【No.994】スウェーデンのコロナ対策(1)―ロックダウンしなかった理由  |日本総合研究所理事長 翁百合氏|
2021.01.28

【No.994】スウェーデンのコロナ対策(1)―ロックダウンしなかった理由 日本総合研究所理事長 翁百合氏

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構想日本メールマガジン【No.994】 2021.1.28 発行

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<目次>

【1】お知らせ

「ツルツル世界とザラザラ世界 世界二制度のすすめ」  加藤 秀樹(著)発売中

【2】ご紹介

(1) 日本の現状を国際社会に訴えている「藤田早苗さんの講演会」オンライン、東京など

(2)~クラウドファンディングのおしらせ~「自分ごと化会議in松江」第2期
全国初!住民による住民のための無作為抽出の住民協議会

【3】巻末寄稿文

スウェーデンのコロナ対策(1)―ロックダウンしなかった理由

日本総合研究所理事長 翁百合

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【1】お知らせ

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☆京都大学前総長 山極寿一氏 推薦文☆

「新型コロナウィルスによるパンデミックで立ち止まった時、見えてきたのはこれまで歩んできたグローバリズムと科学技術偏重社会のゆがんだ姿だった。
このままでは経済が回らなくなり金融危機に陥って世界も人間も崩壊する。これまで『構想日本』を主宰し、日本の政策に鋭く切り込んできた著者は処方箋として『ツルツル世界』と『ザラザラ世界』の二制度を提案する。
それは『生き物としての人間』を中心に据えた新しい国の在り方だった。」

「ツルツル世界とザラザラ世界 世界二制度のすすめ」  加藤 秀樹(著)発売中

構想日本の理念を集大成し、コロナ後の世界を展望する渾身の一冊。アマゾンにてご購入いただけます。
ペーパーバックとKindle版(電子書籍)がありますので、お選びください。

これからの生き方を模索している人、政治や経済の将来を考えたい人、地域を元気にしていきたい人などに是非、読んでいただきたいです。

<書籍情報>

書名:「ツルツル世界とザラザラ世界・世界二制度のすすめ」
著者: 加藤秀樹
発行者: 株式会社スピーディ(Speedy,Inc)
定価(税込):〈ペーパーバック(書籍)2,530円/〈Kindle〉1,250円〉

Amazon書籍販売ページ(ペーパーバック版):https://www.amazon.co.jp/dp/B08PX7K296/
Amazon書籍販売ページ(Kindle版):https://www.amazon.co.jp/dp/B08PL2VS1G/

まだご覧になっていらっしゃらない方へ、目次を少しだけご紹介します。

<目次>

第1章 世界二制度のすすめ〈世界のしくみを考える〉
第2章 「福祉国家×民主主義×経済成長」のトリレンマ〈国のしくみを考える〉
第3章 福祉国家の原点へ
第4章 多様な民主主義の始まり
第5章 私たちは生きているか

<本書の趣旨・概略> 加藤 秀樹

本書は、構想日本の20年に及ぶ、活動とその核となる理念をまとめたものです。
格差や貧困から民主主義の危機、地球温暖化にいたるまで様々な現代社会の弊害を貫く原因を整理し、これからの「世界の仕組み」「日本の仕組み」「私たちの生き方」のデッサンを具体的な事例を交えて示しています。
構想日本では活動開始以来、一貫して「低コスト高満足」社会を掲げてきました。それは、脱「お金で評価する社会」です。

“「生き物としての人間」復活”への一歩でもあります。その歩みを進めるために、私は「世界二制度」という仕組みを考えてみました。
私たちがこれから考えないといけない社会の方向性や、現場での活動の過程で見られた地域や住民の変化、課題解決に生かせる知恵の様々な例を本書で紹介します。

構想日本HP → https://www.kosonippon.org/wp-manager/book20201207/

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【2】ご紹介

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(1)「藤田早苗さん講演会」オンライン、東京

これまで秘密保護法や共謀罪、日本の表現の自由の現状を国際社会に伝えてきた藤田早苗さん。その藤田さん(国際人権基準の研究者)が昨年一時帰国、全国各地で講演を行っています。

詳細はこちら→ https://hyogen-tsutaeru.jimdo.com/

○緊急オンライン学習会(Zoom開催)

