【No.345】医師不足の現状を分析
2008.04.11

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JIメールニュースNo.345 2008.4.11発行
医師不足の現状を分析
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◆◇ 目 次 ◇◆
1.【医師不足の現状を分析】
2.【第129回「J.I. フォーラム」のご案内】
3.【「スウェーデン自治体調査」報告会のお知らせ】

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1.【医師不足の現状を分析】
構想日本 政策スタッフ
田口 空一郎
昨年春より構想日本では、社会的に大きな関心を集めている医師不足
の問題を中心に、これまでの医療の制度と問題の変遷をまとめ、ホーム
ページを充実させてきました。以下にそのポイントを4点ご紹介します。
(1)地方・へき地の医師不足
戦後、今日まで、医師数は増加しつづけていますが、地方やへき地の慢
性的な医師不足は解消されておらず、大学病院(医局)などの医師派遣
に大きく依存してきました。しかし、2004年に新研修医制度が導入され研
修先の選択が事実上自由化されると、待遇や研修メニューなどの優れた
市中病院の研修医が増加して大学病院に残る研修医が激減しました(研
修医の大学病院在籍率:2003年72.6%⇒2006年44.7%)。そのため、派
遣された医師が相ついで引き上げたことなどから、地方やへき地の慢性
的な医師不足が表面化しました。大学病院に依存しない、各地域の自治
体や医療関係者、住民が主体となった安定的な医師確保システムの構
築が必要です。
(2)病院(ベッド数)が多すぎる
1985年の医療法改正以前は病院の設立や規模拡大に対する規制がほ
とんどなく、また多くの自治体が右にならえで無計画に病院を建ててきた
ことなどもあり、人口1000人当たりの病院ベッド数(病床数)はOECD加盟
国中最多となっています。この病院の多さも、医師不足の大きな原因です。
たとえば、人口1000人当たり病院ベッド数はアメリカの4倍、また100ベッド
当たりの医師数はアメリカの5分の1といったように、日本の病院の多さと
医師の不足の相関関係は明らかです。この問題を解決するには、乱立す
る中小病院の統合・再編と医師の集約化も急務です。
(3)医師の仕事の増加
医療の高度化や患者ニーズの多様化などによって、一人当たりの医師の
仕事が増加したことも、医師不足問題の一因です。しかし、こうした仕事を
すべて医師の手で行う必要はありません。現在は、医師法17条により医師
以外の医療行為は禁止されており、医師の指示がなければ看護師などは
医療行為を補助することができません。欧米諸国のように、医師でなくても
行える仕事を医師以外の医療者が主体的に行えるようにする資格制度の
整備が必要です。
(4)劣悪な労働環境
産科、小児科、外科、救急などでは夜間・休日の連続当直といった過酷な
労働が常態化しており、事故や訴訟のリスクなどを嫌って退職する医師や、
開業医に転じる医師が増加しています。また、各自治体が小児医療費無
料化やその年齢制限引き上げを進めており(東京都の一部自治体などで
は中学3年生まで無料化)、患者の急増した小児科医師の疲弊も深刻です。
さらに、女性医師の比率が年々大きく増加しているにもかかわらず、妊娠・
出産後も継続して就労できる環境がなく、医師不足は今後さらに深刻化す
ると予想されます。医師・看護師等のマンパワーの集約化と医療安全のた
めの労働時間の法令遵守、交替勤務制や複数主治医制の導入などによ
る過重負担の抜本的な軽減などの対策も必要です。
昨年6月、政府も「緊急臨時的医師派遣制度」を立ち上げ、初めて医師不
足対策に乗り出しましたが、派遣された医師は6名と、非常に表面的なも
のでした。構想日本では、医師不足という現象からその背後にある現在の
医療制度の問題を整理・分析し、今後さらに政策提言へと繋がるような情
報を発信していきます。皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。

※詳細は構想日本ホームページの「医療制度」プロジェクトをご覧ください。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/project/list.php?m_category_cd=26

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2.【第129回「J.I. フォーラム」のご案内】
地方議会は必要か(仮)

(※詳細な内容は後日お知らせいたします。)
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日 時  : 平成20年4月23日(水)
会 場  : 日本財団ビル2階 大会議室
港区赤坂1-2-2 TEL 03-6229-5111(代)
(http://www.nippon-foundation.or.jp/org/profile/address.html)
開 演  : 午後6時30分(開場:午後6時)
ゲスト  : 石田芳弘(前愛知県犬山市長)
江藤俊昭(山梨学院大学 法学部 教授)
木下敏之(前佐賀市長)
山内 敬(滋賀県高島市 副市長)
コーディネーター : 加藤秀樹(構想日本 代表)
主 催   : 構想日本
定 員  : 160名
フォーラム参加費 : 2,000円(シンクネット・構想日本会員は無料です)
懇親会参加費   : 4,000円
(ご希望の方は下記懇親会参加に○印をつけてください)
※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
「トラットリア・イ・プリミ 虎ノ門店」
港区虎ノ門2-2-1 JTビル1F TEL 03-3589-5812
(http://www.ep-tokyo.com/iprimi/toranomon/)
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参加ご希望の方は、4月22日までに出欠の是非を、下記のメールアドレス
にお申し込み下さい。
forum@kosonippon.org
お名前
所属
ご連絡先
懇親会に     参加する      参加しない
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*参加申し込みに関するお問い合せは、
事務局 木下まで。TEL 03-5275-5665
*内容に関するお問い合せは、
フォーラム担当 西田まで。TEL 03-5275-5607

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3.【「スウェーデン自治体調査」報告会のお知らせ】
第21回 東京財団政策懇談会
「地方自治体のガバナンス研究」メンバーがスウェーデンの自治体調査を
通して分かった、表面的な制度比較だけでは見えてこない地方自治の本
質問題を議論します。
【日時】4月24日(木)12:00~13:30
【会場】日本財団ビル2階 大会議室
【テーマ】「欧州の地方議会に見る地方自治の本質(2)」
【スピーカー】石田芳弘(東京財団上席研究員、前犬山市長)
福嶋浩彦(東京財団上席研究員、前我孫子市長)
森 亮二(東京財団研究員、前流山市議会議員)
伊藤 伸(構想日本政策スタッフ)
◇詳細・お申込みはこちら↓
http://www.tkfd.or.jp/event/detail.php?id=84
※JIメールニュースNo.343「200年の歴史が作り上げた『自治』の国・スウェ
ーデン」もご参照ください。
https://www.kosonippon.org/wp-manager/mail/bk080328.php

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