【No.178】ハローワークは公的機関として必要か?
2004.12.17

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ハローワークは公的機関として必要か?
JIメールニュースNo.178  2004.12.17
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■■ 目次 ■■
1.《ハローワークは公的機関として必要か?》
2.《ご意見、お寄せ下さい!》
3.《速報》中田市長ご参観のなか、横浜市で「事業見直し」実施!

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1.《ハローワークは公的機関として必要か?》
構想日本政策スタッフ 伊藤 伸
政府は2006年度から市場化テスト(行政が担っている事業の実施に対し
て官民が入札で質や価格を競う仕組み)の導入を予定している。市場化テ
ストは、イギリスやアメリカなどで刑務所、清掃、廃棄物の収集・処理や
公共職業安定所の運営を民に移管した実績がある。日本での成否は今後の
仕組み作りと運用次第だが、この試みは良い。来年度にはそのモデル事業
を行う予定で、その対象にハローワーク業務全体を充てようとしたが、厚
生労働省が「ハローワークの全国ネットワークが維持できなくなる」(11/
28付読売新聞)と反発し、12月7日の閣僚折衝により、市場化テストを行う
のはハローワーク業務の一部のみに限定された。
では、ハローワークは民に委託しても運営できるものなのか。私の結論
を先に言うと、「民に委託すべき」である。最も大きな理由の一つは、
「官」であることによるサービスの低下である。以下の事例からもそのこ
とが感じられる。私の知人で首都圏に住む女性Aさんの出来事を紹介する。
◇昨年5月
妊娠のためAさん退職。失業給付の受給開始日の延長を申請(妊娠など
労働ができない状況にあるときは、失業給付の受給開始日を最大5年間延長
できる)
◇今年9月30日
今年9月に子供が1歳になったため、就職活動と同時に失業給付をもらう
ためハローワークに子供を連れて申請に行く。
窓口で、「来月行う説明会には子供を連れてきてはいけない。説明会は
1時間半あり、連れて来て途中で子供が泣くと他の方に迷惑。1回でも会場
から出ると、再度受けてもらうことになる。一時預かりを利用するか、親
やベビーシッターなど工夫して」と言われる。しかし、この夫婦の親は離
れていてすぐには来れない。公立保育園に入れるには逆に雇用証明書が必
要なところが大部分。民間の保育園は首都圏ならば5~10万円、一時預かり
は1日数千円。
この日は考えて出直すことにし帰宅。
◇ 10月1日午前
昨日の担当者から家に電話。「心配になって電話しました。もし、説明
会に子供を連れて来られるのならば、受給開始の延長を解除しない場合も
あります(まだ就職活動ができる状況ではないとみなす)」
「昨日、反抗的な態度を取ったので、何度来ても(子供と一緒のハロー
ワーク通いは駄目だという)状況は変わらないということを伝えるための
電話では」とAさん。
◇ 10月1日午後
Aさんハローワークへ。説明会は夫が休むことで対応すると説明。担当者
からは「認定日も子供を連れて来るべきではない。真面目に就職活動して
いないと取られることもある」
Aさんが、「同じ境遇の人はみんなそうしているのか?」と聞くと、
「もちろん連れて来る方はいるが、そのような人はその程度しか我々の話
を聞いていないと理解して対応している。就職の面接で子供を連れて行け
るとこなんてないでしょう。そのくらい真面目にハローワークに来てほし
い」と。
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以上の対応における一番の問題点は、子供を預けることができなけれ
ば就職活動能力がないと決めつけるハローワーク担当者の画一的な判断で
ある。
働く場所が見つからなければ公立保育所には入れない。民間はコストが
かかる。親は近くにいない、引っ越して1年未満だから親しい近所付き合い
はまだできていない。このAさんのケースは決して稀ではなく、「同様の意
見は数多く来ている」(某新聞記者)。やはり、このような子育て環境の
実態を理解していない行政と言わざるを得ない。
