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【No.151】「国民保護法案」は国民を保護するか

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「国民保護法案」は国民を保護するか
JIメールニュースNo.151  2004.6.11
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■■ 目次 ■■
1.《「国民保護法案」は国民を保護するか》
2.《第84回「J.I.フォーラム」のご案内》
3.《お知らせ》

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1「国民保護法案」は国民を保護するか
有事法制勉強会「神楽坂会議」スタッフ 伊藤美好
現在参議院で審議中の有事7法案と3条約案件。詳しく報道されないため
国民の関心は薄いが、どれも日本の行く末にかかわる重要な法案だ。ここ
では国民の生活にとくに関わりの深い国民保護法案をとりあげ、若干の指
摘を行いたい。
●住民の避難は非現実的
国民保護法案において、国民保護のための中心的な措置とされているの
は「避難」である(同法案 第2章)。石破茂防衛庁長官も、迅速な避難が
できることが有事法制の要であると述べている(参議院 イラク人道復興支
援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会 6月3日:ツルネ
ンマルテイ民主党議員への答弁)。

ところが、この避難措置が現実には実施困難と考えられる。
衆議院の審議において「厚木基地周辺に住む100万人をどのように避難
させるのか」という質問に対し、「私はわからないが、都道府県が最善と
思われる避難を指示するんだろう」といった答弁がなされた(衆議院武力
攻撃事態等への対処に関する特別委員会 5月12日 井上喜一防災担当相:
阿部知子社民党議員への答弁)。
避難民の炊き出しや衣食住についても「面倒は都道府県が見る、実際に
は市町村がやっていくということだと思う」と答えるだけで、政府として
避難民の生活を保障するための具体的な方策は考えていないことが明らか
となっている(同日 同上:末松義規民主党議員への答弁)。
丸投げされた形の自治体の意見はどうか。2003年に鳥取県は住民避難に
関するマニュアル案をまとめた。当時の新聞報道にはこうある。
「…この案の検討過程で県は、県東部3町村の住民計約2万6千人を自治体
バスでピストン輸送し、隣の兵庫県に避難させる時間を試算した。その
結果、避難指示から完了まで11日もかかることがわかったという。…」
(朝日新聞 2003年7月9日)
これは、道路を避難民がすべて使えるとしての試算である。実際には自
衛隊・米軍等も道路を使うことになるので、避難路の確保はさらに困難に
なることが予想される。
法案成立を見越して検討を始めた他の自治体からも以下のような声があ
がっている。
「…ある自治体の防災担当者は『海に面し離島が多い本県は、他県以上
に避難先や受け入れ態勢で困難が予想される。実効性のある計画を策定
できるか疑問』と戸惑いを隠せない。…」(長崎新聞 2004年5月21日)
現在、全国12道県で52基の原子力発電所が操業中であることを考えると、
避難先を想定することはさらに困難になる。たとえば東京都民1200万人が
原子力発電所のある茨城県にも福島県にも新潟県にも静岡県にも近づくこ
となく、どこかに避難することが可能だろうか。
●原子力災害に関する措置に実効性がない
有事において最も甚大な被害が予想されるのが、原子力施設に対する攻
撃である。法案には、原子力災害の発生を防ぐため、原子力施設の「使用
の停止」を行うとある(第106条)が、原子炉を止めたからといって放射能
がすぐに減衰するわけではなく、危険が迫ってから「使用の停止」をして
も破局的災害は防げないという。
(特定非営利活動法人 原子力資料情報室 http://www.cnic.or.jp )
他にも原子力施設に関わりのある方々に意見を伺ったが、共通して「措
置に実効性がない」「法案を作った人は、原子力災害の具体的なイメージ
を持っていないのではないか」との返事が返ってきた。
●現場の声を聞いていない
国民保護法案においては、攻撃があった場合にどのような被害が起き得
るか想定しその対処法を考える際に、現場を知る方々の経験に基づく意見
を聞くという基本的な作業がなされていないように思われる。
以上触れたのは、問題のごく一部にすぎない。要件が曖昧で恣意的な解
釈を許す条文が多いなど、法律としての根幹に触れる問題もある。徹底的
な論議を重ねて検討する時間を惜しむべきではない。

<プロフィール>
1956年、名古屋市出身。京都大学文学部史学科卒。
著書『パンケーキの国でー子どもたちと見たデンマーク』平凡社 2001
共著『笑う不登校ーこどもと楽しむそれぞれの日々』教育史料出版 1999
共訳『教育への権利』2002 など
絵本「戦争のつくりかた」制作協力
http://www.ribbon-project.jp/book/
国民保護法案ウォッチャーズ 呼びかけ人
http://www.ribbon-project.jp/yuji/
有事法制勉強会「神楽坂会議」スタッフ
http://www.itoh.org/kagurazaka
◆ひとこと
この法案に限らず、最近の政策には具体的なイメージが不充分なまま進め
られるものが多い。特に本件のような安全保障・治安維持と、都市の再開
発やコーポレートガヴァナンスなど、経済の分野に多いように見える。思
慮の浅い「政治的決断」と法的な整合性などに関する重箱の隅をつつくよ
うな「官僚的検討」の組合せを避けるための知恵を私たちは持たなければ
ならない。
(加藤秀樹)
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2.《第84回「JIフォーラム」のご案内》
名は体をあらわす
-あらためて地名を考えよう。
そこから町、さらには国のすがたが見えてくる-
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かつて権力者が自らの名前をつけた都市名の多くは、はかなく消え去って
いきました。では、住居表示の簡素化や市町村合併の際つけられた、官制、
あるいはお手軽地名は将来どうなるのでしょうか。
地名には、その地の歴史、風土、生活さまざまなものがこめられていま
す。だからこそ、多くの人が地名に愛着をもち、旧名復活の動きもおこる
のです。
地名を通してコミュニティのあり方、ひいては日本人一人一人のアイデン
ティティまで大いに議論して頂きます。
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日 時:平成16年6月30日(水)
会 場:銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演:午後6時30分(開場:午後6時00分)
討論者:今尾 恵介(エッセイスト/日本地図センター客員研究員)
松田 昭一(金沢市市民生活部部長)
三橋 浩志(日本総合研究所主任研究員/全国地名保存連盟会員)
コーディネーター:小松俊昭(政策投資銀行/金沢工業大学産学連携室客員
教授)
主 催:構想日本
定 員:160名
参加費:2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
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参加希望の方は、下記のメールアドレスにお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
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参加ご希望の方は、誠に恐縮ですが6月29日までに出欠の是非を
お知らせ願います。
お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)
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3.《お知らせ》
●「権力の道化」 櫻井よしこ  (新潮社)
「新潮45」2~5月号で道路公団改革の決定プロセスを克明にレポートし
てきたジャーナリストの櫻井よしこさん。これに大幅に加筆修正を加えた
本が出版されました。民営化が全く形だけになった背後に何があったのか。
国民不在の政治家、正義の味方を装いながらその政治家にすりよる「道
化」。これが真実です。
●構想日本の主張が「骨太の方針 第4弾」に反映
『骨太の方針』の柱のひとつである「三位一体改革」。先週閣議決定され
た第4弾には、構想日本の主張が反映され、地方に対する「国のコント
ロール」の解消が盛りこまれました。詳しくは、以下をご覧ください。
http://www.kosonippon.org/doc/?no=213

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◆寄せられたご意見は「読者の声」として以下に掲載しています。
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