【No.716】「山からの便り・美山森林学校(6)」|美山森林学校校長  小林 直人氏| 
2015.07.30

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J.I.メールニュース No.716 2015.07.30 発行

「山からの便り・美山森林学校・メルマガ 6」

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【1】<巻頭寄稿文>

「山からの便り・美山森林学校・メルマガ 6」

美山森林学校校長  小林 直人

読者の声(抜粋)

【2】<お知らせ>

(1) 第215回J.I.フォーラム  8月20日(木)開催 ※19日から20日に変更になりました

「新国立競技場これからどうするか(仮)」

(2)《今週末の構想日本の活動》

(3)「現場みらい塾」第2期 開催中、第3期 募集中(※日程変更)

【特集】<国立競技場の建て替え>

(1) 日本情報発信多言語ウェブサイト「nippon.com」に代表加藤の記事

(2)《お知らせ》

・国会請願プロジェクト

・賛同署名募集

■本日 第一次国会請願 署名 87,310筆 手渡す

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【1】 「山からの便り・美山森林学校・メルマガ 6」

美山森林学校校長  小林 直人

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子供の頃、夏休みは川遊びが日課だった。

太陽が照りつける昼下がりになると、川が大きく屈曲するところに出来た淵に、村中の子供が集って、泳いだり、魚を追いかけたり、岩の上から飛び込んだり、河原で甲羅干しをしたりして夕方まで過ごした。小学校の上級生になると仲の良い友達と連れだって鰻獲りに出かける。

仕掛けは、1メートルくらいの凧糸に5号のチヌ針をつけて、川で生け捕りにした鮴(ごり)を姿付けにする。それを川岸に生える猫柳の枝などにくくりつけて流しておくのである。そんな仕掛けを20本くらい、鰻が潜んでいそうな薄暗い深みにセットして歩く。

鰻は多分夜行性である(日中に姿を見たことが無いから)。翌早朝に仕掛けを見て回らなければならない。すっかり明るくなると暴れるので、凧糸を切るくらいわけの無いことなのだ。子供にとって、パッチリ目覚めるには辛い時間帯だった。

夏とはいえ、未明の川の水は冷たくて、膝まで水に浸かって歩く為には強力なる動機が必要である。「もしかして鰻が食いついているかも知れない」。”それだけだ。”

そんな目覚めを一夏に十回くらい繰り返し、卒業するまでに四十回以上繰りかえしただろうか。食いついた鰻は一匹だけだった(勝率800分ノ1)。その上、その日僕は寝坊したので、友達が引きあげて来てくれた。「なおチャン」(不肖、僕)と何度呼んでも起きなかったのだろう。僕を呼んだのは「タモッチャン」である。この歳になっても呼び方は変わらない。

あれから随分時間が経ったけれど、森林学校では鰻獲りが、当然カリキュラムに入っていた。平成9年に一尾、10年に一尾獲れる(勝率20分ノ1)。理由はよく分からないが、流心※1に出て餌を探すのかも知れない。その時は、中川カッチャンと有竹棟梁が参加していた。

二人は水上建設のスタッフであり、四万十川で川遊びの経験者である。「こんなに原始的な方法なんて」と思ったのだろうか、凧糸を石にくくりつけると、いきなりドボン・ドボンと投げ込んだのだ。「阪神タイガースより勝率がええ」などとうそぶいている。

鰻はこの故郷の川で産卵するのではなく、ここから3千キロも離れたマリアナ海溝で産卵するらしい。そのくらいの事は知っていたのだけれど、「ウナギ大回遊の謎」塚本勝己著 を読むと、大分分かることが増えてきた。

故郷の川でせいぜい十数年暮らすと、「じゃあ行ってくるね」、とはるばる産卵の旅にでるらしい。日中は敵の捕食を避けて水深数百メートルを泳ぎ、夜は水深2百メートルを泳いで、日周鉛直移動※2しながら、半年もかけてマリアナに着くと、塩分フロント(潮目)を感知するや、素早く産卵する。(36時間というから、航海時間からすると随分素早い)

塚本先生は30数年かけてようやく幼生を発見した。レプトセファルスという。蒲焼の姿を1センチに縮小したような奇体と言えようか。まるで柳の葉のようである。これが上手く海流に運ばれれば、半年かけて温帯の岸辺に着く。我々がウナギ養殖のスタートに採補するシラスウナギとなって漂着するのである。

何故こんなに手間をかけるのかについては、こう解説されている。「産卵場は保守的で容易に動かせない為に、外洋から起源した名残りとして、ウナギはいまでも遥か外洋の深い産卵場まで帰って行かなければならなくなった。」

その起源は1億年までさかのぼる。白亜期である。

実は、レプトセファルスは、1904年にデンマークの生物学者シュミットが発見している。(その頃日本人は日露戦争で興奮していた。)

だが、2009年、世界で始めてウナギの卵を見つけたのは、マリアナのスルガ海嶺であり、塚本先生である。幼生の発見から23年後であった。これで、ニホンウナギの生態がはじめて明らかとなった。

