メールマガジン

【No.1063】「ツルとザラ」 |ペンネーム かけ そら氏|※読者の声 2名

【No.1063】寄稿文「ツルとザラ」;新聞にも取り上げられたインドネシアでの事業仕分け

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構想日本メールマガジン【No.1063】 2022.06.09 発行

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<目次>
【1】巻頭寄稿文

「ツルとザラ」
ペンネーム かけ そら

【2】インドネシアで「行政事業レビュー(事業仕分け)」 構想日本発:新しい民主主義のかたち

「動くシンクタンク」構想日本の真骨頂 海外へ

【3】構想日本企画シリーズ

(1)身の回りのツルツルとザラザラを仕分けてみませんか
(皆さまからのツルザラご紹介)

(2)脱線!どちて雑談 note

「情報で頭の中がパンパンじゃないですか?ひらめきは「隙間」から。想像力は「忘却力」から。」

(3)書籍のご紹介

『ツルツル世界とザラザラ世界 世界二制度のすすめ』 加藤 秀樹 (著)

『あなたも当たるかもしれない、「くじ引き民主主義」の時代へ』 伊藤伸(著)

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【1】巻頭寄稿文 「ツルとザラ」

ペンネーム   かけ そら

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私の職場で起きたことです。

50代男性の現場責任者が異動することになりました。そこで、60代の女性パート職員が発起人となり、職場の人たちが一人当たり500円〜1000円のお金を出し合い、『商品券』を送別の品として贈ることになりましたが、30代の女性パートが一人参加を拒否したことにより、発起人の60代女性が立腹しています。立腹の理由は「2年半もお世話になったのに、また、職場一同でということで贈るのに、なぜ参加しないのか」ということでした。

上の文章だけを読むと60代女性が『ザラ』、30代女性は『ツル』のように感じますが、事情をもう少し深掘りしてみます。

まず、50代男性の現場責任者には性格上の問題がありました。簡単にいうとパワハラ上司です。その為、職場の全員から嫌われ、それが原因で複数の社員やパートが現場を離れた経緯もあり、今回の30代女性も同様の衝突を体験しました。そのような経緯から、送別のお金を出したくないという心情が生まれ、参加を拒否しました。また、60代女性からは任意で出し合うという言葉が回覧(LINE)に添えられていました。

一方、60代女性は、「それはそれ、これはこれ」と考え、「正直、私も好きではないけれども、2年半お世話になった(上司部下の関係で共に働いた)ので、“みんな”で贈るべきだ」と言います。「それが当たり前でしょう」と。任意で、という言葉は「建前上」ということでした。

ちなみに、これを書いている私は40代男性です。世代的感覚は30代女性に近いと思いますが、ご年配の方から多くのことを教えて頂いてきたので、60代女性の感覚も理解はできます。その上で、上記のことを個人的な解釈で『ツル』と『ザラ』に分けてみたいと思います。

その前に50代男性に関してもう少し付け加えると、普段からガミガミと口うるさいわけではなく、忙しさなどで心の余裕がなくなると爆発してしまい、それに対するフォローや謝罪がないため、悪い部分の印象だけが心に強く残ってしまう傾向があり、けっして根っから悪い人とは感じていません。ただし、パワハラ行為に関しては、けっしてあってはならないことだと、私は強く思っています。

まず、60代女性は、『個人の好き嫌い(個人感情)』と『職場一同の体面(集団行動)』の分別をつけなさい、と主張しているように感じます。言葉の中には、「お世話になった」という人間的な話が含まれていますが、やっていることは「集団行動に染まりなさい」と強制しているようにも思えます。これだけを見ると、複雑に構成される個人感情は『ザラ』、集団を成立させるための一律化は『ツル』だと思います。また、感謝の気持ちをお金に換えるという行為も『ツル』化現象のように感じます。お金に頼らずとも、感謝の気持ちは、言葉や日々の態度、行動で伝えられます。私はこれを『ザラ』だと感じます。

今回、身近に起きたできごとを改めて整理してみようと思い立った理由は、昔から行われてきた行為の中に、『ツル』の要素を感じたからです。『ツル』は、けして新しく世の中に出てきた「技術」や「制度」「体制」だけを指しているのではなく、昔から人間の中にともに内包されている「こと」なのではないでしょうか。

構想日本のメールマガジンを拝見していて、最近は、必ず、この『ツルザラ』が取り上げられていますが、ものごとを簡潔な言葉で切り取り仕分けしていく、ということ自体が、構想日本の『ツル』化現象では、と感じたこともありました。これは、過去にあった「J.I.フォーラム」や「代表の言葉」に見られた『ザラ』に対応しての感じ方だと思います。また、自分ごと化対談やどちて雑談などSNSでの取組みは、ほぼ『ツル』化してしまった層とのインターフェース(接点)を作ろうということなのか、とも個人的には感じていました。

今回の件を通じて『ツルザラ』とは、一つの物事に混在していて、部分的に捉えればどちらかに偏って見えてしまう危険性を含み、時代や環境の変化に応じて姿を変えつつも人とともにこれまでも存在してきた「こと」、だと感じています。

