【No.99】核燃料サイクルの再検証を
2003.06.06

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核燃料サイクルの再検証を
JIメールニュースNo.99  2003.6.6
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■■ 目次 ■■
1.《日本の未来》核燃料サイクルの再検証を

2.《J.I. Action Summary》
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1.《日本の未来》核燃料サイクルの再検証を
構想日本 エネルギー戦略会議

“季節が暑くなれば、電力不足が起きるのではないか” 電力消費
が著しく増えた時に停電が起きないようにと、経済産業省も節電
キャンペーンをはじめています。首都圏電力の4割以上を供給して
いる原子力発電所のほとんどが、安全点検のために停止しているこ
とが理由です。
この安全点検は、2002年秋に明らかになった東京電力の原子力施
設の自主点検記録に不正のあったことなどがきっかけです。もっと
も、国民の不信感は、電力業界に対してだけではなく、原子力行政
に対しても向けられています。
「原子力」は、エネルギー政策のなかでどのように位置づけられ
てきたのでしょうか? エネルギー政策は、安定供給、環境への適
合、市場原理の3要素をバランスよく考えることが不可欠であり、
状況に応じた柔軟さが求められています。
なかでも特に「核燃料サイクル計画」は、数兆円規模で国民に大
きな影響を及ぼすものであるため、構想日本エネルギー戦略会議で
は、核燃料サイクル計画を経済合理性の観点も含め、再検証する場
を設け、議論をする必要があると考えています。

● 「国策民営」という現実
「核燃料サイクル」というコトバをお聞きになったことがあると
思います。一見すると、原子力発電に必要となる核燃料を「繰り返
し」使うこと(リサイクル)を意味するようにも見えます。正確に
は、核燃料サイクルとは、ウランなどを核燃料として原子炉で使用
したあと原子炉から取り出し、再処理、再加工して再び原子炉で使
用し、再利用することのできない残りの部分を廃棄物として処理処
分するまでの一連の循環(サイクル)を意味します。
この核燃料サイクル計画は、原子力委員会の決定「原子力開発利
用長期計画」(1961年2月8日)から始まり、いわば「国策」とし
てすすめられてきました。この40年のあいだ方針に変更はありませ
ん。
この「国策」に基づき、電力10社の出資する日本原燃株式会社
の再処理工場が青森県に建設され、ほぼ完成しています。これが、
「六ヶ所村再処理工場」です。使用済燃料を再処理・再加工し、原
子力発電所で利用すること(プルサーマル)も、2010年までに16~
18基で行うことが予定されています。

● 計画の見直しを阻む「持たれ合い」
核燃料サイクルは当初の計画通りに進んでいるわけでは決してあ
りません。たとえば、六ヶ所村の再処理工場の建設費は膨大にふく
れあがっています(予定8000億円→2兆1400億円)。また、その処
理能力も年間800tU とされていますが、全国の使用済核燃料発生量
である年間1000tUには間に合いません。簡単な計算で、年間200tU
の行き場のない使用済核燃料が発生することが予想されます。さら
に、上記のように計画で予定されているいプルサーマルも、見通し
がたっていません。
このように、当初の計画と実際との違いが大きいことは、計画そ
のものに無理があったからだと思われます。それにもかかわらず、
計画の見直しが行われないのはなぜでしょうか? 「国策民営」と
いう「持たれあい」構造が、責任の所在を見えなくしており、計画
の見直しの場を設定することをも難しくしているのです。

● 政策転換を視野に入れた再検証を

六ヶ所村再処理工場は2005年6月に本格運転を予定しています。
今年の秋頃にはウラン試験を開始し、その後、使用済核燃料を利用
した総合試験が予定されています。
注意が必要なのは、これらの試験を経ると、工場が汚染されると
いう事実です。一旦試験が開始されれば、汚染された施設として扱
う必要があり、工場の解体費用などが膨大になることが予想されま
す。それにもかかわらず、これらの費用は確定していません。これ
らの費用が経済的に見合うものかどうかの検証が必要でしょう。
しかも、核燃料サイクル計画は「国策」としてすすめられてきた
ものであり、「民営」を理由に、国の説明責任と結果責任を回避す
ることはできません。経済合理性の観点も含めたうえで、核燃料サ
イクル計画を再検証する場を設定し、政策の転換を視野に入れた議
論をすることが最も必要です。
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2.《J.I. Action Summary》
■構想日本の5月の主な活動状況■
(1)国と地方(税財政改革)
本当の「三位一体」改革を実現するための提言を発表(8つの自治体で
の事業チェック結果をベースに制度を設計)-5/9@都道府県会館
・本質的な議論を起こすためのキャンペーンを展開中
https://www.kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=187
提言の核心である「国のコントロール(基準や規制など)」の廃止を具
体的に進める方策を検討

長野県での事業チェック作業の結果をもとに、ディスカッションを実施
-5/14@長野県議会棟講堂
・住民、ジャーナリスト、研究者、自治体職員など約200名が傍聴
https://www.kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=188
(2)公益法人
民法34条改正を含む、「非営利法人制度」の抜本的な改革に向けたキ
ャンペーン
・「寄付免税」に関するホームページを開設(エンジン01文化戦略
会議と連携)
https://www.kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=189
(3)エネルギー戦略
「核燃料サイクル政策」の見直しに関する提言づくり
・研究者、アナリストなどの専門家と検討中
(4)公教育
多様な教育を可能にするための制度づくり
・教育の「現場」に近いところへ、お金と権限(教職員の人事権な
ど)を移すことが柱
上記のほか、「政治資金制度」、「年金制度」、「医療制度」などの政
策プロジェクトが進行中。詳しくは、 https://www.kosonippon.org/wp-manager まで。

(文責:政策担当ディレクター 冨永朋義)
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