【No.330】地場産業と世界の出会い |Ken Okuyama Design代表  奥山 清行氏|
2007.12.14

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JIメールニュースNo.330  2007.12.14発行
地場産業と世界の出会い
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◆◆ 目 次 ◆◆
1.【地場産業と世界の出会い】
2.【第125回「J.I. フォーラム」のご案内】

*「教育振興基本計画」に関するパブリックコメントに意見を提出しました。
詳しくは、下記ホームページをご覧下さい。
↓     ↓     ↓
https://www.kosonippon.org/wp-manager/project/detail.php?m_project_cd=600&m_category_cd=19
*前回の「ワンクリックアンケート」の投票結果が出ました。
質問は「Q:今の国会、どう考える?」です。
↓     ↓     ↓
https://www.kosonippon.org/wp-manager/enquete/result.php?m_enquete_cd=50
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1.【地場産業と世界の出会い】
Ken Okuyama Design代表  奥山 清行

1982年に日本を出てから一度も日本で仕事をしておらず、工業デザイナーとして、GM、ポルシェ、ピニンファリーナ(フェラーリなどを手がけるイタリアのカーデザイン会社)などで働いてきた。

最近感じるのは、商品開発のスピードが技術開発のスピードより早くなってきたことだ。かつて私たちデザイナーは研究所に出向いては新しいネタを見つけて、それを商品にしていれば良かった。しかし、今はあっという間に次の商品を作らなければならないので、新しい技術、ネタが続かない。

デザインは、商品開発において非常に有効な手段であるという偏った考え方をする人がいる。それは、パッケージデザイン──同じ技術を用いてつくる商品の外見をデザインする──という意味でのデザインだ。しかし、同じ技術を表面的にどう料理するかというのはデザインの一側面ではあるが、それが本質ではない。結局、日本製品の本来の良さというのは、技術が先行して強かったことだ。技術や素材をどう活かすかまで考えるのが、デザイナーの仕事だ。

イタリアのものづくりで面白いと思ったのは、職人の技術が最新技術と組み合わされていて、商品開発の中で独自の世界観を築いていることだ。一例をあげると、イタリアのカーデザインでは、世界で唯一粘土を使わずにモデルを作る。一般的に自動車のモデルは粘土で原寸大のものを作るが、イタリアでは木のような素材エポウッドを使う。この素材は足すと時間がかかるので、基本的に削って作る。これを、0.01mm位の段差でも感じられる職人が手作業でやる。

ルネッサンス文化の大理石の彫刻と同じ考え方だ。すると、硬い素材を使ってつくる自動車が、モデルの段階でもきちんと硬く見える。しかも、モデルの仕上がりが早い。それが表現力の大きな力になっていて、素材が商品を決定する。あたかも日本料理のように。

日本の価値というのは、クリエイティブに仕事ができるクリエイティブクラスがブルーカラーたり得たということ。どういうことかというと、アメリカのブルーカラーは、色んな人種、バックグラウンド、言葉の人々がいる中、大量生産をするために個性を殺し、「現場ではものを考えるな」といわれてマニュアルに沿って仕事をしてきた。それに対して、日本は現場でものを考えて良いという許可を与えて、それを生かしてきた先進国で唯一の国だと思う。それはとてつもない価値なのではないだろうか。アメリカにはない、中国にはまったくない。イタリアにはちょっとあるが、大量生産の場においてではない。日本は大量生産の中で、こういった職人さんたちが独自の価値を築き、それを生産の現場で使ってきた。これは、非常に素晴らしい価値だと思う。

職人の労働というのは、その知識労働の部分にこそ意味があるのだ。にもかかわらず、今、私たちは彼らを単なる生産労働者だと考えているようなところがありはしないか。
日本でも、イタリアで見てきたような“職人の技術と最新技術が組み合わさったものづくり”ができないか、と考えて数年前に研究会を始めた。山形工房という家具会社だ。必要で仕方なく買うものは、必要が無くなったら買うのをやめ、捨ててしまう。私は、必要で仕方なく買うものよりも、必要なくとも欲しくて仕方がないものを作ってみたいと思っている。

