【No.801】「今こそローカリズム・日本の祭シリーズ 第二十三弾 蛭川の杵振り祭 」 |至学館大学・伊達コミュニケーション研究所長  石田 芳弘氏|
2017.03.30

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J.I.メールニュース No.801 2017.03.30 発行

「今こそローカリズム・日本の祭シリーズ 第二十三弾 蛭川の杵振り祭 」

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【1】<巻頭寄稿文>

「今こそローカリズム・日本の祭シリーズ 第二十三弾 蛭川の杵振り祭 」

至学館大学・伊達コミュニケーション研究所長  石田 芳弘

【2】<アーカイブ(過去の寄稿文)>

3.11のあと、メディアは何を伝えたか?

今も、そしてこれからも考える報道のあり方

J.I.メールニュースNo.505 2011.06.02発行

欠かせない愚直で真摯な報道姿勢

朝日新聞東京本社 編集局生活グループ記者 高橋 美佐子

【3】<ご紹介>

熊本の震災からもうすぐ1年

「つながろう熊本 ーくまもともっとー」

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【1】 「今こそローカリズム・日本の祭シリーズ 第二十三弾 蛭川の杵振り祭 」

至学館大学・伊達コミュニケーション研究所長  石田 芳弘

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蛭川村は平成の合併で中津川市となったが、山と川に囲まれた美しい山里だ。同時に中津川市は、島崎藤村「夜明け前」の舞台となった信州馬籠を含む山口地区を長野県から岐阜県へ越境合併し名を馳せた。

夜明け前の主人公、馬籠宿庄屋青山半蔵は平田篤胤の国学に心酔し王政復古を夢見る。そういう土地柄でもあり、この地は南朝の足跡や、明治期の廃仏毀釈の影響が色濃く残っている。そういった風土の中に安弘見(あびろみ)神社の杵振り祭はある。

蛭川と私との縁について少々述べる。ヒトツバタゴという5月中頃に咲く花がある。あわ雪を置いたように真っ白な花で覆われる美しい樹木で、蛭川と犬山がその名所だった。木曽川水系にしか自生しないと言われ、当時の林蛭川村長と私とで主導し、ヒトツバタ・サミットを企画した。地元犬山祭で使う草鞋を作ってくれる鷲見(すみ)米二さんは、樵のような猟師のような生活をするこの地の古老である。

4月の祭の日、犬山祭の関係者数人で鷲見さん宅にお邪魔した。煤けた作業場に囲炉裏が切ってあり、燠(おき)がくすぶるセピア色の空間だった。タケノコ、ワラビを前菜に、大量の猪肉を焼き、自家製の濁酒(どぶろく)を飲み、この土地の由来と風習を聞いた。

どこの祭でもそうだが、半日やそこらで全貌を見ることはとてもできない。祭のすそ野は広く、こういった祭礼以外の場で土地の人の歓待を受けるのも祭の一部に違いない。祭を行う地元の人が自宅を開放し、誰かれなくよそ者を飲食でもてなし歓待する事が、祭に内在する浪費の快楽でもある。都会の祭にはそう言った風潮がだんだん薄くなり、金を払って商品を買うだけになるのは祭の多様性を見逃す。

濁酒の酔いが回り陶然としながら、小降りの春雨に湿った祭囃子の太鼓に引っ張られるように安弘見神社へ出かけた。神社前の広場で一団の子供たちが囃子に合わせ杵振り踊りを踊っていた。装束がとても面白い。

頭に鮮やかな赤・青・黄の紙製のデフォルメされた臼をかぶり、手には杵を持つ。なんだか前衛芸術のような斬新なデザインと踊りにすら見えた。次に子供たちに代わって厄歳を迎えた男子(と聞いた)が天狗、おかめ、ひょっとこ、蠅追いなどを踊りながら見物人をかき分け本殿への長い階段を上っていく。祭囃子は登りと降りの2種類ある。そろそろ広場と本殿への階段は人で埋まる。

クライマックスは花馬の登場で達する。神が馬に乗って登場する祭は多々ある。馬が本殿への階段を上がる時、背負った花を見物客が取り合う。馬にも神が乗り移るかもしれないが、揉みくちゃにされる馬にしてみたらこれは手荒い神事だという気がした。

東濃の山々が春の息吹を生じるこの季節、長閑な郷の祭であった。

※ 中津川市 http://www.city.nakatsugawa.gifu.jp/

※ 杵振り祭 http://www.city.nakatsugawa.gifu.jp/branch/hirukawa/cat1/cat_14.html  平成29年4月16日(日)に開催

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石田 芳弘(いしだ よしひろ)

