【No.245】グローバル化で浮き彫りになる「やるべきこと」
2006.04.14

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JIメールニュースNo.245  2006.4.14発行
グローバル化で浮き彫りになる「やるべきこと」

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◆◆ 目 次 ◆◆

1.【グローバル化で浮き彫りになる「やるべきこと」】

2.【第105回「J.I. フォーラム」のご案内】

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1.【グローバル化で浮き彫りになる「やるべきこと」】

東海大学医学部 救命救急医学 教授  中島 功

貴方が、何らかの原因で、右手が「ジンジンし、知覚が鈍磨」になった
場合、近所の内科医か整形外科医を受診して「先生! 右手がしびれる」
と、訴えるであろう。
では仮に貴方がアメリカに駐在していて、アメリカ人の医師に診察して
もらうときなら何というのだろうか? 直訳なら[ numbness ]もしくは
[ sensory disturbance ]といったところか? しかし両者は日本語で意
味する感性のこもった「しびれ」とはイコールではない。
日本人の患者も医師も「しびれる」を共に実感しているので、「しびれ」
という言葉が微妙なニュアンスをもって相手に伝わるのである。
つまり医師と患者の対面診療の関係は、知性「Logos」と感性「Pathos」
の両方を情報交換している場なのである。

実は、世界的にみれば、日本人はこのように母国語で医師に病状を訴え
ることができる数少ない国である。
アフリカの原住民は、海外からの援助隊医師に対して[ numbness ]とい
う英語を使えるだろうか? 世界には、医学書を母国語で出版できる国
は数えるほどしかない。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロ
シア語、ギリシア語、中国語などに限られている。多くの途上国では、
英語かフランス語で高等教育の授業を行っている。
ここにグローバル化に伴う途上国の医療制度の抱える大きな闇が隠され
ている。
例えば、アフリカのマラウィでは現地人の医師は極めて少ない、そのほ
とんどが大都会に集中し、地域にいる現地人の臨床医は、たった1名しか
いない。日本では人口1000人あたり1.9名いる臨床医が、マラウ
ィでは医師1名で平均6万人をカバーすることになり、その数は、限りな
く0に近い。
同様の状況は、サハラ以南のアフリカに散見され、アフリカ人医師の多く
は、経済的な理由により母国を捨て、英語、フランス語で業務ができる先
進国に頭脳流出をしている。実際、フランスで働くアフリカのベニン国出
身の医師は、本国の医師数よりも多い。

そのような状況であるにも係わらずWHO(世界保健機構)は、いったい何
をしているのかと思われるかもしれないが、WHOもサハラ以南に支援策と
予算(総額ではアジア地域に比して2桁多い予算)を必死に投じている。
しかし、人的資源の乏しいサハラ以南の国家の多くは、医療サービスを
事実上海外の組織やNPOにアウトソーシングしているため、WHOが投じた
予算の多くは欧米諸国に還元され、さらに困ったことにこうした欧米諸
国からのスタッフは外国人医師という扱いのため、厳密な資格すら問えな
い状況にある。
こうしたことで西洋医学を学んだ外人部隊の医師からトラディショナル療
法を行う祈とう師まですべてが医療行為を行え、現地では事実上医師の定
義など存在しない現状にある。助ける者がドクター、看護する者がシスタ
ー、投与される物質はドラッグであり、そこには安全基準も無ければ、支
払い基金の制度すらもない。
こうした途上国の医療制度の不備を、WHOは百も承知であるが、その対応
策として世界規模での医療制度の標準化には踏み切れないでいる。
その理由の1つはWHOの規約にある。規約によれば、WHO活動の目的は、予
防医学であり、治療は各国に任せられている。具体的にいえば、高齢者の
肺癌を何歳までなら手術を施し、その手術を健康保険の対象とするか否か、
そうしたさじ加減(医療政策)はその国の主権なのである。このような背
景もあり、世界規模での医療制度の標準化は、遠い話となっている。

最近、ICT(情報通信技術/information-communication technology)の
応用分野として、ユビキタス社会、eアプリケーション、eサービスという
言葉を耳にする。
こうしたICT分野の動きは国際的な潮流となっているが、ここに挙げた一つ
の例からわかるように、グローバリゼーションには幾多のハードルがそれ
ぞれの国家単位で存在することがお解かりであろう。
ICTを駆使したユビキタス社会は、近い将来、到来するであろうが、それぞ
れの地域や国家がさまざまな背景を持ち合わせていることを心得なくては
ならない。そして、医療、教育、農業などを十羽一絡げにして「eアプリケ
ーション」として扱うのは止めるべきで、ICTの普及には、利用者のフォー
メーション、通信側のネットワークトポロジーなどを丹念に擦り合わせな
くてはならない。そのためには各分野で専門家を育て、各国の専門家が意
見交換をする場を創らなくてはならない。
その一つが国際電気通信連合の場だと思っている。地球上のすべての業務
は、どこかの国際機関によりすでに制度化や標準化が行われ、eアプリケー
ションを実施するためには通信側においてネットワークに接続するだけで
よいと思っているのは大きな勘違いである。

*中島 功氏プロフィール
東海大学医学部救命救急医学 教授
国際電気通信連合(ITU) 遠隔医療検討グループ 副議長

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2.【第105回「J.I. フォーラム」のご案内】

国有財産・本当に売っていいのか?

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もっともらしい議論というのがよくある。
800兆円にも及ぶ国の債務。その「有力な」削減策として、国の資産売却
が与党内で議論されている。
しかし、庁舎や公務員宿舎など売却可能な国有地はすべて合わせても600
0億余りという。しかも、その収入は1回こっきりだ。一方で、国債の金利
は毎年何兆円も増えているのだから、これではほとんど焼け石に水ほどにも
ならない。売られた土地には多分大手デベロッパーが高層ビルを建てるのだ
ろう。
長い目で見て、これが本当に国民・住民のためになるのだろうか。それくら
いなら、外国に比べても日本の都市は緑が少ないのだから、公園にするほう
がいいのではないか。目の前の金勘定だけで国有財産を処分していいのか。
──など、国土や都市のあり方の視点を中心にホットな話題について大いに
語っていただきます。

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日 時  : 平成18年4月24日(月)
会 場   : グランドアーク半蔵門3F 光の間
※ご注意ください!今回場所が変わります
千代田区隼町1番1号 TEL 03-3288-0111(代)
(http://www.grandarc.com/access/access.htm)
開 演  : 午後6時30分(開場:午後6時00分)
ゲスト  : 川勝 平太(国際日本文化研究センター教授)
鈴木 博之(東京大学大学院教授)
山岡 淳一郎(ノンフィクション作家)
主 催   : 構想日本
定 員  : 160名
フォーラム参加費 :2,000円
(シンクネット・構想日本会員は無料です)
懇親会参加費   :4,000円
(ご希望の方は下記懇親会参加に○印をつけてください)
※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
ラウンジ「ラ メール」 グランドアーク半蔵門4F
TEL 03-3288-0111(内線5567)

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参加ご希望の方は、4月23日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org

お名前

所属

ご連絡先

懇親会に     参加する      参加しない
—————————————————————–
*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下まで。TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田まで。TEL 03-5275-5607

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