レプトセファルス発見のほうが早かったのである。大海原で、5ミリ未満の卵に遭遇する為に気の遠くなるような時間が費やされた。ヨーロッパウナギについてはいまだにレプト発見に止まったままである。

さて、ここで塚本先生は、生物とその環境を精査している過程で、「脱出理論」なる恐ろしい仮説を秘かに抱懐するようになる。(と僕は想像しているのだが)
それは、アユの飛びはね行動の観察から来ている。(と思うのだが)
事実、僕のバケツから飛び跳ねて死んで行ったヤマメを幾度見てきたことか。

生物の密度が過剰だったり、何か不具合がある時に、その環境から脱出しようとする。宿命的本能があってもいい。先生は、ボートピープルやゲルマン民族の大移動をイメージしておられる。その意味で、生物多様性を当為にして、絶滅する種があることを否定するものではない。それは、人間の身勝手なエゴイズムであり、「そういう自然観や生命観ももたなければならないと思います。」と言っている。

でも、「野生生物はなかなかしたたかで、なかなか絶滅しないのも確かです。」とも言っている。(少し安心)

昨今、シラスウナギが激減しているそうだ。理由はよく分からないが、温暖化というステレオタイプな共鳴に安住したくないので、せめて、産卵に帰る銀ウナギ(海水の浸透圧に適応できる)だけは獲るまいと思う。

※1 渓流釣りの流れの中心部。

※2 水深の深いところと浅いところを、毎日行ったり、来たり移動すること。

※参照メルマガ NO.653、664、679、693 703 山からの便り・美山森林学校

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小林 直人(こばやし なおと)

1941年生まれ。同志社大学文学部卒業。京都府南丹市で林業を生業にする。美山森林学校校長。

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□寄せられた読者の声(抜粋)

No.713「他人事を自分事にするには」で募集した読者の声を抜粋してお伝えします。

小野様 正直、この問題に正解は無いし、無理に意志統一を図れば嘘になると思います。
環境問題同様、個々人が身近なところで出来ることからする以外ありません。それは、各々が己の思想とか利己心からではなく、「先祖が遺してくれたものを子孫に引き継ぐ責務」を果たすため、一つ一つ積み重ねることです。

H様 参加したいと思う人は増やすためには、以下の2点がポイントではないかと思いました。

(1)自分自身や自分の身近な人、大切な人の人生の質を上げるため、自分がその問題に取り組む必要性が高いこと
(2)フォーラム参加により「知恵」を得られる。自分が具体的な行動を起こし、現実をよい方向に変えるきっかけが得られるのではないかと期待できること…

(読者の声を頂戴した順)

全文はこちらから御覧ください → https://www.kosonippon.org/wp-manager/mail/comments.php?id=721
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*みなさんのご意見をお待ちしています。(800字以内でお願いします)
info@kosonippon.org
いただいたご意見はバックナンバーと共に「読者の声」として以下に掲載しています。メルマガにて抜粋掲載をさせていただくこともございます。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/mail/index.php

*不掲載をご希望の場合は必ずその旨を明記して下さい。氏名、肩書きは、特にご指示がなければそのまま掲載します。匿名、ハンドルネームをご希望の場合は必ず明記して下さい。なお、盗作、名誉毀損、人権侵害、差別的な記述などの投稿は禁止いたします。

☆これまでのメルマガはこちらからご覧いただけます。https://www.kosonippon.org/wp-manager/mail/index.php

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【2】(1)第215回J.I.フォーラム  8月20日(木)開催 19日から20日に変更になりました

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新国立競技場建設計画の白紙撤回は、「一度動き出したら止まらない」と言われる日本の大規模公共事業が計画半ばで止まり、ふりだしに戻った歴史的な瞬間でした。これは、市民の声が政治を動かしたという点で、大きな意味を持っています。しかし、デザインと建築費以外の問題は何も議論されないままです。

構想日本は、「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」のサポートをして、この問題について発言してきました。

再スタートした新国立競技場建設計画が、アスリートや市民にとって、さらに将来世代にとって、使い続けられるものになるために、何を本質的なこととして今考えないといけないのか。さらに多くの人々が、この問題を自分たち自身の事として考える材料を提供したいと思います。

当日は、建築をはじめさまざまな分野の専門家にお話を伺い、会場の参加者とも議論を交わして、「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」など継続的な活動をしている人たちに伝えたいと思います。どうぞご参加ください。

◯日 時:平成27年8月20日(木)18:30~20:30(開場18:00)

◯会 場:未定

◯登壇者:鈴木知幸(元2016年東京五輪招致推進担当課長)

松原隆一郎(社会経済学者)

森まゆみ(作家、神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会共同代表)調整中

森山高至(建築エコノミスト)

山嵜一也(建築家、ロンドン五輪馬術会場設計監理者)  (五十音順)

加藤秀樹(構想日本代表)

◯主  催:構想日本

◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

◯懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)
※ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。

