メールマガジン

【No.997】「課題解決」への偏重に対し目線を横と下へ  |京都大学学際融合教育研究推進センター准教授  宮野 公樹氏| 

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構想日本メールマガジン【No.997】 2021.2.18 雨水 発行

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<目次>

【1】お知らせ

(1)代表の加藤がラジオ番組に出演しました J-WAVE

(2)ふるさと住民票 新規参加  和歌山県かつらぎ町

【2】ご紹介

(1) 黛まどか氏の『京都×俳句プロジェクト』 「投句」への誘い

(2)「藤田早苗氏 講演会」 録画視聴

【3】巻末寄稿文

「課題解決」への偏重に対し目線を横と下へ

京都大学学際融合教育研究推進センター准教授  宮野 公樹

☆彡プレゼントがあります 「問いの立て方」(ちくま新書)

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【1】お知らせ

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(1) 代表の加藤秀樹がラジオ番組に出演しました

当日聞けなかった方は、こちらから聴くことができます。

こちら → https://spinear.com/shows/up-close-jam-the-world/episodes/up-close-jam-the-world-tsuda-daisuke-44/

ニュースから「今」を知り、「未来」を見立てる情報プログラム「JAM THE WORLD」のニュース・スーパーバイザー津田大介氏と、代表の加藤が自著「ツルツル世界とザラザラ世界・世界二制度のすすめ」を軸に対談を行いました。

構想日本の成り立ち、ツルツルザラザラ世界のこと、投票以外の政治参加の方法、貨幣依存率、AIのことなど様々なことを語っています。是非、お聞きいただければと思います。

☆書名「ツルツル世界とザラザラ世界・世界二制度のすすめ」

Amazon書籍販売ページ(ペーパーバック版):https://www.amazon.co.jp/dp/B08PX7K296/
Amazon書籍販売ページ(Kindle版):https://www.amazon.co.jp/dp/B08PL2VS1G/

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(2)ふるさと住民票 新規参加 和歌山県かつらぎ町

ふるさと住民票(R)の取り組みを行う自治体に、新しい仲間が増えました!

かつらぎ町(和歌山県)です!!
かつらぎ町では、「かつらぎ町に縁がある方」や「応援してくれる方」ともっと繋がり、より関係性を深めていくためにこの取り組みを始めました。

★かつらぎ町HP ⇒ http://www.town.katsuragi.wakayama.jp/010/20201202162325.html

構想日本では、引き続きふるさと住民票(R)を導入する自治体のお手伝いをしていきます。

※ふるさと住民票(R)とは
人口減少の時代には、居住人口を増やそうとすると自治体間の人の取り合いになります。そこで、その町に関わってくれる人=「関係人口」を増やす仕組みとして考えられたのが「ふるさと住民票(R)」です。
2021年2月時点で、11自治体が取り組みを実施、ふるさと住民は全国で約4,000名を超えています。

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【2】ご紹介  構想日本が応援している活動に関するお知らせです

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(1)黛まどか氏の『京都×俳句プロジェクト』 「投句」への誘い

構想日本が事務局をつとめてきた「日本再発見塾」の呼びかけ人代表である黛まどか氏が、新型コロナ感染拡大で世界中が翻弄されるなか、「いのち」をテーマに世界中のHAIKUを愛する人から俳句を募集する『京都×俳句プロジェクト』を始めました。

「世界の俳句愛好家や京都ファンが俳句に詠み合い、俳縁をつないでいきます。コロナ禍の今だからこそ、俳句という小さな窓を通して命を見つめ、17音の器にその命を輝きを称えませんか?」

俳句は、すべての言語で募集しています。詳細は下記のURLを確認ください。
ホームページ:https://kyoto.haiku819.jp/

SNSのフォローやリツイートをお願い致します。
インスタ(Instagram):https://www.instagram.com/kyoto_haiku_project/
ツイッター(Twitter):https://twitter.com/KyoHaiProject
フェイスブック(Facebook):https://www.facebook.com/KyotoHaikuProject

