【No.667】「滅びつつある日本の伝統木造」|木の建築設計代表  江原 幸壱氏|
2014.08.14

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J.I.メールニュース No.667 2014.08.14発行

「滅びつつある日本の伝統木造」

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【1】<巻頭寄稿文>

「滅びつつある日本の伝統木造」

木の建築設計代表 江原 幸壱

【2】<お知らせ>

(1)第203回J.I.フォーラム  8月25日(月)開催

「地方議員―どん底から反転へ」

【3】構想日本の7月の主なパブリシティ

(1) 対外活動

(2) 記事掲載

(3) その他

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【1】 「滅びつつある日本の伝統木造」

木の建築設計代表 江原 幸壱

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地球寒冷化が観測される中、日本では地球温暖化防止のために「低炭素化」政策は着実に進行しています。「低炭素化」というのは、建築の分野では生産時も使用時もCO2の排出量を抑えることを言います。それに加え、福島原発事故によって省エネ化は国の絶対的命題となり、建築においては経産省、環境省、国交省の三省を跨いで法整備(省エネ法改正等)が進んでいます。

数年おきに改正される省エネ法によって、2020年までにすべての建築・住宅において平成25年省エネ基準(高断熱化)の義務化が決まりました。この基準を達成するために関東以西の温暖地の全住宅は窓を小さくし、寒冷地並みの高断熱住宅にしなくてはならなくなります。これまでの和風住宅にように窓を大きくとった住宅がつくりにくくなります。

現在の日本では、建築・住宅においても省エネ化は最優先に取り組むべき課題です。しかし、北海道や東北などの寒冷地を除くと緯度が低い日本の住宅は、ヨーロッパや北米に比べて高断熱化による暖冷房の省エネ効果はそれほど大きくはありません。住宅では家電・照明・風呂の給湯の方がはるかにエネルギー消費量が多い項目です。エネルギー消費量の多い項目を規制した方がより大きな効果が得られます。

私は伝統木造の設計に携わっておりますが、その立場から省エネ法改正の問題点を指摘させていただければ、千年以上の歴史がある日本の木造技術の衰退、あるいは消滅につながる恐れがあることです。

日本の伝統木造は、日本の高温多湿の気候風土の中で快適に過ごせるように工夫され、もっとも省エネ化された住宅のつくり方です。軒を深く取り、簾をかけて夏の日光を遮り、窓を大きくして風の通りをよくし、夏の暑さをしのいできました。冬は囲炉裏もしくはストーブ、炬燵などの局所暖房でまかなってきました。伝統木造の省エネ効果は、温熱実測調査によって明らかになっています。

伝統木造は、地域で採れる木・土・紙などの材料を使い、長年培われた杣・大工・左官・鍛冶などの技術の集大成であり、素材生産から廃棄に至るまでもっとも環境に配慮した建築生産システムが確立されていました。

伝統木造の文化財建造物や江戸時代からの宿場町のまち並みは観光の目玉ですが、技術を持った職人の減少によって保存修復が難しくなってきています。

そして、省エネ法改正による新たな省エネ基準の義務化と新しい温熱計算方法の導入によって、日本の伝統木造の歴史が途絶える可能性があります。小さな窓の住宅へ誘導する計算方法は、掃き出し窓が多い伝統木造にとっては不利に働きます。一品生産の伝統木造は、温熱計算に乗せるための数値化に手間がかかり、現実的ではありません。

2000年以降の住宅政策は、大手ハウスメーカーにとって有利なものばかりです。これまでに住宅関連の法律が制定される度に伝統木造住宅は蚊帳の外に置かれてきました。その都度、伝統木造に関わる職人、建築士が国交省に申し入れ、辛うじて伝統木造の建設が継続できています。
私は、大学では学べない伝統木造の知恵や技術を職人から直接聞いた最後の世代になってしまうことに忸怩たる想いがあります。
日本の伝統木造技術は世界に誇れる技術・文化です。「和食」が世界無形文化遺産登録されたことに倣い、「日本の伝統木造技術」においても世界無形文化遺産の登録を目指すべきだと考えております。この登録は、今日の伝統木造技術の危機的状況を打開する唯一の方法だと思います。世界無形文化遺産の登録を目指すこの活動が、建築界のみならず、日本文化を大切に思う芸術・芸能・文学・学術などのあらゆる方々のご支援、ご協力を賜り、実現することを切に願っております。