愛知県議会議員、犬山市長、衆議院議員など、地方、中央の政治と行政を経験。特に教育、文化行政に力を入れた。「まちは生涯学習の最良の教室である」というのが持論であり、学校教育も生涯学習の一環であると考え、市民が教師の総合学習や全市博物館構想を推進。また、シンクタンクの研究員として先進国の地方議会を視察、研究。我が国地方議会も議院内閣制を導入すべしという、地方議会改革論議のオピニオンリーダーである。

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【2】<アーカイブ(過去の寄稿文)>

J.I.メールニュースNo.505 2011.06.02発行

欠かせない愚直で真摯な報道姿勢

朝日新聞東京本社 編集局生活グループ記者 高橋 美佐子

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東日本大震災の発生後2週間目に、新聞紙面の2面半分を埋め尽くしていたのは「身元不明遺体情報」だった。

例えば「▽10代女性=交番裏で発見。学生服、大船渡高校 ii-4のバッジ」、あるいは「▽70代女性=海上で発見。『ヨコオ』と記載の肌着、やせ形」など。

延々に続く手がかりを目で追いながら、説明のつかない涙がこみ上げ、活字がぼやけて読めなくなった。

東日本大震災発生1カ月後、私は岩手県大船渡市と陸前高田市に3日間、取材に訪れた。この地域で2軒に1軒が購読する地元紙「東海新報」の奮闘を伝える記事を全国版で書くためだ。

震災翌日から自家発電で発行し続ける過去の紙面に目を通しながら、非常事態下で人はどんな情報を心から欲するかや、その伝達方法について深く考えさせられた。

全国紙記者である私は大震災以降、東京・築地の本社に缶詰になった。ライフラインの復旧状況や、被災者の生活全般に有益な「お役立ち情報」に丸1ページを割く「支援通信」面キャップを任された。

私のライフワークは長寿高齢化が進む日本で今後、誰もが直面する「排泄トラブル」だ。

阪神大震災以降、断水した避難所のトイレの課題は数多くの研究がなされており、よりましな使用方法をイラスト入りで記事にしていた。

そんな自分が現場に降り立った瞬間、平衡感覚を失った。津波が襲った陸前高田の海辺一帯は何もかもが巨大な力に押し流され、かろうじて残った建物の鉄骨にたなびく衣服のハギレが痛々しい。大船渡中心地の家々の瓦礫は、ひん曲がった交通標識などすべて巻き込んで果てしなく連なる。絨毯爆撃を受けた遠い国の戦場に紛れ込んだような感覚に陥った。

家を流された人は車も失っていた。移動手段を完全に奪われた上、電話回線も遮断している。つまり行方不明の家族が安置されているかもしれない所へ簡単に出向けないうえ、そこの名簿の中身を第三者に教えてもらうのも困難ということだ。だから、地元紙は大きなスペースを割いて身元不明遺体情報を載せ始める。そして社員が避難所に無料で配りに行くのだ。もう13日目というのに。

震災当日、東京の幹線道路は深夜まで大渋滞し、大量の帰宅困難者が車道まであふれた。

誰もが真っ先に家族や大切な人たちの安否を確認した。それが自宅へ歩き出すか、その場にとどまるかの判断材料になった。

復旧復興が進まない被災地の今を、それ以外の場所で暮らす人々が、どうすればリアルに感じて行動につなげられるか。そこには「身近な命」を想起させる、愚直で真摯な報道姿勢が、震災発生後50日以上たった今も欠かせない気がしている。

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【3】<ご紹介>

構想日本が応援している活動に関するお知らせです。

「つながろう熊本 ーくまもともっとー」

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熊本・大分を中心に起きた熊本地震から、もうすぐ1年が経ちます。

その1年という節目に、改めて熊本に触れ、共に考えつながり、これまでご支援いただいた皆様に「ありがとう」を伝えるイベント「つながろう熊本 ―くまもともっと―」を13日~19日の1週間、無印良品全面協力のもと開催します。

期間中は、イベントスペースにて写真・資料の展示があります。

また、15、16日は店舗前スペースにて、熊本の特産品の販売、キッチンカーによる熊本の郷土料理やお酒の提供、子供が主役のお絵かきゲームなどのイベントがあります。
イベントスペースでは、熊本地震に学ぶトークイベントや親子で参加できる様々なワークショップ、熊本出身落語家による寄席などを行ないます。

皆様のご来場を心よりお待ちしております。

◯テーマ 「人・食・震災」を「つなげる」

◯日時 2017年4月13日(木)~19日(水) 10時~21時

※15日(土)、16日(日)はワークショップなど各種イベントを開催します。

◯場所 MUJI有楽町店 1階入口 店舗前スペース・3階イベントスペ-ス

◯参加費  無料(一部のワークショップでは参加費がかかるものもあります)

◯協力 無印良品

◯主催 一般社団法人がんばるけん熊本機構

※イベントの詳細は、後日ご案内します。

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