【No.302】問題だらけの教育改革関連3法案
2007.06.01

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JIメールニュースNo.302  2007.6.1発行
問題だらけの教育改革関連3法案
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◆◆ 目 次 ◆◆
1.【問題だらけの教育改革関連3法案】
2.【構想日本からのお知らせ:日本再発見塾『呼びかけ人』総会】
*前回の「ワンクリックアンケート」の投票結果が出ました。
質問は「Q:今の選挙のやり方について、どう思いますか?」です。
↓     ↓     ↓
https://www.kosonippon.org/wp-manager/enquete/result.php?m_enquete_cd=41
*構想日本ホームページで「ワンクリックアンケート」開催中。
「Q:「公開討論会」についてどう考えますか?」にお答えください。
〔アンケート期間:2007/06/01(金) ~2007/06/21(木)〕
↓     ↓     ↓
https://www.kosonippon.org/wp-manager/enquete/index.php?m_enquete_cd=42
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1.【問題だらけの教育改革関連3法案】
古山 明男
(構想日本・教育プロジェクト)
法律の中に埋め込まれた問題を見抜くのは難しい。一見何でもない規定が
運用次第で取り返しのつかない結果をもたらすことは多い。現在、参議院で
審議されている「教育改革関連3法案」も同じだ。一見問題がなさそうでも、
行政の権限強化は将来、弊害が予想される。だからこそ、国会での審議が
重要になる。主な問題点は下記のとおり。
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(1)学校教育法の改正案
○学校評価について(42条)
各学校が「文部科学大臣の定めるところにより」評価を行うこととなった(42
条)。学校評価を法定するのは一つの方法だが、文科省が評価のやり方を
決めることは、将来に対する影響が非常に大きい。中央集権的なコントロー
ルにより評価がますます全国一律になり、現場の視点が入りにくくなる。
現在、文科省が、法的拘束力のない学校評価ガイドラインを作って学校を指
導しているが、これ以上のものは必要ない。
学校評価に関しては、フィンランドのように、学校自己評価だけの途もある。
フィンランド教育省は、評価方法に法的拘束力は持たせていない。オランダ
には国家機関による学校査察があるが、その評価項目は監督局と教育者
団体の合意で作られており、徹底的にユーザーの利益に立っている。イギリ
スでは国の教育水準局が学校査察をしているが、その発言力が強大なの
で、学校現場を萎縮させる問題も生じている。
このように、学校評価のやり方は学校に重大な影響を与える。日本の現状
は、官営学校を脱却することが課題なのだから、文科省に評価方式の決定
権を渡すべきではない。
○副校長・主幹制の導入について(37条)
副校長、主幹制の導入は、規模の大きい学校ではメリットがあるだろうが、
かえって指揮系統を複雑にしてしまう場合も多いだろう。また、指導教諭の
新設は、教員の同僚性を破壊する恐れが強い。役職を増やすと効率が悪く
なるのは法人化後の大学を見ても明らかだ。いい学校の例を見ると、役職
を作らなくても、リーダー的な教員は自然発生している。
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(2)地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)の改正案
○文部科学大臣の指示について(50条)
「いじめ」問題に対して、「国の監督権を強化する」という方向を打ち出した。
しかし、「いじめ」の実態の把握は現場の先生ですら難しいのに、東京の真
ん中にある文科省が実態を掴んで効果的な措置をとれるはずがない。教育
委員会は、国に報告して叱責されるより、隠蔽することを選びがちになる。
「いじめ」への法的対応は、「子どもの権利条約」に基づいた学校法規作り
から始めるべきではないか。
○教育委員会について(27条他)
教育では、国を筆頭として、学校に対して責任を負わないのに文句だけつけ
ることのできる者の発言力が強い。それが、教育委員会が機能不全を起こす
原因である。教育委員会への監督強化では解決しない。
27条は、教育委員会は業務の点検・評価を行い、議会に報告し、公表する
としている。しかし、議会が関与することは、教育に責任を負わずに文句だけ
つける存在をまた一つ増やしたことになる。
教育委員会に対する文部科学大臣の指揮権を増すこと(49条、50条)は、
地方分権の流れに逆行するものである。
また、文科大臣と都道府県教育委員会の助言と援助を「行うよう努めなけれ
ばならない」(55条の2第2項)と義務にしたことも、市町村教育委員会の自
主性をそぐことになる。
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(3)教育職員免許法の改正案
○10年ごとの教員免許更新について(5条)
10年ごとの教員免許更新制は、問題教員の排除が目的だとみなされがち
だが、実際は問題教員排除に役立たないと考えられる。理由は、
・問題教員がいたとして、最長10年待たなければならない。
・問題が起こったときになんらかの対処は為されたはずである。解決済みの
問題を蒸し返すことになる。
・すでに「指導力不足教員の人事管理」が機能していて、屋上屋を架する。
・更新を拒否できるほどの客観的な適正検査は存在しない。
文科省はそれを承知していて、免許更新の条件を教員の資質の保持と向上
のため30時間の講習受講としている。しかし、実務者にマスプロ教育をして
も得るところは少ない。
免許更新制は、大きな労力と資金を必要とし、益は少ないだろう。

*古山 明男(ふるやま・あきお)氏のプロフィール
1949年、千葉市生。出版社勤務ののちフリー。私塾、フリースクールを主
宰。20年間ほど、補習、受験、自主性涵養、不登校児童生徒援助、教育
相談など、地域のニーズに応じた教育活動を行う。
教育行政システムを論じた著書に「変えよう!日本の学校システム」(平凡
社)。
ホームページ「古山明男の教育論集」
http://www.asahi-net.or.jp/~ru2a-frym/
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2.【構想日本からのお知らせ:日本再発見塾『呼びかけ人』総会】
構想日本のスタッフが関わっている「日本再発見塾」の呼びかけ人総会が
開催されます。ご関心のある方は是非どうぞ。
日 時 : 2007年6月2日(土) 18:30~20:30(開場18:00)
会 場 : 「東京財団」
(港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階 / tel:03-6229-5501)
※詳細(地図を含む)は、下記のホームページでご覧いただけます。
http://e-janaika.com/sokai/index.html
≪ 日本再発見塾 < http://e-janaika.com/ > ≫
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