身近なできごとを簡潔な言葉で切り取り仕分けする。それを何度も繰り返し、その視点や考え方を習慣化する。それが『ツルザラ』における構想日本の提案ではないかと感じました。

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【2】インドネシアで「行政事業レビュー(事業仕分け)」 構想日本発:新しい民主主義のかたち

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2022年5月にインドネシアで海外初の「行政事業レビュー」が行われました。

今回の初実施に至るまでには実は約10年の積み重ねがあるのです。

構想日本が発案した行政の事業をチェックする仕組みである「行政事業レビュー(事業仕分け)」は、日本の自治体、政府で定着した10年程前から海外からの注目を集めるようになりました。

とりわけインドネシアは熱心で、2011年に国会議員と議会事務局職員が来日し、「行政事業レビュー」の研修を受け、翌2012年にはインドネシアの国会(地方代表議会)に構想日本を招き、模擬行政事業レビューを国会内で実施しました。

それ以降も、一貫して本プロジェクトをインドネシアの政治家や行政に働きかけを行うなど地道にまた忍耐強く推進してくれた北田多喜氏の尽力もあり今回の初実施につながりました。

北田氏が10年前の構想日本メールニュースに寄稿した一節を紹介します。

『私には、事業仕分けが彼らにとって有用であるという確信がありました。なぜなら、インドネシアでは汚職、収賄、縁故など、行政の「不透明性」が大きな問題になっているからです。思った通り、事業仕分けの要である「公開性」や「外部性」についての講義はインドネシアの国会議員たちの関心を特に強く惹いたようで、質疑応答が大いに盛り上がりました。』

10年越しについに実現した海外での「行政事業レビュー」。
日本発の「新しい民主主義」として他の国にも広げていきたいと考えています。
ぜひ、今後の展開もご注目ください!

★事業仕分けを日本とインドネシアの架け橋に 構想日本メルマガ 北田 多喜氏

【No.549】事業仕分けを日本とインドネシアの架け橋に


2012年の様子が分かるメルマガです。

<関連記事>
◇毎日新聞 事業仕分けinインドネシア 日本のODA 村の乳幼児支援に「改善」
https://mainichi.jp/articles/20220606/ddm/007/030/081000c
◇Yahoo!ニュースオーサー 構想日本総括ディレクター 伊藤 伸
日本の行革手法の海外輸出の試み ~行政事業レビュー、インドネシアで試行的実施~
https://news.yahoo.co.jp/byline/itoshin/20220521-00296868

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【3】構想日本企画シリーズ

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(1)身の回りのツルツルとザラザラを仕分けてみませんか

これまでに皆さまから頂戴した、“ツルザラ”をご紹介していきます。

「社会問題」の視点は身につまされることもあり、どうすれば良いのだろうかと考えてしまいます。
まずは、読者のみなさんと一緒に共有していきたいと思います。

~あなたの“ツルザラ”~

・T氏のツルザラ
ツルツル >ペットボトルのお茶、セルフレジ
ザラザラ >急須で淹れたお茶、店員さんがいるレジ

・Ⅿ氏のツルザラ
ツルツル >年中どこでも同じ野菜を食べられること、スマホのアプリで音楽を聴くこと
ザラザラ >季節の野菜やその土地の野菜を食べること、レコードで音楽を聴くこと

「今の社会でこれが問題だ」と思うことを併せてお尋ねしています。

・M氏「今の社会を生き抜くことに必死で、余裕のない人が多いこと」

皆さまは、どんなことにツルザラを感じられますでしょうか。是非、ご参加ください。

▼仕分けのお願い

1、あなたの身近で「ツルツル」だと思うものを教えてください。
2、あなたの身近で「ザラザラ」だと思うものを教えてください。

下記、グーグルフォームよりご回答ください。
https://forms.gle/EosCiVcQWP2tZfum9

<背景>

今の社会は、経済を成長させ「お金が増えるとみんなが幸せになる」が前提です。
そのために自由化・効率化=ツルツル化(効率の悪いものを極力減らすこと)をしてきました。
昔からの生活にある、デコボコ・ザラザラ(手間をかけてものを作ること、習慣の違いなど)を減らし、物もお金も人も画一化し、効率的に動かし、今やツルツル・ピカピカです。

構想日本はザラザラ社会の方が平和で、多くの人が幸せになれると考えています。SDGsとはツルツル化を見直そうという運動とも言えます。しかし、世界はまだツルツル化が進んでいます。
そこでまずは、ツルツルとザラザラの両方が選択できる世界二制度の仕組みを考えようと提案しています。

詳細はこちら 構想日本HP → http://www.kosonippon.org/turuzara_0308/

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(2)脱線!どちて雑談 note

noteに仕立て直したどちて雑談を、是非、ご覧ください。

「情報で頭の中がパンパンじゃないですか?ひらめきは「隙間」から。想像力は「忘れる力」から。」

こちらから →  https://note.com/hi_kato/n/n0263187ea19f

(瀬戸内サーカスファクトリー代表理事・田中未知子×クリエイティブディレクター・谷野栄治×構想日本代表・加藤秀樹)