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(2)「藤田早苗氏 講演会」録画視聴

これまで秘密保護法や共謀罪を国連に通報、国連特別保護者ケイ氏の訪日調査の実現に尽力。
日本の表現の自由の現状を国際社会に伝えてきた藤田早苗さんの学習会が今からでも見られます。
是非、ご視聴ください。

〇録画 藤田早苗氏オンライン学習会「国際人権の専門家が見た イギリスのロックダウンと日本の対応」

2月8日に行われた学習会の録画視聴

2021年2月28日までに以下メールでお申込みいただき、参加費をお振り込みいただければどなたでも見ることが可能です。

(参加費1000円+できればカンパ。学生無料)
seiko.unhr.foe@gmail.com

☆藤田さんは2021年3月中旬まで帰国を延期致しました。
引き続き、オンライン学習会の企画を募集しています。seiko.unhr.foe@gmail.com

詳細はこちら→ https://hyogen-tsutaeru.jimdo.com/

■カンパのお願い■

今回はコロナの関係で従来の協力を頼めないことが多く、特に宿泊費などがかさんでいるようです。
ご協力いただける方は、是非ともよろしくお願い申し上げます。

郵便振替

口座番号:00870-7-216543
〇八九(ゼロハチキュウ)店 当座 0216543
加入者名:日本の表現の自由を伝える会

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【3】「課題解決」への偏重に対し目線を横と下へ

京都大学学際融合教育研究推進センター准教授  宮野 公樹

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今日、「課題解決」という言葉をよく目にします。企業体においてはお客様の課題を解決することが利益につながり、行政においては人民の課題を解決することが幸福であるとし、学術界においては社会的課題を解決することが学問の使命であると・・・。

それはまったくそのとおりなのですが、私にはいささかこの「課題解決」という単語に重きをおき過ぎて、思考停止状態になってしまっていることがあると感じています。

「課題は解決した方がいい」というのは確かにそうでしょう。ただし肝心なのは、ターゲットとするその問題(課題)は本当に解決すべき問題を扱っているのか、ほんとうにほんとうの「問題」なのかということです。何かを解決してもまた次に別の問題を生むようでは、何のためにその「課題を解決」しているのか、よくわかりません。典型的なのはレジ袋有料化。開始されて間もないこともありここではその制度の是非は問いませんが、結果的にレジ袋用のビニール袋を買う方もおられるなど、すんなりとはゴミ削減になっていないようで、今後も注視が必要でしょう。

課題の設定には、我々は結局どうしたいのか、何がどうなったら「いい」のかといった「ありたい姿」に加え、何をしたくて、それを今しているのか。そして、それは結果として何をしていることになるのかといった客観的な見方、これら一連を徹底的に考える必要があるのです。安易に目先の「課題解決」を第一義に置くのは、これらの本質的な問いを横置きしている証左でしょう。いいことをやっている、高尚なことをやっているようであまり理性を働かせていません。その結果、我々は無くてもいいものを作り、不要なサービスを増やし、何故だかどんどん忙しくなるばかりになっているではありませんか。

考えてみれば、「便利なもの」というのは、もともとそれが無くても成り立っていたことに後から追加されたものです。物事が効率化するのはいいことですが、逆にそれなくしては成り立たなくなってしまっては、どんどんそれら「便利なもの」に縛られ、どんどん便利でなくなる(=不自由になる)ばかりです。ひいてはこの「便利」が持つものと持たざるものの差にもつながっているのです。