なお、厚生労働省の職業安定局雇用保険課によれば、説明会や認定日に
子供を連れて行ってはいけないということは決められていないとのこと。
すべてはハローワーク担当者の裁量で決められている。現に、私が居住す
る地域のハローワークに問い合わせると、「説明会は大切な話なのでじっ
くり聞いてもらいたいが、それは程度の問題であって明確な規定はない。
認定の際もうちは子供と一緒に来ても問題はない。」との回答。
私は、ハローワークに携わる人すべてが実態を把握していなかったり、
怠慢だとは思わない。しかしAさんと同じ担当者にあたったことによって、
予定を変更して子供を民間の保育園に預けたり、無理して近所やまたは親
を呼んで預けた人が実際にいることは容易に想像がつく。住民は、様々な
環境・条件下にある。制度に反しない限りにおいて、できる限り細かな
サービスを提供し住民の満足度を一定に保つことが、公共サービス提供者
の責務である。
もし民間であれば、窓口での対応が企業全体に影響を与える。また個人
の業績は給与等に影響を及ぼすため、責任の所在がはっきりとする。
来年度からの職業紹介業務のモデル事業には、人材派遣のパソナや資格試
験予備校の東京リーガルマインドが、社会保険庁の国民年金保険料徴収業
務には日本債権回収などが参入の考えを示している。
重要なことは「民に委託すること」ではなく、「官と民が競争するこ
と」である。構想日本が取り組んでいる「国と地方の役割分担」と合わせ
て、「官と民の役割分担」ができる絶好のチャンスである。政府は市場化
テストを、省庁の抵抗に屈することなく進めてもらいたい。
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2.《ご意見、お寄せ下さい!》
●「メルマガのあり方」について
先週のメルマガで、読者のご意見を紹介しながら「三位一体」改革の
あり方について構想日本の主張を改めてお伝えしました。それに対し、
さらに4件のご意見がありました。ほんの少しだけご紹介すると、「栄
村への構想日本への取り組みへの批判が出ましたが…」、「県民や国民
にとっては見た目の良し悪しでなく…」等々(全文は、
https://www.kosonippon.org/wp-manager/mailnews/opinion.php?no=187 )。
今回、もともと『読者の声』
( https://www.kosonippon.org/wp-manager/mailnews/log.html )に掲載させてい
ただいているご意見をメルマガで紹介することで、より多くのやりとり
が生まれ、大変よかったと思います。今後も、いろいろなやり方を試み
たいと考えています。
そこでこれを機に、構想日本のメルマガのあり方について、みなさん
からご意見をいただければと思います。テーマや構成、そして、今回の
ような『読者の声』の活用についてなど、何でも結構です。
お待ちしています!( info@kosonippon.org まで)。
●「日本にいらないもの」大募集!
普段の生活につながる政策テーマはどういうものか?構想日本は、日
々考えています。そこで今、切り口のひとつとして、「日本にいらない
もの」を洗い出すことにより、そのテーマを見出していけないかと思っ
ています。
みなさんにとって、「いらないもの」って何ですか?身近なもの(私
生活、仕事上)から国全体のものまで、目に見えるもの(組織、構築物
、イベント等)から見えないもの(考え方/慣習、仕組み、ある状態等)
まで、分野やレベルをまったく問いません。理由もいりません。数も問
いません。「これ、いらない!」というもの、是非教えて下さい。
(伊藤まで itoh@kosonippon.org )。
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3.《速報》中田市長ご参観のなか、横浜市で「事業見直し」実施!
12月11日、構想日本と(社)ニュービジネス協議会の主催で、横
浜市経済局の事業見直しを行いました。総勢約60名が、5班に分かれ、
事業の要/不要、仕事のやり方/評価の仕方について議論しました。
詳細は、 https://www.kosonippon.org/wp-manager/doc/?no=220 まで。
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