【No.93】「非営利法人」の設立が自由にできる制度改革を!
2003.04.25

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「非営利法人」の設立が自由にできる制度改革を!
JIメールニュースNo.93  2003.4.25
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■■ 目次 ■■
1.《NPO、公益法人改革》「非営利法人」の設立が自由にできる制度改
革を!
2.《3月24日第69回「JIフォーラム」の報告》

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1.《NPO、公益法人改革 》「非営利法人」の設立が自由にできる制度改
革を!
政府が検討作業を進めている「公益法人制度の抜本的改革」。当初予
定されていた2003年3月の閣議決定は、内閣府が示した「政府案」に対
し、 NPO法人や公益法人などから反対の声があがったため、4月以降に
もち越しとなりました。
構想日本は設立当初より、「官」=行政が「公益=世の中の役に立つ
こと」を一元的に決める現在の「公益国家独占主義」の仕組みを、
「民」=「世の中」を構成する人達の判断を取り入れる仕組みに変える
こと(民法34条の改正など)を提言してきました。
また、この1月から、政府の検討状況を非営利分野で活動する多くの
方々にお伝えするため、NPO法人や公益法人のみなさんと共に「連絡係
“info-net”」を発足させました。現在、新しい制度の枠組みや政府の動
きなどを「info-netニュース」として随時、発信しています。詳しくは、
以下をご覧下さい。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/prj/c/?no=08
今回は、政府の改革方針の長所・短所などのおさらいとともに、info-net
事務局・構想日本の考えを含めた第4回目の「info-netニュース」をお伝
えします。

〓〓〓〓〓〓 《 第4回 info-net ニュース 》〓〓〓〓〓〓
政府(内閣府)案は大きな前進
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法人は、大きく (1)営利=会社 と(2)非営利 に分けることができ
ます。
会社は「登記」だけで自由に作ることができます。
一方、非営利は、「公益性」のレベルに応じ、中間法人、NPO法人、
公益法人(財団・社団など)に分けられ、設立の手続きも「登記」→
「認証」→「許可」と厳しくなります(下図参照) 。また、法人の種
類に応じ税の優遇も決まっているため、「KSD事件」のように、いった
ん設立された公益法人が、「無益」あるいは「私益」法人化しても、優
遇は続いてしまうのです。ここに一貫しているのは、「公益」(=世の
中の役に立つ)かどうかは官が決め、その「お墨付き」を官から与えら
れた法人だけが税の優遇を受けるという考えです。
さて、今回の政府案(内閣府行政改革推進事務局作成) は、「非営
利法人」を「登記」により自由に設立できるとした点では大変画期的な
ものです。 “第1段階”の法人設立に官が口を出す余地をなくし、自
由に非営利法人をつくれることにしたからです。次の問題は、“第2段
階”の優遇措置が官の判断だけで決まってしまうことです。

<現在の制度>
法 人    設 立   「公 益」    税の優遇
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営利法人=会社  登 記    な い      な い
非営利法人*:
・中間法人   登 記    な い      な い
・NPO法人    認 証  小        小
・公益法人**   許 可     大        大

<政府(内閣府作成)による改革案>
法 人   設 立    「公 益」      税の優遇
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
非営利法人  登 記  設立時に判断しない  設立後別途判断する
* 「非営利」法人の改革(NPO法<1998年>、中間法人法<2001年>の成
立)において、将来、民法改正による「非営利にかかわる一般法」の成
立が望ましいことは、国会でも一貫して議論されてきました。
** 民法34条参照