なぜこんなことになっているのか・・・。

ここで歴史的経緯を詳細に述べる余裕はありませんが、我が国に限って言うなら、高度経済成長時代においては「いかに拡大成長するか」という時代通念がありました。とにかく利益を向上させようとした企業活動において、騒音・煤煙(ばいえん)・廃液・廃棄物の対応は二の次でした。結果、環境被害や公害問題が生じ、その反省として、今日の「課題解決」を重視する考えがあるとも言えます。世界規模でみても、昨今もてはやされているSDGsもまた、一部の成長を第一としてきたツケをなんとかしようという流れにあるとも言えます。

忙しい日々ながらも、「そもそも、なぜ忙しいのか」といったように生活が営まれる現実世界を一歩横からみた目で眺めようとすること(目線を横に向ける)。キラキラした新しいビジョンを掲げる前に、ターゲットとする課題はそもそもなぜ在るのかといった経緯や歴史に注意を払うこと(目線を下に向ける)。それがほんとうの課題の解決につながるのではないか。そう考えています。

<新刊紹介>

新規事業、起業、地域課題、研究テーマから働き方、生き方まで、本質的な問いを得られる

「問いの立て方」宮野公樹(ちくま新書) 2月8日発刊

一口に「問い」といっても、質問、テーマ、問題といった小さなものから、人生の課題、目標、テーマといった大きなものまで様々な形がありますが、「問い」という点ではすべて共通しています。では、「いい問い」とは何かとたずねられたらどう答えましょうか・・・
私たち解くべきほんとうの問いにたどり着くため、「問い」それ自体を問うことからはじめ、磨くための考え方を深めていくのが本書です。
例えば、現代においては論理的であることが良いこととされてますが、ロジカルを良しとするのも、ロジカルが良いという考え方があってのこと。なぜロジカルであったり、あるいはエビデンスベースであったりすれば我々は「正しい」と思ったり、「納得(信頼)できる」と思ったりするのでしょう。このように、ほんとうの「いい問い」を考えるにあたっては、そもそも論の果てまで考える必要があると思うのです。
ここで「深く考えよ!」と言ったとたんに、「考えるばかりではダメだろう。行動に移すことが大事だ」という言もかえってきそうです。それもそうなのですが、これは考えと行動を別けた考えの仕方によるものです。私からすれば、「自ずと体が動くぐらいの深さまで考えよ」です。これは加藤秀樹代表の著書「ツルツル世界とザラザラ世界 世界二制度のすすめ」にある「自分ごと」に通じるものと思っています。

<プレゼント>

新刊「問いの立て方」宮野公樹(ちくま新書)を本メルマガ読者の方5名にプレゼントさせていただきます。
京都大学学際融合教育研究推進センターのお問い合わせ「総合窓口」http://www.cpier.kyoto-u.ac.jp/contact/にメッセージください(申し込んだ動機を添えて頂ければありがたいです)。
応募の締め切りは、2月末日まで。応募多数の場合、発送をもって当選とさせて頂きます。実は、前著「学問からの手紙ー時代に流されない思考ー」(小学館)は、ありがたいことに2019年度京都大学生協書店にて一般書売上第一位となりました。そのきっかけとなったのがこのメルマガの紹介記事掲載でした。そのお礼を込めて、最新刊のプレゼント企画です。

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宮野 公樹 (みやの なおき)

京都大学学際融合教育研究推進センター准教授。専門は学問論、大学論(元は金属組織学)。2011年4月ー2014年9月まで総長学事補佐、加えて、2010年10月ー2014年9月まで文部科学省研究振興局基礎基盤研究課参事官付(ナノテクノロジー・材料担当)学術調査官を兼任。博士(工学)。「学問からの手紙―時代に流されない思考―」(小学館)。

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いただいたご意見はバックナンバーと共に「読者の声」として今後HPに掲載予定です。また、メルマガにて抜粋掲載をさせていただくこともございます。
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(編集後記)

代表の加藤が、ジャーナリストの津田大介さんとラジオで対談しました。
構想日本の理念や活動、ひとりひとりが持つ可能性や今後の展望を語りました。
津田氏も仕分け人をされた経験などを語っています。是非、お聞きください。

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