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【No.104】山岳少数民族の村で見つめ直した「近代化」

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山岳少数民族の村で見つめ直した「近代化」
JIメールニュースNo.104  2003.7.11
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■■ 目次 ■■
1.《タイ紀行》山岳少数民族の村で見つめ直した「近代化」
慶應義塾大学総合政策学部3年
(構想日本 非常勤スタッフ)
吉岡 直美
2.《6月25日第72回「JIフォーラム」の報告

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1.《タイ紀行》山岳少数民族の村で見つめ直した「近代化」
慶應義塾大学総合政策学部3年
(構想日本 非常勤スタッフ)
吉岡 直美

タイの山岳少数民族の村にホームスティをするプログラムに参加してき
ました。普段何気なく生活していると、目先のことばかりに目がいき、広
い視野を持つことを忘れがちです。大学3年になって進路を決める
にあたり、自分の視野を広げたいと思ったことがきっかけでした。
●貧しさとは何か
タイ第二の都市チェンマイから、車で3時間、歩くこと4時間。人口
286人の小さな村が、奥深い山の中にようやく姿を現しました。私が行
ったのはカレン族の村でした。あの“首長族”もカレン族の一派だと言う
と、なんとなくイメージがわくのではないでしょうか?
カレン族は、木造の高床式住居に住んでいます。豚や鶏を家畜として飼
い、川で魚釣りをしたり畑で植物を育てたりして生計を立てています。ど
の山岳少数民族にも言えることですが、現金収入が少なく、政府の経済統
計では「貧困状態」にあることになっています。
確かに、貨幣価値の尺度では貧しいのかもしれません。しかし、私は彼
らの生活を“貧しい”という言葉で表現することが適切ではない気がしま
した。一般に“貧しい”という日本語から連想されるのは、お金がないと
いうことです。一方で、「幸せはお金では買えない」なんていう言葉もよ
く耳にします。お金が有っても無くても不満を抱く。今の日本には貨幣価
値の尺度が蔓延していて、何につけてもお金で物事を判断しているからこ
そ、このような矛盾を産んでいるのだと私は思います。
山岳少数民族が、現金収入の少なさに困っていることは事実なのでしょ
う。しかしながら、彼らには彼らの生活があり、価値観があります。それ
を無視して、私たちの価値基準で“貧しい”という色眼鏡で見ることは、
間違っていると感じました。
しかし、ホストブラザーが別れ際にこう言いました;「また絶対会おう。
君が村に来てくれなきゃだめだよ、僕はお金を持っていないから。」私は
この言葉を忘れることが出来ません。
“貧しさ”とは何なのか、深く考えさせられました。
●村は変わるか
同じプログラムに参加した60歳代の男性は、この村は昔の日本みたい
だと言っていました。太陽と寝起きを共にし、村全体が一つの家族のよう
に助け合って暮らしています。確かに、私が想像した昔ながらの生活を彼
らは送っていました。
しかし、村にも近代化の波は押し寄せ、変わりつつあります。例えば、
数年前まで全員が民族衣装を着ていたそうですが、ほとんどの子供たちが
洋服を着るようになり、ドラえもんのトレーナーを着ている子もいました。
このような変化を目にしたとき、私は思わず「変わってほしくない、伝
統的な生活を守って欲しい。」と感じてしまいます。

しかし、参加者の1人がこう言いました。「村は変わっていくと思う。
変わっていいのだと思う。便利なものが入ってきて、生活が豊かになるこ
とを阻む権利は僕たちにはない。ただし、近代化が進んでいく中で道に
迷ったとき、お手本となるような国づくりを日本はしていくべきなんじゃ
ないかな。」
まさにその通りなのでしょう。それと同時に、日本人もかつて同じよう
な生活をし、近代化を経て便利な生活を手に入れたのに、私たちと同じ道
を歩もうとしてる人々に、私がなぜ、変わってほしくないと思うのか、不
思議でした。
おそらく環境破壊や人間同士のつながりの崩壊など、近代化がもたらし
た傷を私たちが未だに引きずっているからだと考えます。そして、その傷
に胸を痛めても、積極的に癒そうとしているとは言えない私がいることに
引け目を感じているからだと思います。今私がすべきことは、「この村の
生活は変わってほしくない」と身勝手に願うことではなく、まずは自分の
身を置く社会で責任を持って生きていく、ということだと思いました。

この他にも、ホストブラザーが「SUKIYAKI SONG(上を向いて歩こ
う)」を知っていたことに驚いたり、交通手段として象に乗ったりと、日
本では決して味わえない経験をたくさんしました。普段と全く違う生活を
することで、自分のことだけでなく、日本やアジア、そして世界について
私なりに見つめ直す機会に恵まれました。
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2.《6月25日第72回「JIフォーラム」の報告》
SARS、テロリズム… 私たちの周囲では、グローバルな時代ゆえの
現象が様々な形で起こっています。これらの要因となっている人間の行動
をグローバル化が進展する中でコントロールすることは至難の業。だから
こそ、危機管理の重要性が叫ばれる時代です。
「個々の企業は危機管理対応ができていても、それらが集合体になった時、
日本としてどう対応するのかという問題が解決できていない」(先端医療
研究センター教授 岩本 愛吉氏)
「自社では、危機管理のための対策案が出てから、社長、副社長などによ
る意思決定までスピードが非常に早い。」(日立製作所リスク対策部長
小島 俊郎氏)
「9.11テロ事件で米国政府が学んだ教訓は、各省庁間、連邦・地方政府間、
国際間の3つの重要な分野での情報共有」(米国大使館 Kimberly
McCulloch氏)
「日本では、危機管理の問題は国民のコンセンサス形成どころか議論さえ
されていない。議論できなければ、結局、超法規的に対応せざるを得な
い。」(公共政策調査会 板橋 功氏)
当日は、日本人の危機管理意識を憂慮する発言が相次ぎました。「米国
では、(国民の間に)様々な意見があっても、あることを実行する段にな
ると(国全体として)一つにまとまるというところがあるが、日本の場合、
昔、まとまりすぎて失敗した経験が尾を引いている。まとまらなければい
けない部分とそうでない部分の仕分けは、危機管理上の問題点の一つ。」
(岩本氏)という指摘をよく考え、私たち自身の問題として国の危機管理
を正面から議論しなければならないと思います。
<討論者>板橋 功((財)公共政策調査会)
岩本 愛吉(先端医療研究センター感染症分野・感染免疫内科
教授)
小島 俊郎(㈱日立製作所 リスク対策部長)
Kimberly McCulloch(米国大使館政治部)
<コーディネーター>蟹瀬 誠一(ジャーナリスト)
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