※フォーラムへのご参加は8月19日(水)18:00まで info@kosonippon.org  にお願いします。

お申し込みはこちらから https://www.kosonippon.org/wp-manager/forum/index.php

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(2)《今週末の構想日本の活動》

8月1日、2日(土)  富津市事業仕分け

今年度の実施一覧はこちらからご覧いただけます→ https://www.kosonippon.org/wp-manager/blog/?page_id=145

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(3)「現場みらい塾」第2期 開催中、第3期 募集中

政策シンクタンクPHP総研と共同で昨年度スタートした「現場みらい塾」。

その特徴は、

1.地域経営の第一線で活躍している講師陣

2.最先端の政策や手法のトレンドを学びとる講義プログラム

3.自ら考え、取り組むことで体得する実践プログラム

受講生の満足度が高かったこともあり、今年度は第2期(5月~8月)、第3期(11月~2016年2月)を開講することとしました。

自治体職員を主な対象としていますが、それ以外の方も参加可能です。是非お申込みください。

第2期は 8月8日(土)が最終講義

『第3期』は次の通り  ※日程が変更になりました

第1回:11月22日(土)13時~18時半、23日(日)10時~16時
第2回:12月12日(土)10時~18時
第3回:2016年1月16日(土)10時~18時
第4回:2016年2月6日(土)13時~18時半、7日(日)10時~16時

※第3期日程は予定のため今後も変更の可能性があります。

その他詳細はこちら

http://research.php.co.jp/event/2015/05/16.php

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【特集】<国立競技場の建て替え問題>

(1)日本情報発信多言語ウェブサイト「nippon.com」に代表加藤の記事が掲載されています。

《国立競技場問題の本質》

2020年7月、東京オリンピックの開会式は近代オリンピックの歴史に残る画期的なものとなった。

神宮の森に囲まれ、真ん中に赤レンガ色のトラックがある11万m2の真っ青な芝生。

世界各地からの選手たちはその芝生の上で互いの参加を祝福し、健闘を誓いあった。

そこには外界を遮断するスタジアムの高い壁もなく、ましてや屋根もない。

真っ青な芝生の上での交歓には、世界からの観戦者が加わり、その様子が最新技術によるネット中継によって世界中で共有、体感された。

オリンピックの開会式が近未来デザインの巨大なスタジアムと過剰な演出の競い合いから解放されることの素晴らしさを世界が実感した瞬間だった。

続きはこちらから御覧ください →  http://www.nippon.com/ja/currents/d00188/

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今、指摘されている問題点を、あらためて見なおしてください。

上記以外に、1年前からお伝えしていた記事です。御覧ください。

「新国立競技場の建て替えは将来世代に誇れることなのか」2014年5月2日 YAHOO!ニュース

http://bylines.news.yahoo.co.jp/katohideki/20140502-00035003/

「国立競技場解体予算を徹底解体しよう。」2014年10月3日 YAHOO!ニュース

http://bylines.news.yahoo.co.jp/katohideki/20141003-00039651/

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(2)《 お知らせ 》

・新国立競技場 「国会請願プロジェクト」

「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」の「国会請願プロジェクト」

◎請願事項

1.建設費、維持費、工期、計画決定プロセスの疑惑、環境負荷等に問題があり、国民の95%が反対している進行中の新国立競技場計画を中止してください。

《こちらは、皆様の声で「白紙撤回」というかたちで実現しました。》

2.上記を実行した上で、簡素で使いやすいメインスタジアムの計画にすぐに取り掛かってください。
日本の信頼できる建築家たちは、2020東京オリンピック・パラリンピックまでに素晴らしいスタジアムを完成させるでしょう。

こちらはまだ未知数ですので、継続いたします。

http://2020-tokyo.sakura.ne.jp/cn16/pg201.html

詳細は上記を御覧ください。   *国会請願には自筆の署名が必要です。

・賛同署名募集のお知らせ

「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」は緊急声明の賛同署名を募っています。

1,000兆円の赤字を抱えるわが国で、震災被災者、原発避難者がいまだ20万人も故郷や家を失ってさまよっているこの国で、現行計画に突入すれば、亡国の事業といわざるを得ない。

都税による500億円の負担、都有地の供出、都営霞ヶ丘アパートの住民の追い出しも認めない。

私たちは、国民の代表機関である国会で、有識者会議の各委員を証人喚問し、国民全体の利益に関わるこの問題をどう判断したのか、論議がつくされることを望む。(一部抜粋)

ご賛同いただける方は、下記サイトでご署名ください。

◎チェンジ・オルグ【2,520億円の新国立競技場を許さない】(現在84,000人超)

https://www.change.org/ から 「巨額の建設費をかけない新国立競技場 」で検索してください。

■ 本日7月30日(木)国会内集会 第一次国会請願

「みんなに開かれた 真国立競技場に!!」

ネット署名、他 87,310筆の声を、内閣官房と文部科学省の代表に手渡した。

都営霞ヶ丘アパート他近隣住民や、10名以上の国会議員が超党派で参列、発言者らも時間を延長し熱い思いを訴えた。

とはいえ、「何を白紙にするのかが白紙」な状態で、何を止めたのかも不明。木の伐採もまだしている。

よって今後もこの問題は注視していく必要がある。皆様のより一層の関心を賜りたい。

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