【No.148】心土不二の時代(後編)
2004.05.21

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心土不二の時代
JIメールニュースNo.148  2004.5.21
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■■ 目次 ■■
1.《心土不二の時代》
2.《第83回「J.I.フォーラム」のご案内》
3.《お知らせ》

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1.《心土不二の時代》
― 農業から日本社会を考える ー  (後編)
大阪経済大学 日本経済史研究所所長 徳永 光俊

●農業は農業である
農業の歩みを考えてみよう。「生きるために、作り食べる」段階から、
「食べて余ったら、売る」ということが起る。やがて「余らすために、作り
売る」という技術の発展がある。そして「売るために、作り儲ける」商品
生産が主流になるなかで、「儲ける」ことが生産の目標に変わってしまう。
「儲けるために、作り生きる」という価値観の逆転が起き、「生きる」た
めに生産する農業の原点が忘れ去られていく。
生産量の増大、儲け額の増大という数量基準に転換する。数量は比較可
能である。優勝劣敗の市場競争社会の出現である。大量生産、大量消費時
代の到来である。現在の危機の源は、ここにある。
「有機認証制度」は、この数量基準の世界に乗っかったものなのである。
これさえクリアーすれば、日本国内産である必要はない。WTOの陰謀!アメ
リカはじめ世界中から「安全」な食品を輸入できるシステムなのである。
このまま、市場原理、WTOに支配されながら日本農業は翻弄され続け、衰
退していくのか。それとも、再び「生きるために、作り食べる」という農
業の原点に立ち戻るのか。21世紀は大きな転換点にある。
守田志郎は、農業の原点に関し、早くも1971年に『農業は農業であ
る』(農文協)を書いて、工業とは違う農業の循環、「まわし」の論理を
説いた。そして、農法とは、土との取り組みの暮らしにおいて、すべての
生き物は循環の構造の中で生き活かされているという超ええない則を体験
的に悟ることによって、人の存在の永劫を得ようとするものだと主張した。
農業とは、「作る」のではなく、「出来る」まで「心の目」で作物と話
しながら「待つ」のである。待つ間に自ずと「祈り」が生まれ、「祭り」
となって感謝する。
サステナブル、ディープエコロジーなどに、矮小化されない日本の農耕
文化。
●忘れられた日本の農耕文化
戦前戦後の農山漁村を歩いた宮本常一は、日本社会の根幹、文化の3層
構造を的確に述べる。「そこにある生活の一つ一つは西洋からきた学問や
思想の影響をうけず、また武家的な儒教道徳のにおいのすくない、さらに
それ以前の考え方によってたてられたもののようであった。この人たちの
生活に秩序をあたえているものは、村の中の、また家の中の人と人との結
びつきを大切にすることであり、目に見えぬ神を裏切らぬことであった」
(『忘れられた日本人』岩波文庫)。
そうした生き方を江戸時代の農家は、次のように確信を持って述べてい
た。「只百姓ハ百姓の道を一筋にして守るなり。たとへ何程下直でも此百
姓を守るなり」「右の通り寒いと、百姓ハつらい物なれども、何の道でも
同じ事。是行にするなり」(「山本家百姓一切有近道」『日本農書全集』
第28巻 農文協)。
日本列島に農耕が始まって以来、地下水脈として流れ続けてきたもの、
涸らしてはいけないものが、ここにある。目に見えぬ神への感謝、行とし
ての百姓の道。おかげさまでの、ありがたや。いただきますに、ごちそう
さま。
腹→口→目→頭の身体と農業が結びつく「身土不二」から、さらに心を
込める、心を通い合わす「心土不二」の時代が来ている。
<プロフィール>
1952年、愛媛県松山市生まれ。京都大学大学院農学研究科博士課程単
位取得退学。農学博士。現在、大阪経済大学教授、日本経済史研究所所長。
主要編著書:『日本農法の水脈』(1996)、『日本農法史研究』
(1997)、『日本農法の天道』(2000)、共編『日本農書全集』第Ⅱ期全
37巻(1993~99)(以上は、いずれも農山漁村文化協会)。共編『写真
でみる朝鮮半島の農法と農民』(2002未来社)、共編『黒正巌著作集』全
7巻(2002思文閣出版)。
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2.《第83回「JIフォーラム」のご案内》
なぜ「食べもの」が危なくなったのか?
-牛、鶏、野菜・・ ・大量生産・消費と地産地消-
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いまの日本人は食生活に関しては、世界一贅沢と言えるでしょう。世界中
の食料が手に入り、世界中の料理が味わえる。そして捨てられる食べもの
も世界一。
一方、鳥インフルエンザ、BSE、その他、農薬、添加物、遺伝子組替
え食品など、食べものを通した危険が私たちにせまっています。大量生産
が可能にしたぜいたくと危険が隣り合わせにあるのです。
そこで、『地産地消』をキーワードに、食べものについて、また農業の
あり方などについて現場を踏まえた議論をして頂きます。
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日 時  : 平成16年5月25日(火)
会 場   : 銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演  : 午後6時30分(開場:午後6時00分)
討論者  : 川瀬 滋子(鳥取県地産地消推進室室長)
原田 津 (農事評論家)
古野 隆雄(全国合鴨水稲会世話人)
山下 惣一(農民作家)

コーディネーター : 徳永 光俊 (大阪経済大学日本経済史研究所所長)

主 催   : 構想日本
定 員  : 160名
参加費  : 2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
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参加希望の方は、下記のメールアドレスにお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
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参加ご希望の方は、誠に恐縮ですが5月24日までに出欠の是非を
お知らせ願います。
お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)
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3.《お知らせ》
●構想日本ではこのほど、インターネットによる募金システム
「募金やドットコム」 http://www.bokinya.com/ に加盟しました。
ヘッダーにある【団体名で募金さがし】をクッリクし、カ行の欄で
構想日本をご覧下さい。
ご自身はもとよりお知り合いの方々にもお声をかけて頂き、
ご協力をよろしくお願 い申し上げます。

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