が、Yahooニュースにオーサーとして投稿している記事が更新されました。ぜひ御覧ください。

◇4月10日『理研とスパコン ~今だからこそ、あの時の仕分けを振り返る~』
http://bylines.news.yahoo.co.jp/itoshin/20140410-00034401/

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