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【No.729】「特ダネではないけれど(7) 美術館に例えてみると」

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J.I.メールニュース No.729 2015.10.29 発行

「特ダネではないけれど(7) 美術館に例えてみると」

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【1】<巻頭寄稿文>

「特ダネではないけれど(7) 美術館に例えてみると」

新聞記者     松浦 祐子

【2】<お知らせ>

(1) 第218回J.I.フォーラム  11月下旬 開催

「地方自立のカギ」

(2) 今後の構想日本の活動

(3)「現場みらい塾」 第3期 募集中

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【1】「特ダネではないけれど(7) 美術館に例えてみると」

新聞記者     松浦 祐子

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秋も深まり、国の2016年度予算編成も本格化する時期です。でも、財政に関して読者から寄せられる声は、「難しい」「分からない」というものが大半です。そもそも、「政府」や「財政」という言葉が出てくるだけで、読む気が失せてしまうのではないか、と思うようになりました。

というわけで今回は、「国立構想美術館」という架空の美術館の話をしたいと思います。

年間の予算は9600万円。
しかし,周辺の人口減少もあり、来館者数は減る一方で入館料収入は6000万円分(A)しかなく、残り(3600万円)は借金をして資金繰りをしのいでいます。そのうち2300万円は過去の借金の返済や利払い費として必ず支払わなければならず、借金で借金を返している状態です。美術館の運営には、年間7300万円(B)かかります。

なお、入館料は、大人料金に対して、子どもと高齢者が半額という設定になっています。
少なくとも毎年の運営費を入館料収入で賄えるようにする(基礎的財政収支がバランスする)には、B―A=1300万円の収支の改善が必要です。

1300万円もの経費を捻出するには、例えば、講演会の開催費(540万円)、警備費(500万円)を全てやめた上で、建物の老朽化や耐震化対策費(600万円)を半分にしなければなりません。

これらは人員解雇などを伴うため、職員たちからは反対の声が上がりました。
絵の売却も試みましたが、美術館の目玉の絵を売るわけにもいかず、人気のない絵を売っても大きな収入にはなりませんでした。このままでは美術館の閉鎖も考えざるを得ません。

そこで美術館を存続させるための方策を決めるため、国民投票を実施することになりました。
美術館から示された選択肢は、二つでした。

<1> 高齢者料金を、大人料金と同じ値段にする。
<2> 子ども、大人、高齢者の全ての入館料を一律引き上げる。

国民投票では、多くの高齢者が投票したこともあり<1>は否決され、<2>の全ての料金の値上げをすることになりました。

今の日本は、国立構想美術館と同じような状況です。
<2>の全ての料金の値上げというのは、「消費増税」にあたります。
特定の世代だけに負担を負わせるのではなく赤ちゃんから高齢者まで、みんなで一緒に負担しようというやり方です。

日本では嫌われ者の消費税ですが、世界を見渡せば少子高齢化に悩む先進国が、将来も安定した財源を確保するために編み出した料金方式(税制)です。
日本もまた、大人料金(所得税)だけに頼れない人口構成になっています。今後、入館者(人口)に占める大人世代(15~64歳)の割合は、2013年の62%から2060年には51%に減ると見込まれており、収入の先細りは明らかです。

大人料金の値上げで補うやり方も考えられますが、今でさえ大人料金は高齢者料金よりも高く設定されていて、負担感は相当なものです。さらに大幅に値上げをすると、高齢者との間に不公平感が高まり、「美術館に行く回数を減らそう(働いても大半を税金で徴収されるようになると、働く意欲を無くしてしまう)」ということになり、社会の活力を失いかねません。

一方で、高齢者(65歳以上)の割合は25%から40%に増えます。かつては高齢者に対して、長年、身を粉にして働いてきた慰労の気持ちを込めて、低額料金(年金所得に対する税の控除や医療、介護保険での負担軽減)にしても、経営に大きな影響はありませんでした。けれど、今は国にその余裕がなくなっています。現代では、働いても低賃金で生活が苦しいワーキングプアも多くいます。子どもの貧困も深刻で、支援が必要とされています。

10月9日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、社会保障改革の一つとして高齢者の負担を多くする案を提案しました。国立構想美術館のたとえで示した人口構造の変化や不公平な負担のあり方に対応するためです。

医療費の自己負担の上限額の引き上げを例に説明します。

現状では、例えば369万円の年収の人が1カ月に100万円分の外来治療を受けた場合、70歳未満の世代では5万8千円を支払う必要があります。一方70歳~74歳では1万2千円を支払うだけで済みます。年収1160万円以上では、25万4千円と4万4千円と差は大きくなります。75歳以上になるとさらに負担額は減る仕組みになっています。