・頭と時間に隙間がないと降りてこない
・あらゆる職業がクリエイティブ職
・いい話の基準は 何か思いつくか 何か思い出す

※Note(ノート)は、クリエイターが文章や画像、音声などを投稿し、ユーザーが応援できるメディアプラットフォームです。

★どちて雑談動画はこちらから → https://www.youtube.com/playlist?list=PL1kGdP-fDk3-GPkMkQsCiYupO4L9rS3fQ

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(3)書籍のご紹介

~加藤秀樹の書籍紹介~

『ツルツル世界とザラザラ世界 世界二制度のすすめ』 加藤 秀樹 (著)

格差や貧困から民主主義の危機、地球温暖化にいたるまで様々な現代社会の弊害を貫く原因を整理し、これからの「世界の仕組み」「日本の仕組み」「私たちの生き方」のデッサンを具体的な事例を交えて示します。これからの生き方を模索している人、政治や経済の将来を考えたい人、地域を元気にしていきたい人などに是非、読んでいただきたいです。

Amazon書籍販売ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B08PL2VS1G/

~伊藤伸の書籍紹介~

『あなたも当たるかもしれない、「くじ引き民主主義」の時代へ』 伊藤伸(著)

「くじ引き民主主義」という考え方が、世界中で広がり始めています。その先駆けともいえる構想日本の「自分ごと化会議」。無作為に選ばれた市民が集い、地域の課題を「自分ごと」として受け止め、地域の未来をみんなと一緒に考える会議です。これまで1万人以上の人が参加した会の様子など、実例を交えて紹介しています。

Amazon書籍販売ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/4903059669?ref=myi_title_dp

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(編集後記)

和紙には表と裏があり、表がツルツル、裏がザラザラなんだそうです。
小学校のお習字の時間に、どっちが表か裏かわからなくて悩んだ思い出があります。
寄稿文にもあるように、「ツルザラ」は表裏一体なのかなと考えさせられました。

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****** 読者の声 **********************

1,「メルマガNo.1063の感想につきまして」(2022.6.10)

 

かけそらさんの寄稿「ツルとザラ」に感銘を受けました。

昔からのやり方にもツルが含まれていることがある、一つの事柄にツルとザラが混在していることがある、という視点は大事な視点だなぁと感じました。

友人とツルツル、ザラザラについて話したとき、どちら一方が良いとか悪いとかではなく、場面に応じて使い分けていくべきものなのではないかという意見が出ました。

効率性、合理性といったものは仕事の面では必要だし、今後もしっかりとツルツルの要素を取り入れておくことが必要なんじゃないか。一方で、プライベート、消費行動、社会活動の面では意識的にザラザラの要素を入れていくことが、ゆとりや奥行きを確保することにつながるのかもしれません。

なお、友人は、ザラザラがポジティブな意味合いなら、モフモフとかフワフワとかの方が良いのではないかと言っていました。

話を元に戻すと、ツルツルとザラザラに単純に物事を切り分けて、一方を悪とみなすというのではなく、一つの物事に対し多面的な要素を見つつ、場面状況に応じて、よりよいあり方、対応を見つけていくということが大事だと思います。

引き続き、よりよい社会の実現に向けての構想日本の取組を応援いたしております。(H氏)

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2,構想日本メールマガジン 読者の声 (2022.6.14)

構想日本がこのツルツル、ザラザラの切り口は、社会に対してものすごい深淵なテーマへの招待状としてなのだと思いました。

ザラザラからツルツルが生まれるのは、オートマティックで起きてしまうことだと思います。だから企業でも「人が第一」と言いながら、気が付くとそういう気持ちには誰もならないくらいにシステム依存になってしまっています。システム依存している状態が当たり前の社会になっていく。

そうすると誰も本当には当事者意識を持っていないままに日々をやり過ごす社会が成りたっていって、そしてそれは必ずなんらかの形でいつか破局と大きな痛みを生み出すことになるでしょう。構想日本が問題にしているのは、その大きな動きの中で、日本社会を破局ではない方向に構想するために、人々のシステム依存からの脱却を促す目的で、この概念を打ち出してきているのだと思います。だから生活の中で、それぞれの個人であるわたしたち一人一人が感じているざらざらを見直してみましょう、ということを言っているのだと思うのです。

逆にそういう努力をしないでいると、オートマティックにツルツルが拡張していく動きは誰にも止められない慣性を持ってしまいます。それが現代ではAIにかかわる悲観的な未来像に描かれる内容につながっていきます。皆の職がなくなって、なんでもコントロールされる社会になるという地獄絵図です。そうなってしまうと、わたしはそれはそれで、なんらかの形の破局に向かう他はないように思います。どうしてもざらざらの社会に当事者意識を持って、ツルツルのシステムを使いこなしていくという方向にならないと、決して平和な社会にはなり得ません。(楠 宏太郎氏)