「国際人権の専門家が見た イギリスのロックダウンと日本の対応」

日時:2021年2月8日(月) 18:30~20:30

参加費:1000円(学生無料)

Zoom(Peatixかメールで事前申し込み制 申し込んだ方にZoomリンクをお伝えします)

https://fujita210208.peatix.com/
seiko.unhr.foe@gmail.com

郵便振替かPeatixでお支払いいただけます。

主催:日本の表現の自由を伝える会 https://hyogen-tsutaeru.jimdofree.com/

○東京開催 ※日時、会場が変更されています

「世界から見た日本のヒューマンライツ」メディア・新型コロナ・女性・貧困・差別

日時:2021年2月13日(土)14:00~16:00(13:30開場) ※1月30日(土)から変更

会場:池上会館(京浜東北線 池上駅より徒歩4分)    ※ラズ大森から変更

定員:40人程度

参加費:1000円(学生無料)

お申込みは中東氏まで nishinaka.neon2020@gmail.com
活動の詳細はこちら → https://hyogen-tsutaeru.jimdofree.com/

上記、ご来場の際はマスクの着用をお願いします。
発熱や咳、喉頭痛などの症状がある人は来場を控えてください。

☆彡☆昨年12月に行われたオンラインセミナーが視聴できます☆彡☆

「日本は本当に自由な国なのか?」~国連自由権規約委員会にNGO共同レポートを提出~

登壇者:望月衣塑子氏、藤田早苗氏、海渡雄一氏、近藤ゆり子氏
Youtube URL → https://www.youtube.com/watch?v=k-Fi1KHA02M&feature=youtu.be

※皆様から、オンライン講演会の企画も募集しております。(限定 2021年2月末まで)

■カンパのお願い■

今回はコロナの関係で従来の協力を頼めないことが多く、特に宿泊費などがかさんでいるようです。
ご協力いただける方は、いくらでも結構です。是非ともよろしくお願い申し上げます。

郵便振替

口座番号:00870-7-216543
〇八九(ゼロハチキュウ)店 当座 0216543
加入者名:日本の表現の自由を伝える会

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(2)~クラウドファンディングのおしらせ~ 「自分ごと化会議in松江」第2期

全国初!住民による住民のための無作為抽出の住民協議会

第1期(2018年~2019年)は「原発を自分ごと化する」をテーマに議論。
『9つの提案』としてまとめ、中国電力、松江市長、島根県知事、世耕経産大臣(当時)にお渡ししました。

今回のテーマは「自然エネルギー」

まちの問題を「自分ごと」として考える市民を増やしたい!自由に安心して対話する場を作りたい!
そうした思いで、「自分ごと化会議in松江実行委員会」は活動しています。

☆ 目標金額は 50万円 ☆

ご支援は、3000円から承っております。

リターンは金額によって

・自分ごと化会議in松江「提案書」
・詳細レポートデータ
・共同代表3人と1時間のオンラインCAFEの権利
・共同代表福嶋浩彦氏が、あなたのまちに出かけてプロジェクトの報告

ご支援いただいた資金の使い道は以下の通りです。

・会場使用料
・講師、問題提起者への謝礼
・無作為抽出者への会議案内 印刷・送付費用など

詳細はこちらから → https://readyfor.jp/projects/kaigi2027

皆さまにもこの取り組みに、支援という形でもご参加いただければ幸いです。

今39%達成。募集は 2月10日(水)午後11:00まで

※自分ごと化会議in松江 第2期 事前勉強会(動画)
昨年11月に、自分ごと化会議の活動や意義を知っていただくための勉強会を開きました。
YouTubeでの視聴が可能です。こちらから →  https://youtu.be/4vf0u3UPtz4

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【3】スウェーデンのコロナ対策(1)―ロックダウンしなかった理由

日本総合研究所理事長 翁百合

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スウェーデンは、2020年春の段階から社会的距離(ソーシャルディンスタンス)の確保、50人以上の集会を禁止するといった、感染防止、医療崩壊回避のための措置をとったが、「ロックダウン」という強制的措置をとらなかった点で世界から注目された。

国民の自主性の尊重という点で評価する声がある一方で、欧州ではベルギー、英国、スペイン、イタリアなどに次ぐ高いレベルの死亡率であったことから、経済を優先してロックダウンをしなかったのではないか、集団免疫措置をとったからではないか、といった批判が、米国トランプ前大統領など多くの人々から指摘されてきた。

