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【No.730】「山からの便り・美山森林学校(7)」|美山森林学校校長  小林 直人氏|

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J.I.メールニュース No.730 2015.11.05 発行

「山からの便り・美山森林学校(7)」

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【1】<巻頭寄稿文>

「山からの便り・美山森林学校(7)」

美山森林学校校長  小林 直人

【2】<お知らせ>

(1) 第218回J.I.フォーラム  11月25日 開催 決定

「地方自立のカギ」

(2) 今後の構想日本の活動

(3)「現場みらい塾」 第3期 募集中

【3】構想日本 2015年10月の主な 政策実現活動

【4】構想日本 2015年10月の主な 新聞・テレビ等メディア掲載

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【1】「山からの便り・美山森林学校(7)」

美山森林学校校長  小林 直人

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美山森林学校(1)にあるように、米本昌平「知政学のすすめ」と、高木仁三郎「今自然をどうみるか」の読書会をした。それらの内容についても、なぜ読もうとしたのか、どんな感想を持ったのか、などに簡単に触れているのだが、実はその他にも三回の読書会をしている。※

合計5回で終わった。

終わりにした直接のきっかけは、中沢新一の「緑の資本論」を選んだ事にある。

行きつけの本屋さんでは入荷と同時に売り切れたので入手出来なかった。

平積みされるほどのベストセラーとは思えないのだが、ファンが多いらしいのだ。その様な本を有竹棟梁が持ってきた。娘さんを煩わせて大阪の旭屋で買ってもらったのだと言う。

僕の読書会は2つの点で間違っていたと思うのだ。

第一。棟梁は「何故八角堂に来てくれるの?」という水上社長の質問に「楽しいもん」と答えたことがある。明解だった。
僕は、その明解さを「衒学」で壊しかねなかったのだ。

第二。「緑の資本論」は相反する項目を形容矛盾させるタイトルで僕の興味を引いた。
だが、ニューアカデミズムと注目された「チベットのモーツァルト」を読んで以来、よく分からない凝りを持ったまま今に至っている様な著者の本を選ばないほうがよい。

9・11テロの後一気に書いたというこの本は、世界が反イスラムの一色に染め上げられる流れに一石を投じたのかもしれないが、美山森林学校も黒田寿雄の「イスラームの構造」を四回目の読書会でとりあげている。

黒田の本はイスラームの研究書である。詳しすぎるけれど今でも折りに触れて読むことが多い。少しずつイスラームが分かるのだ。

中沢のファンが多い(様に思う)のは、よく分からないせいかも知れない。
「緑の資本論」は、宮沢賢治の「氷河鼠の毛皮」から始まる。人間が銃を手にして以来、動物との関係に圧倒的非対称をを生み出したというのだ。その通りだと思う。

イスラム世界と資本主義の世界も同様のアナロジーが成り立つという。それもその通りだと思う。

中沢は宗教学者としてオウム真理教に真面目に関心を寄せていたことがある。彼の著した「虹の階梯」や「雪片曲線論」が信者達によく読まれることがあったらしい。
メディアが猟奇的にオウム真理教を扱うことが増え、教団がカルト化を加速させる頃中沢は姿を消した様に思う。その態度を僕は卑怯だと断じるのだ。

人間は不可解な存在である。一時的であったにせよ、宗教学者として真正面に不可解に取り組んだのであれば、継続するべきだった。そうすればオウム真理教も進む方向が変わっていたかもしれない。シナイ山に登るモーゼの役割を押し付けるのは、傍観者の誹りを免れないけれど。

徒に時間を遡ることになるが、最初に取り上げた本は米本昌平の「地球環境問題とは何か」だった。(地球は温暖化しているという言説がまかり通っている。)氷河が後退するのも、台風が異常発生するのも、竜巻がゲリラ発生するのも、熱中症で搬送される人が多いのも、温暖化のせいとされている。

でも、地球は今、第四間氷期で氷河期に向かっているのだよ。寒暖の周期は10万年。空騒ぎではないのか。そう思っていたのである。

そのせいで、米本の本は素通りする如く通り抜けている。その結果、IPCCもCOPも、地球規模で予防対策を立てるのは老婆心の発露だが、地球規模で自然のことを考えるのは、それはそれでよい事だ、と評価したに過ぎない。
今読み返して、僕はいったい何を読んでいたのかと思うのだ。

