【No.174】地方の工夫が国の財政を救う! Part1
2004.11.19

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地方の工夫が国の財政を救う! Part1
JIメールニュースNo.174  2004.11.19
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■■ 目次 ■■
1.《地方の工夫が国の財政を救う! Part1》
2.《第89回「J.I.フォーラム」のご案内》

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1.《地方の工夫が国の財政を救う! Part1》
~長野県栄村現場レポート~
構想日本政策スタッフ 伊藤 伸
●「お金」はいるが「補助金」はいらない!?
「三位一体改革」や「補助金3兆円の削減」という言葉がたびたびマスコ
ミ等で取り上げられています。その多くは、国と地方との間の、お金の取
り合いのような報道ぶりです。しかし問題の本質は、「補助金」の背後に
ある国のコントロールをいかに取り除くかです。
これまで国は、補助金や交付税をえさにして、地方をコントロールし、
そして、地方はこれに依存してきました。その結果、地方はどこも同じ”金
太郎飴”になり、必要のない行政運営の積み重ねで、膨大な財政赤字が積み
上がりました。
しかし、その中で危機感を持って行政を運営し、お金がないからこそ工
夫が生まれている村があります。この村の取り組みを2回に渡って紹介しま
す。

●長野県栄村 ~現場は改革のアイデアの宝庫!~
長野県栄村の高橋彦芳村長は市町村合併をしないことを宣言し、以来、
村が持続可能な行政運営を行えるように、行政コストを削減し、ユニーク
な政策を行っています。
それらの政策の中で、補助金をもらわずに(国の関与なしに)行ってい
る村独自の道路整備とは、どのような中身でどのくらいのコストで行って
いるのかを、栄村で現地調査しました。そして、補助事業との比較を試み
ました。
●村長の思い、村民の反応
<高橋彦芳村長>
「国は農山村でも都市並みの村づくりをやれと言ってきた。そのためのカ
ネは交付税と過疎債。これは『本物』ではないと思いながら大バカになっ
てやってきた。しかし、官のつくる公共事業のモノサシは栄村のような山
村には全く合わない。暮らしの知恵を活かしながら、栄村らしく生きてい
くことが必要」
<広瀬房子さん(薬局経営)>
「(栄村独自の政策によって)視察が増え、村全体が引き締まって良いと
思う。若い人が少なくなって村が続いていくのか不安だけど、今は私のよ
うな高齢者にとってはとても住みやすい」
●道直し
国の補助を受けない村道や農道の改良事業。村の予算と受益者負担(用
地費の3割、材料費の25%を集落で負担)で行い、村の臨時職員が施工しま
す。
村道が国庫補助の対象になるには道路を2車線以上にするなどの条件があ
りますが、集落内の生活道路は機械除雪が行える幅(3.5m)さえ確保でき
れば良く、国庫補助の対象に合わせた規格にするとかえって高くつくため
補助事業では行っていません。
具体的に見ると、栄村の道直しは整備距離1m当り約1.9万円。それに対
し国の道路構造令・補助基準に従った場合は、建設会社へのヒアリングに
よると約11.1万円かかります。簡易な道路整備であれば、栄村は通常の1/6
のコストで行っていることになります。補助事業で行うと50%の国庫補助
がつきますが、それでも栄村独自で道路整備を行う方が負担額は1/3になる
のです。
補助事業の場合、国が一律に決めることで「どんな地域、状況でも問題
ない」よう基準が決められ、多くの場合過剰な仕様になり高くなってしま
います。栄村の道直しは、国が決めた基準(道路構造令)に従わなくて良
いため、国や県への報告するための設計や測量にかかる費用が不要になっ
たり、原材料費が安くすむことが大きな原因です。特に原材料費は、道路
構造令や補助基準に従った場合に比べて、栄村の道直しの方が1/14にも削
減されています。

以上のことからも、車道や路肩の幅など、現場の必要性と判断、責任を
もっと生かすべきだと言えます。全国でこのような工夫をすれば、税金の
無駄使いが相当減るのではないでしょうか。
●「道直し」以外の栄村の創意工夫による主な事業
「田直し」:補助基準に満たない小さな田を拡大する事業。農家と村が
10a当り20万円ずつ負担し、その費用の中から機械、作業員(1名)の費用
を賄う(1時間8500円)。
「下駄ばきヘルパー」:村が講座を開いて160名のヘルパー資格者を作り、
集落ごとに班を作って介護サービスを提供。農山村部特有のコミュニテ
ィーを生かした手法。村の雇用拡大にも寄与。
「雪害対策」:冬期間、雪害対策救助員を15名雇い高齢世帯の屋根の雪降
ろしを行う。申請に基づいて民生委員が審査、無料と有料に分け村長が決
定。
●最後に
栄村で行われている政策は、これまでマスコミ等で「国からのお金はな
くても行政運営ができる」として取り上げられることが多くありました。
しかし実状は補助金をもらうことのできない事業、あるいはもらうとむし
ろ高くつく事業を、いかにして低コストで行うかを追求して生まれたもの
であり、冒頭にも述べたように現行制度の中で「国のコントロール付きの
補助金は無駄も多いし、要らないが、お金は必要」なのです。このことに
留意し、今後このような努力している自治体が報われる仕組みを早急に作
らなければなりません。
<栄村基礎情報>
【人口】2604人 【世帯数】905世帯 【面積】271.51平方キロメートル
(内、山林原野が93%) 【H16年度当初予算】30億1700万円 【特徴】年
間140日間は根雪があり、JR沿線での日本最高記録がある豪雪地帯。新潟
と群馬の県境に位置する。
※次週は現場レポート第2弾「長野県下條村編」をお伝え致します。
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2.《第89回「JIフォーラム」のご案内》
構想日本でこんな本を企画しました(11月24日発売!)
『浮き足立ち症候群-危機の正体21-』
-21名の専門家に様々な「危機」とそれを生み出す
世の中について語って頂きました -
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もう10年以上も家庭、学校、会社、様々なところで「危機」とか「破
綻」といったことが叫ばれています。私たちは、そんな言葉に浮き足立っ
てしまってはいないでしょうか。 そこで、ちょっと腰をおちつけて、ど
こに本当の問題があるのか考えてみませんか、という趣旨の本を構想日本
の企画でつくりました。
構想日本の政策づくりと共通の問題意識を持つ21名の著者の中から、医
療の問題を鋭く提起した「ブラックジャックによろしく!」のモデル南淵明
宏氏、禅僧から医師(僧医)をめざす対本宗訓氏、食の安全について適確な
指摘をしている小若順一氏に、本当の問題はどこにあるのか議論して頂き
ます。
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日 時 : 平成16年11月30日(火)
会 場 : 銀座ソニービル8階 ソミドホール
開 演 : 午後6時30分(開場:午後6時00分)
討論者 : 南淵 明宏(大和成和病院心臓病センター長心臓外科部長)
小若 順一(食品と暮らしの安全基金事務局長)
対本 宗訓(禅僧・医学生)
コーディネーター: 加藤 秀樹(構想日本代表)
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参加ご希望の方は、11月29日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
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懇親会に     参加する      参加しない
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お問合せ:構想日本・西田(電話03-5275-5607)
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