スウェーデンでの死者が、春の段階で多かった背景には、介護システムの問題が大きかったことが指摘されている。新型コロナによる死者の9割が70歳以上であり、その5割が、市町村が管轄する介護施設に居住していた。この介護施設には、重度の要介護度の高齢者が入っている。そこで勤務していたのは、感染防止対策が不十分な環境下にあったパートの介護者などであり、移民なども多く、生活が厳しいことから、感染しても休むことなく勤務を続けていたという。

8月の段階ではPCR陽性者の数はいったん落ちつきをみせたが、スウェーデンでも秋以降冬にかけて再び増加、12月にはグスタフ国王が同国のコロナ対策について、死者が多かったことは失敗だったと発言したことが国内外に大きく報道された。感染拡大に伴い12月に政府は、飲食店での会食を4人までに人数制限、20時以降の酒類提供禁止など様々な新たな行動制限措置をとっている。2021年1月には、マスク推奨をスタート、さらに政府が、緊急時には店舗、飲食店などを強制的に閉鎖でき、補償も行う一方違反すれば罰金の徴収を可能にする時限付きの特別法が成立した。ただし、現在感染拡大は落ち着いてきており、感染が収束すればこの法律に基づく措置は当面行使されない可能性が高い。

スウェーデン政府は、他の欧州諸国のようなロックダウン(都市封鎖)などの強制措置をとらなかった理由として、「集団免疫戦略」を採用したからだとの海外からの見方を否定し、感染症には長期的な対応が必要になるとみて、国民・社会が長く耐えられる持続可能な対応としたからだと説明してきた。しかし強制措置をとらなかったのは、それ以外にもスウェーデン独自の理由がある。

まず政府は、そもそも国民の移動を制限することが憲法上できない。憲法では、国内および国境を越えたスウェーデン国民の完全な移動の自由を保障しており、非常時における国民の移動制限が憲法の条文に入っていない。こうした条文がないのは、スウェーデンが1814年以降戦争を行っておらず、長く非常事態がなかったためとの指摘もある。

さらに、憲法は地方自治体にも強い役割を与えている。地方自治で、市町村にあたる自治体が介護や保育などの福祉、教育を、そして都道府県にあたる自治体が医療などを担うことになっており、中央政府の命令で地方自治体の自治が制限されることはない。子どもたちへの感染はそれほど深刻にならないという判断があったことに加え、こうした分散型構造であることが、中央政府が当初全国一斉休校措置をとらなかった理由である。

また、国民はほとんどが共稼ぎであり、強制休校措置は、ただちに病院を含め様々な社会的混乱を招く。こうしたことも十分考慮されたという。ちなみに、その後感染拡大により休校せざるを得なくなった場合に、学童保育に子どもを預けられる保護者の職業リストが国から示されたそうである。

なお医療提供体制については、スウェーデンは私立病院が少なく、公立病院が多い。であるからこそ、公立病院は採算をあまり気にせずにコロナ対応に集中できる側面もある。医療は自治体による自治の下にあるものの、2020年春の段階で国がICUの利用状況を把握、自治体の枠を超えて患者を搬送するなど病院間の連携をとった。また、国全体でICUを通常の2倍に増やすことができ、医師や看護師を教育してICUへの配置換えで増員するなど人的にも柔軟に対応して医療崩壊を回避した、とのことである。 (2へつづく)

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翁 百合(おきな ゆり)

日本総合研究所理事長。NIRA理事。京都大学博士(経済学)。84年日本銀行入行。日本総合研究所に移り、主席研究員などを経て2018年から現職。この間、慶應義塾大学特別招聘教授、産業再生機構産業再生委員、規制改革会議委員、未来投資会議・構造改革徹底推進会合「健康・医療・介護」会合会長などを歴任。現在、金融審議会委員、産業構造審議会委員、内閣府「選択する未来2.0懇談会」座長などを兼任。著書に『金融危機とプルーデンス政策』日本経済新聞出版社など。

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(編集後記)

皆さん節分に豆まきはされますか。これまた邪気を払い福を招くための年中行事です。
今年の節分は2月2日、立春は3日になるそうです。これは124年ぶりとのこと。
因みに先祖の恩恵で、渡辺さんと坂田さんは豆まきしなくて良いそうですが、では碓井さんと卜部さんは?

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