【No.319】霞ヶ関で働く八ヶ岳の農家の嫁からメッセージ
2007.09.28

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JIメールニュースNo.319  2007.9.28発行
霞ヶ関で働く八ヶ岳の農家の嫁からメッセージ
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◆◆ 目 次 ◆◆
1.【霞ヶ関で働く八ヶ岳の農家の嫁からメッセージ】

*構想日本ホームページで「ワンクリックアンケート」開催中。
「Q:安心できる介護にするために、必要なことは何ですか?」にお答え
ください。
〔アンケート期間:2007/09/27(木) ~2007/10/14(日)〕
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https://www.kosonippon.org/wp-manager/enquete/index.php?m_enquete_cd=48
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1.【霞ヶ関で働く八ヶ岳の農家の嫁からメッセージ】
環境省 総合環境政策局 環境経済課 環境教育推進室
民間活動支援室室長補佐
中島 恵理
私は、平日は霞ヶ関で環境行政の企画立案で忙しい日々を過ごし、休日は、
八ヶ岳の有機農業を営む夫と1歳の息子と一緒においしい空気と食を楽しん
でいる。このような生活を6年以上も送る中で、日本の中の南北問題の存在
を痛感している。
夫とその両親は、休日もなく、朝から晩まで忙しく農作業にいそしんでいる。
3ヶ月程度大事に育てた大根も売れるのは1本たったの100円である。種を
まき、間引きをし、雑草をとり、虫をとり、肥料をやり、収穫し、そして凍りそう
な冷たい水で1本、1本大事に洗って出荷する。このような作業を踏まえれば、
私の東京での仕事の時給で換算すれば1本1万円だとしてもまだ安いので
はないか。その上最近は温暖化の影響か、昨年の夏は大雨で、今年は冷
夏で収穫量は減少するなど、温暖化の最大の弱者は農家である。
一方、近年の田舎暮らしブームで、都会のリッチな人たちの別荘は急増して
いる。数年前まで夫の両親が山菜を採取していた山も都会の人たちのもの
になった。2年前に都会の人向けの温泉ホテルからの排水が、有機農業を
続けてきた私たちの田んぼに通じる農業用水に流されるという事件が起こっ
た(※)。昨年、夫の両親が大事に育てていた”きのこ”が収穫直前にすべて
都会の人に盗まれてしまった。それでも、今年の夏、夫の両親は、路上のお
店で、八ヶ岳に来るリッチな都会の人たちに対し、真心こめて作った野菜を
東京のスーパーよりもずっと安い値段で販売している。
私自身は、仕事を通じて大量なるエネルギーと資源を費やし、夫は、田んぼ
や畑作を通じて、二酸化炭素を吸収し、多様な生物の住処を提供している。
しかし、金銭的な収入でみれば、仕事の環境負荷とはまったく反比例の状
況にある。
政府は2050年50%CO2削減の低炭素社会の必要性を唱えているが、私
個人の考えでいえば、この国内の南北問題を解決し、田園地域の生業が若
い者にとって魅力的なものにならない限り、実現は困難ではないかと考えて
いる。農業の大規模化、効率性の向上の必要性が叫ばれているが、それは
農業の工業化を推し進めるのみで、命あるおいしい有機農産物の生産は、
小規模で労働集約的に行わなければ不可能だ。「命を支える源となる食料」
は人間の経済活動を支える基礎であり、その生産システムが失われれば、
いくらハイテクの環境技術が開発されていても、持続可能な社会は形成され
ない。
これまでは、田園地域の犠牲で都会が豊かになってきた。これからは、都会
の人たちの負担で、田園地域を支える仕組みを構築していかなければ、持
続可能な未来は描けないのではないか。
私自身は、仕事の中で、田舎と都会での生活体験を生かして、田園地域の
活性化にも資する協働による持続可能な地域づくりの手法(資源発掘、合意
形成、資金調達、自立型活動形態)の研究・開発を行うこととしている。今後
は、都会による田園地域の搾取ではなく、都会と田園との協働による持続可
能な経済、地域のあり方を模索していきたい。
(※地元の住民の強い反対で、農業用水に排水することは中止になった。)

* 中島 恵理(なかじま えり)氏のプロフィール
平成7年京都大学卒、環境庁入庁、平成12年ケンブリッジ大学土地経済学
部修士卒、平成13年オックスフォード大学環境変化・管理学科修士卒、現在
環境省総合環境政策局環境経済課環境教育推進室、民間活動支援室室長
補佐、週末は、長野県富士見町で有機農業を営みつつ、地元の木でエコハ
ウスを建てている夫と1歳の息子と暮らしている。

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