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江原 幸壱(えはら こういち)

木の建築設計代表。http://www.kinokenchiku.biz/writing.html 一級建築士、住宅性能評価員。国産材・伝統的木組み・シックハウス対策・「本当に住みたい木の家」http://www.kinokenchiku.net/ をコンセプトに建築・住宅の設計・コンサルタントに従事する。『建築ジャーナル』誌コラム「建築と政治」を5年間連載。『新・木のデザイン図鑑』『新・和風のデザイン図鑑』『木のデザイン最強マニュアル』等執筆。「伝統木造技術」の無形文化遺産登録、「建築基本法」制定に取り組む。伝統構法をユネスコ無形文化遺産に!http://dentoh-isan.jp/about-campaign

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【2】(1) 第203回J.I.フォーラム  8月25日(月)開催

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「地方議員―どん底から反転へ」

ずい分前から、地方議会の機能不全、信頼の低さは指摘されていました。それにしてもです。耳を疑うような不祥事が続きます。

大事なのは、これは「他人事」ではないということです。私たちが彼らを選んだという意味でも、私たちの莫大な税金が彼らによって使われ、使い途を決められているという意味でも。

幸い全国で35,000人いる地方議員の中には志も能力も高い議員が少数ながらいます。

今回は、このどん底の地方議会を再生させねば、という熱い思いをもつ議員に、所属政党、地域、年齢などの違いを超えて、議論をしていただきます。

大勢の方に「自分事」として参加していただくことを期待しています。

◯日 時 : 8月25日(月)18:30~20:30(開場18:00)

◯会 場 : 日本財団ビル2階 大会議室  港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111

◯ゲスト : 越田 謙治郎 (兵庫県議会議員)

金野 桃子 (戸田市議会議員)

松丸 修久 (守谷市議会議長)

村上 幸一 (北九州市議会議員)

柳澤 亜紀 (港区議会議員)  他

◯コーディネーター : 加藤 秀樹(構想日本 代表)

◯主 催 : 構想日本

◯定 員 : 160名

◯参加費 : 一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

◯懇親会参加費 : 4,000円(ご希望の方は懇親会参加と明記してください)

※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
「頤和園(いわえん)溜池山王店」 港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531

※フォーラムへの参加はHPのフォームから、もしくはこのメールにご返信をお願いします。
( https://www.kosonippon.org/wp-manager/forum/regist.php?m_forum_cd=327 )

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【3】構想日本7月の主なパブリシティ

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(1) 対外活動

<講演・研修・仕分け等>

7月2日  静岡県立大学「政策過程論」 ゲスト講師(政策スタッフ 田中俊)

7月4日  東京市町村自治調査会 講義、模擬施設仕分け(政策アナリスト 川嶋 幸夫、政策スタッフ 田中俊)

7月12日  福岡県大刀洗町「住民協議会」(総括ディレクター 伊藤伸、政策スタッフ 田中俊)

7月22日  屋久島町職員研修 (総括ディレクター 伊藤伸、政策スタッフ 田中俊)

7月26、27日 「現場みらい塾」~地域のリーダー育成プログラム~ 第3回(主催:構想日本、PHP総研)

※その他、自治体との打ち合わせ8件

<審議会>

7月7日  第2回 新潟市 行政改革点検・評価委員会 (総括ディレクター 伊藤伸)

7月8日  第1回 那珂市 外部評価委員会 (総括ディレクター 伊藤伸)

7月12日  松阪市 公共・公用施設施設最適管理検討委員会(政策アナリスト 川嶋幸夫)

7月31日  第3回 新潟市 行政改革点検・評価委員会 (総括ディレクター 伊藤伸)

(2) 新聞・テレビ等メディア掲載

7月3日【経済教室】地方自治における合意形成
実効的な住民参加を 政治・行政を「自分事」に 日本経済新聞 (代表 加藤秀樹)

7月17日 地方議会のあり方 BS11 報道ライブ21 INsideOUT (代表 加藤秀樹)

(3) その他

4月~隔週金曜日 京都大学経済学部 「公共経営論」講義 (代表 加藤秀樹)

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