例えば、時計。機能的にはクォーツの9800円で十分。そうわかっていても、30万、40万円払ってでも欲しくて仕方がなくなってしまう時計がある。おそらくそのような時計は一生使う。その過程にはスイスの時計職人の匠の技が生きている。私たちは日本で、職人による知的労働を再発見し、そのようなものづくりをしたいと思っている。

(※この原稿は、構想日本主催の勉強会(非公開)でのご講演内容の一部をまとめたものです。山形工房のホームページは、下記をご覧下さい。)
http://www.yamagatakoubou.jp/j/index.html

*奥山 清行(おくやま きよゆき)氏のプロフィール
工業デザイナー。ピニンファリーナ社(伊)デザインディレクター、ゼネラルモータース社チーフデザイナー、ポルシェ社デザイナーを歴任。ピニンファリーナ社(伊)在籍中はデザイン総責任者としてFerrariやMaseratiなどの世界の自動車、Ducatiなどのオートバイ、電車、航空機、船舶、家具、ロボット、テーマパ―ク等数多くの工業デザインを手がける。現在は自動車を含む各種工業デザインのほか、KEN OKUYAMA レーベルにて眼鏡、山形工房より家具の製造販売も。他、講演、執筆など活動は多岐に渡る。グッドデザイン賞選考副委員長、アートセンターカレッジオブデザイン工業デザイン学部客員教授(米)、中央美術学院客員教授(中)、多摩美術大学客員教授、金沢美術工芸大学客員教授、名古屋芸術大学特別客員教授、山形カロッツェリア研究会主宰、山形工房代表。Ken Okuyama Design代表。イタリア在住。
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2.【第125回「J.I. フォーラム」のご案内】
いよいよ増税!?
その前にやっておくべきこと
増税が具体的になってきました。それについての賛否は別にしても、その前
にどうしてもやっておくべきことがあります。無駄な行政事業の洗い出しです。
それが「行政の事業仕分け」です。構想日本がこれまで22回行ってきたなか
で、県や市の行政の3~4割が削減可能という結果も出ています。現実に予
算を1割削減した市もあります。一方、行政改革推進法にも「事業仕分け」が
規定されながら国の事業についてはまったく手付かずです。この手法が効果
絶大なことはカナダでも実証済みです。増税の前に、国民の手による「事業
仕分け」=戦後行政の大掃除を実現しましょう。
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日 時  : 平成19年12月19日(水)
会 場  : 日本財団ビル2階 大会議室
港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111(代)
(http://www.nippon-foundation.or.jp/org/profile/address.html)
開 演  : 午後6時30分(開場:午後6時)
ゲスト  : 田中康夫(新党日本代表・参議院議員)
松井孝治(民主党NC内閣府担当大臣・参議院議員)
海東英和 (滋賀県高島市長)
自民党議員(調整中)
公明党議員(調整中)
荒井英明、井澤幸雄、石渡秀朗、小瀬村寿美子
(明日の地方財政を考える会・構想日本事業仕分けチーム)
コーディネーター : 加藤秀樹(構想日本 代表)
主 催  : 構想日本
定 員  : 160名
フォーラム参加費 : 2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
懇親会参加費   : 4,000円
(ご希望の方は下記懇親会参加に○印をつけてください)
※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
「トラットリア・イ・プリミ 虎ノ門店」
港区虎ノ門2-2-1 JTビル1F TEL 03-3589-5812
(http://www.ep-tokyo.com/iprimi/toranomon/)
————————————————————–
参加ご希望の方は、12月18日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
お名前
所属
ご連絡先
懇親会に     参加する      参加しない
————————————————————–
*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下まで。TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田まで。TEL 03-5275-5607
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