改革案ではそれを、同じ年収ならば年齢にかかわらず、同じ負担をしてもらうように変えようと提案しています。決して、高齢者だけに重い負担を強いるものではありません。皆さんはどのように感じるでしょうか。

本来、国の予算編成や税制改正というものは、このように現状に合わなくなった構造を改善し、持続可能な経営へと変えていく役割を担うものです。特に団塊の世代が75歳以上となる2025年までに構造を変えておく必要があります。

今の日本では、少なからずの痛みを伴わざるを得ません。
だからこそ「この予算は、日本が持続していくための構造改革につながっているのか」、「世代間を通して、公平な負担になっているのか」といった観点からの国民による予算の冷静なチェックが不可欠なのです。

<注>
なお、国立構想美術館の総経費の額の単位を、万円から100億円に変えると、おおよそ、2015年度の日本の国家予算の額になります。(例:9600万円→96兆円)
講演会の開催費は「文教及び科学振興費」、警備費は「防衛費」、建物の老朽化や耐震化対策費は「公共事業費」という国の歳出(支出)にそれぞれ相当します。

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松浦 祐子 (まつうら ゆうこ)

1974年 神戸市生まれ。大学院修了後、1999年新聞社に入社。和歌山、高知での地方勤務、東京での雇用、介護分野、厚生労働省、財務省担当などを経て、現在は新潟で県政を担当。

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【2】(1)第218回J.I.フォーラム  11月下旬 開催

「地方自立のカギ」

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「地方の時代」「地方分権」「地方創生」・・・。

40年以上も同じことが言われていますが、「国のコントロールと地方の依存」という構図はほとんど変わらず、地方はどんどん元気を失っています。

しかし、よく見ると、地域の再生に向けた新しい動きも始まっています。民の立場でまちづくりを進めている地域のリーダーと、国に頼らず住民と一緒に考え、行動する首長たちに、現場の実体験、そこから見えてくる「ここがポイント」ということを大いに語って頂きます。

◯日 時:平成27年11月下旬  18:30~20:30(開場18:00)

◯会 場:未定

◯ゲスト:現在調整中

◯コーディネーター: 加藤 秀樹(構想日本代表)

◯定  員:160名

◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

◯懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)
※フォーラム終了後、ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。

※フォーラムへのご参加は info@kosonippon.org  にお願いします。

お申し込みはこちらから http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp/forum/index.php

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(2)《今後の構想日本の活動》

《行政関係》

11月 1日(日)  福岡県 大刀洗町住民協議会(3)

11月 8日(日)  千葉県 富津市「第6回富津市民委員会」

11月15日(日)  茨城県 行方市「第4回なめがた市民100人委員会」

11月18日(水)  千葉県 富津市「第5回富津市創生会議」

11月21日(土)  三重県 松阪市「文化センターのあり方市民討議会」

11月28日(土)  福岡県 大刀洗町住民協議会(4)

11月29日(日)  千葉県 富津市「第7回富津市民委員会」

今年度の実施一覧はこちらからご覧いただけます→ http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp/blog/?page_id=145

《その他》

2015年10月~隔週月曜日 京都大学経済学部 「公共経営論2」講義 (代表 加藤秀樹)

毎回ゲストを呼んでの講義です。
第1回(10/5)は「日本の政治の問題点について」 衆議院議員 河野 太郎氏。
第2回(10/19)は「地域の産業について」 京都信用金庫理事長 増田 寿幸氏、株式会社商工組合中央金庫執行役員 小林 利典氏 です。

2015年9月~毎週木曜日 法政大学 「NPO論II」講義 (総括ディレクター伊藤伸)

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(3)「現場みらい塾」 第3期 募集中

政策シンクタンクPHP総研と共同で昨年度スタートした「現場みらい塾」。

その特徴は、

1.地域経営の第一線で活躍している講師陣

2.最先端の政策や手法のトレンドを学びとる講義プログラム

3.自ら考え、取り組むことで体得する実践プログラム

昨年の第1期受講生の反響と要望の大きさを考え、今年度は第2期(5月~8月)に続き、第3期(11月~2016年2月)を開講することとしました。

自治体職員を主な対象としていますが、それ以外の方も参加可能です。是非お申込みください。

『第3期』は次の通り  ※日程が変更になりました

第1回:11月22日(日)13時~18時半、23日(月)10時~16時
第2回:12月12日(土)10時~18時
第3回:2016年1月16日(土)10時~18時
第4回:2016年2月6日(土)13時~18時半、7日(日)10時~16時

その他詳細はこちら

http://research.php.co.jp/event/2015/11/22.php

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