地球環境問題は東西冷戦の終焉を契機に前景化したのだ。

大戦の反省から、世界システムはブレトンウッズ体制に再構築される。世銀やIMF等の金融システムに依存する体制である。戦争の当事者であった北の国々の復興に眼鼻がついた後は、かつての植民地であった発展途上国が対象になって行く。

世銀の構造調整借款やIMFの金融調整プログラムが途上国に緊縮財政を要請するようになると、途上国は財政破綻に直面せざるを得ない。
人口の20%を占めるに過ぎない北の国が、2/3ものエネルギーを消費する暮らし方は反省されなければならない。その上で、南北問題が抱える資源争奪戦を解消しなければならない。

リオで行われた地球サミットで、キューバのカストロ首相が喝采を浴びた演説が紹介されている。「世界が利用可能な富と技術のよりよい配分こそが、このような破壊から(環境破壊の構造化から)人間性を守るのに必要である」・・・一部抜粋。

当時、キューバはアメリカの援助など当てにしていなかった。

最後に高木仁三郎。
原発再稼働が進行しているが、それでいいのだろうか。2000年に62歳で志半ばで亡くなった彼は、それでいいと言うだろうか。

科学者として立ち、当初から原発の開発に関与しながら、システムの脆弱性を見抜いた時点で口に糊する大学の職を辞し、原子力資料情報室に活動を収斂させた。いわゆる原子力村から離れたのである。その時点で国と電力会社が潤沢に提供する金の流れから身を引いたのである。

千葉の鴨川に経てた小屋「かいつむり荘」でドラム缶で木炭を焼く試みをしたり、東京のマンシヨンで節電の実験をしたりしながら、都市住民の消費生活を吟味したりしている。
僕が選んだ「今自然をどうみるか」は、彼の書いた本のなかで一番難しい内容であった。

科学はもともと哲学である。

我々が包摂されている自然を如何に理解するか、その為に何処まで自然に肉薄出来たか、その姿勢はギリシャ時代からから変わっていない。
ただ、そこに発見した事の為に生命まで賭けたか否か、賭ける気があるか否か。現在の我々は、ガリレオやソクラテスに学ばなければならないのではないか。

彼の本は、そんな問いを投げかけるほど真剣な、西洋哲学史論であり科学史論であった。
生涯に60冊も原発告発の本を書いた。それにも関わらず平然と再稼働が進む日本は、倫理を忘れ去った国ではないか。

最後に一冊の優れた本から引用しておきたい。

「自分の正しさを雄弁に主張することのできる知性よりも、自分の愚かさを吟味できる知性のほうが、私は好きだ。」

「私はこの孝想をエマニュエル・レヴィナスとアルベール・カミュとカール・ポパーと小田嶋隆から学んだ」   ためらいの倫理学・内田樹。

不確定の闇から這い上がって来る出世作に強い磁場がある。 (敬称略)

※森林学校(1) http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp/mail/detail.php?id=659

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小林 直人(こばやし なおと)

1941年生まれ。同志社大学文学部卒業。京都府南丹市で林業を生業にする。美山森林学校校長。

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【2】(1)第218回J.I.フォーラム  11月25日 開催 決定

「地方自立のカギ」

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「地方の時代」「地方分権」「地方創生」・・・。

40年以上も同じことが言われていますが、「国のコントロールと地方の依存」という構図はほとんど変わらず、地方はどんどん元気を失っています。

しかし、よく見ると、地域の再生に向けた新しい動きも始まっています。民の立場でまちづくりを進めている地域のリーダーと、国に頼らず住民と一緒に考え、行動する首長たちに、現場の実体験、そこから見えてくる「ここがポイント」ということを大いに語って頂きます。

◯日 時:平成27年11月25日(水)  18:30~20:30(開場18:00)

◯会 場:アルカディア市ヶ谷  5F 穂高・西   ※場所がいつもと違います

千代田区九段北4-2-25  TEL.03-3261

◯ゲスト:門 康彦 (淡路市長)

後藤 健市 (株式会社プロットアジアアンドパシフィック)

山中 光茂 (前松阪市長)     他

◯コーディネーター:加藤 秀樹(構想日本代表)

◯定  員:120名

◯参加費:一般 2,000円 / 学生 500円 (構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

◯懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)
※フォーラム終了後、ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。