政府税調案は、官が判断する「しくみ」を変えるべき
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公益法人制度改革では、NPO法人や公益法人に対する税制などの優遇
のしくみについても、見直しが進められています。現在、NPO法人には
「小さい」、公益法人には「大きい」優遇措置があります。仮にNPO法
人が公益法人以上に世の中に役に立つ活動をしても、「官」の決めたNP
O法人と公益法人の「序列」は変わらず、活動に応じた優遇は認められ
ません。
政府案(内閣府作成)は、「法人の種類」ではなく活動に応じた優遇
の「しくみ」にするため、 “第1段階”として、法人の設立と税の優遇
を切り離し(前頁参照)、 “第2段階”として、「第三者機関」などが
「社会貢献性」を認めたものに対して税の優遇を与えることを提案して
います。この点も、政府案(内閣府作成)は評価できます。
ところが、税のしくみを検討する「政府税制調査会」が、“第2段階
“として、官が優遇を「認める」しくみ を残そうとしているならば、
これは問題です***。
以上のような状況に対して、「原則課税か原則非課税か」の議論に端
を発し、政府案自体に対する批判がある、と報じられています。
しかし、政府案(内閣府作成)と税制調査会の考えを一体として拒み、
改革を後退させることは得策ではありません。政府案(内閣府作成)の
画期的な部分は「成果」として確保したうえで、税制上の優遇措置はさ
らに要求していくという姿勢が重要だと思います 。
「非営利法人を自由に設立する」ことこそが、現在の制度の根幹を改
革することであり(第1段階)、 さらに税の優遇を「行政」が「認め
る」しくみを変えることは、より大きな自由度と優遇を非営利活動全体
が獲得すること( 第2段階)だと、 info-net事務局・構想日本は考え
ます。
***現在の制度、「政府税制調査会」案などの内容をわかりやすい図解
付きで以下に掲載していますので、ご覧ください。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=186
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NPO・公益法人制度改革 info-net
伊藤 道雄 (国際協力NGOセンター 常務理事)
伊藤 裕夫 (静岡文化芸術大学 教授)
入山  映 (笹川平和財団 理事長)
太田 達男 (財団法人 公益法人協会 理事長)
加藤 秀樹 (構想日本 代表)
川淵 三郎 (財団法人 日本サッカー協会 キャプテン)
三枝 成彰 (エンジン01文化戦略会議 幹事長)
関  幸子 ((株)まちづくり三鷹 事業部プロジェクトマネジ
ャー)
野村万之丞 (総合芸術家)
堀田  力 (財団法人 さわやか福祉財団 理事長)
森田  朗 (東京大学法学部 教授)
山内 直人 (大阪大学大学院 教授)
山岡 義典 (日本NPOセンター 常務理事)
山岸 秀雄 (NPOサポートセンター 理事長)
山野目章夫 (早稲田大学法学部 教授)
吉村 作治 (早稲田大学人間科学部 教授)
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info-net 事務局: 構想日本 西田/長尾/志田
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そして、その実現のためのキャンペーン活動などを行っています。
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2.《3月24日第69回「JIフォーラム」の報告》
「納豆」「甘酒」ともに江戸時代から親しんできた日本人の「食」。
これらには、先人の大変な知恵が潜んでいます。たとえば納豆汁「江戸
時代の庶民は肉類を食べられなかったから、納豆を味噌汁に入れて食べ
た。『畑の牛肉』である大豆の蛋白質と牛のそれはほぼ同じ。だから、
味噌汁は『畑の牛肉』が入った肉汁。これに豆腐が加われば、”大豆3
兄弟がお椀の中で揃い踏み”で、3食食べれば、摂取できる蛋白質は約
80グラムのステーキを食べたのと同じ。」(東京農業大学の小泉武夫
教授)
「江戸時代の人々にとって食べ物は『薬』。食べ物が体を通って排泄さ
れるというプロセスの中で、人間が生きていく、いい状態が保てる。そ
れに失敗すると自分をだめにしてしまう。現代のように、おいしそうだ
から、珍しいからたくさん食べるとか、逆にダイエットのために食べな
いということはほとんどなかった。」法政大学の田中優子教授は、
「食」は自分の体をつくっていくものといった日常生活の価値観が、現
代は失われてしまったのではないかと警鐘を鳴らします。
3代目から納豆をつくっている天野屋の5代目会長天野彌一氏は、
「自分のところで使う豆は、北海道でも大粒の豆。大粒は一粒づつかん
で食べると味があるのだが、今は、余りかまないですむという理由から
小粒がはやり。そこで、小粒をつくってみたが、来店客には不評。だか
ら、今まで通り大粒だけをつくっている」と、伝統の味のすばらしさを
披露します。
小泉教授によると、韓国で若者の「食」を調査したら、この20年間、
伝統的な発酵食品「キムチ」の消費量は全然、変わらなかったのに対
し、日本の若者について味噌汁を飲む機会が1日1回あるかなどを調
べてみたら、まさしく「食」の保守性が失われていたそうです。
私たちは今一度、食生活の原点である「食」=「薬」に立ち戻り、失
われつつある「日本型食事」のすばらしさをもう一度、見直すべきでは
ないでしょうか。
<討論者>
天野 彌一(江戸時代開業 天野屋5代目会長)
小泉 武夫(東京農業大学応用生物科学部 教授)
田中 優子(法政大学社会学部 教授、兼コーディネーター)
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