「TO THE HERBS(トゥザハーブズ)市ヶ谷店」
千代田区五番町2(JR市ヶ谷駅2F) TEL.050-5787-1164

※フォーラムへのご参加は11月24日(火)18:00まで info@kosonippon.org にお願いします。

お申し込みはこちらから http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp/forum/index.php

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(2)《今後の構想日本の活動》

《行政関係》

11月 8日(日)  千葉県 富津市「第6回富津市民委員会」

11月15日(日)  茨城県 行方市「第4回なめがた市民100人委員会」

11月28日(土)  福岡県 大刀洗町住民協議会(4)

今年度の実施一覧はこちらからご覧いただけます→ http://www.kosonippon.org/cp-bin/wp/blog/?page_id=145

《その他》

2015年10月~隔週月曜日 京都大学経済学部 「公共経営論2」講義 (代表 加藤秀樹)

毎回ゲストを呼んでの講義です。
第1回(10/5)は「日本の政治の問題点について」 衆議院議員 河野 太郎氏。
第2回(10/19)は「地域の産業について」 京都信用金庫理事長 増田 寿幸氏、株式会社商工組合中央金庫執行役員 小林 利典氏 でした。

2015年9月~毎週木曜日 法政大学 「NPO論II」講義 (総括ディレクター伊藤伸)

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(3)「現場みらい塾」 第3期 募集中

政策シンクタンクPHP総研と共同で昨年度スタートした「現場みらい塾」。

その特徴は、

1.地域経営の第一線で活躍している講師陣

2.最先端の政策や手法のトレンドを学びとる講義プログラム

3.自ら考え、取り組むことで体得する実践プログラム

昨年の第1期受講生の反響と要望の大きさを考え、今年度は第2期(5月~8月)に続き、第3期(11月~2016年2月)を開講することとしました。

自治体職員を主な対象としていますが、それ以外の方も参加可能です。是非お申込みください。

『第3期』は次の通り  ※日程が変更になりました

第1回:11月22日(日)13時~18時半、23日(月)10時~16時
第2回:12月12日(土)10時~18時
第3回:2016年1月16日(土)10時~18時
第4回:2016年2月6日(土)13時~18時半、7日(日)10時~16時

その他詳細はこちら

http://research.php.co.jp/event/2015/11/22.php

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【3】構想日本 2015年10月の主な 政策実現活動

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事業仕分け、地方版事業レビュー、地方創生に関する戦略づくりなど長期的に行政を市民、住民目線にし、改革をしていくという意味で、構想日本にとっては重要な政策実現業務です。

10月は多くの自治体でこれらの業務が集中する時期で、構想日本の主なスタッフは週末毎に各地に飛んでいました。

10月3、4日 加古川市「公開事業評価」

10月4日 三原市「事業レビュー」

10月5、6日 淡路市「職員研修会」

10月10日 行方市「第2回なめがた市民100人委員会」

10月13日 三木町「第4回まんで願いきいきタウン構想策定委員会」

10月14日 富津市「第4回富津市創生会議」

10月16日 富津市「第5回富津市民委員会」

10月18日 大刀洗町「第2回大刀洗町住民協議会」

10月19日 三木町「第4回総合戦略策定委員会」

10月19日 松阪市 「公共・公用施設施設最適管理検討委員会」

10月20日 松阪市 「松阪市営住宅あり方検討委員会」

10月25日 行方市「第3回なめがた市民100人委員会」

10月27日 高松市「公共施設再編計画検討委員会」

※その他、首長や自治体との打ち合わせ等 10件

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【4】構想日本 2015年10月の主な 新聞・テレビ等メディア掲載

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10月1日 三原市事業を市民ら評価 4日に「レビュー」 中国新聞 朝刊

10月3日 道路公団民営化10年 改革理念 かすむ道筋 西日本新聞夕刊

10月4日 公開事業評価、6件「要改善」 兵庫県 加古川市 朝日新聞

10月15日<巻頭言>「自分事化」による財政再建~現場の視点から~ 伊藤 伸 (一社)構想日本 総括ディレクター 「ファイナンス」平成27年10月号

10月17日 社説=ふるさと“住民票” -移住へ導く検討材料に 静岡新聞 朝刊

10月20日「子育て支援」「健康寿命延伸」 香川県 三木町総合戦略、方向性固める 朝日新聞 朝刊

10月30日 三木の未来像 住民が描く/雇用、子育て 町総合戦略 最終案まとまる 読売新聞 朝刊

他9件

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